第45話 解明? 古代獣の謎 Ⅲ
私の中に入ってきた情報の波は、ある程度すると落ち着いた。
情報を取り込み続けると言うのは案外苦痛かもしれない。
何せ脳が処理し切る前に次が来るんだもの。
そしてそんなに慌ただしかった情報が収まれば目に見える風景が違って見えるようになるものだ。
<条件を達成しました>
アトランティスの意思……clear
レムリアとの共闘……clear
ヤマタノオロチ討伐……clear
レムリアの器所持……clear
ジョブ:テイマー……clear
テイマーランクⅤ……clear
<テイマーのテイムシステムがアップデートされました>
テイム時にエネミーへのハッキング成功率が上昇しました。
累計討伐回数による使役率上昇効果が緩和されました。
ジョブ:テイマー/ライダーへの進化が可能です。
<テイマー/ライダー>
上位ジョブライダーとテイマーを任意で切り替えることができる特殊ジョブ。
特殊行動は選択したジョブのものが反映される。
≪特殊行動:テイム≫
耐久を減らしたエネミーに支配の情報を送り、ハッキングに成功するとテイム可能。
テイム枠は最大15、同時使役枠は一部を除いて最大5。
≪特殊行動:ライド≫
通常召喚とは異なり、ライディングしながらの召喚になる。
ライディング中はテイムモンスターの基礎ステータスが大幅に上昇する。一度にライドできるエネミーは一匹限り。
<レムリアの器のバージョンがアップデートされました>
グリップ前の小窓からスキルモードかソードモード、ガンモードを選択できます。
最新バージョンではレムリア語の自動翻訳から、ムー言語、アトランティス言語の自動翻訳ができるようになりました。
事前に任意のチャンネルに設定しておいてください。
翻訳は直接網膜内に投影されます。
……古代獣のテイミングを確認。
<EBPが最新のバージョンにアップデートされました>
消費ゲージが1%1秒から、一度の召喚で30%消費に置き換えられます。
30秒後に消滅し、ゲージ回復率を1分1%から1分5%に上昇することに成功しました。
<十束剣の真名が解放されました>
十束剣から天羽々斬に名称が変わります。
ヤマタノオロチへの特攻効果が10%から15%に上昇しました。
ダメージを与えた際、一定時間怯み効果を与えられるようになりました。
※条件を満たした者しかこの効果を発揮することはできません。
「なんか一気に来ましたねぇ」
私のぼやきに探偵さんも答えてくれる。
「僕はメカニックの上位ジョブが貰えたよ。そっちは?」
「私はテイマーの少し変則的なジョブが生えた。一応は上位ジョブっぽいけど、切り替えることで真価を発揮するジョブのようだ」
「どんなジョブか聞いても?」
「先にそっちが教えてくれたらね」
「ちぇー」
「いい加減に何があったか話してくれないか? 俺ばかり除け者にされてつまらん」
業をにやしたどざえもんさんに怒られ、私達は揃って舌を出した。苦労人のどざえもんさんは天を仰いで項垂れた。
いや、話してもいいけど結構な情報だよこれ。
取り敢えずジャンケンして負けた方が先に公開するのはどうだろう?
そう提案してジャンケン合戦が始まり、五秒もたたずに決着がついた。
私弱すぎない?
パーを出して震える私に、勝ち誇ったハサミをチョキチョキと開閉する探偵さん。
それはさておき情報を開示。
どざえもんさんは空いた口が塞がらないとばかりに呆れている。
それはダンジョンに眠る陣営のイベントもそうだが、どうやってそんなに情報を踏み抜いたのかも聞きたがっていた。
残念ながら企業秘密だよと誤魔化してやる。
「しかし天羽々斬と来たか。テイマー専用武器……いや、ヤマタノオロチをテイムするにはこれがないと始まらないと言わんばかりの効果だね」
「うん、これ使わないとテイムさせないぞって言う強い意志を感じた」
「簡単にはテイムさせないぞって思うよ、あれは」
「そうですね。テイマー人口も徐々に増えていってますし、私もそろそろお役御免でしょうか?」
「する気も無いくせに思わせぶりな態度を取っても無駄だよ」
「あ、バレました? でも今回の討伐イベントの最終目標はヤマタノオロチに決めてしまいましたからね。他のことは他のプレイヤーに任せますよ」
「それがいい。無理に参加する必要はないからね」
「俺もそう思う。シェリルさんはやりたいからやってるだけだから止めないが、攻略情報欲しいからって上位クランは攻略して情報出せってプレイヤーが最近多くてな。俺もとばっちりを受けて辟易としてるよ。俺もいっそ秘匿してる情報を全部ばら撒いちまった方が楽になれるのかもなと思い始めている
「その方がいいですよ。肩の荷が降りますし、相手が求めてるような情報じゃなくても提供したと言う事実は変わりません。どちらにしろそれを扱うのはプレイヤーに最良にかかってますから」
「確かにそうだな。でも個人のブログで公開するのは怖いからアキカゼさんの配信でポロっと言うことにする」
えー、なんで?
どざえもんさんはそういうことしないと思ったのに!
探偵さんは探偵さんで大賛成だとばかりに笑うし、ここに私の味方はいないのかと悲しくなる。
「そんな顔して被害者面しても〝今更遅い〟よ? むしろ誰の発見のお陰で目立つ羽目になったんだっけ?」
「ハイハイ。全部私が悪いんでしょう? 全く。君はそうやって私の背中に隠れて好き勝手して。とばっちりを受ける私の身にもなってくださいよ!」
「普段から振り回されてるのは僕達だよ? ちょっとくらい良いじゃないか。それにスズキ君も少年の隣だから活き活きしてるんだと思えば男名利に尽きるでしょ?」
「彼女はあっちが素ですからね。色々とあるんですよ」
「彼女? そう言えばあの人は女性だったのか?」
「えっと、知りませんでしたっけ?」
「いつも珍妙なプレイでクランのマスコットに収まっているのは知っていたが」
「ああ見えて小学校で教鞭を振るう教育者の顔もあるんですよ? うちの孫も彼女の教えで小学校を卒業したそうです」
「ブフッ!」
あ、やっぱり信じてくれてない。
まぁ普通は信じませんよね。それも彼女の狙いですから。
リアルの面を極力出さず、素の自分が受け入れられる環境を作るんだと豪語してましたし。
「ちなみに彼女は現在産卵期でね。最近クランに顔を出してないのはそう言うことだよ」
「ぐっはッ!」
どざえもんさんはツボに入ってしまったのか、絵面を想像してその場で転がりまわってしまった。
なんら間違った情報は与えてない。
少し言い回しに悪意があるけど、彼なりのジョークだ。
「ひー、ひー……笑わせんでくれ。腹が捩れるかと思った。それで本当は?」
「妊娠してログイン不定期なのも熱血教師なのも本当だよ。ちょっと想像しづらいけど、孫曰く美人さんらしい」
「うちの孫もあんな姿で馬鹿やってて幻滅したって言ってたし、リアルでは相当高嶺の花みたいだよ、彼女」
「マジなのか。それじゃあ笑った俺が最低だな」
「いや、彼女の場合はメンタルが異様に強いから笑い飛ばしてくれた方が美味しいとさえ思っているよね」
「むしろ全力で笑いを取りに行くよね。隙あらばって感じで。第二世代とは思えない行動力だよ。僕も見習いたいものだ」
「そこまでなのか。ギャップがすごすぎて同一人物と言われても周囲の人は気づけない。本人的には意図的にそうしてるのかもな」
「たまーに配信に書き込みしてくれるけど、相変わらずみたいだし私は心配してないよ。彼女は面白い以外にも思慮深いし考察にも精通している。その上護身術なんかも習ってるスーパーウーマンだ」
「スーパーウーマンとか死語もいいところですよ? どざえもんさんに伝わりますかね? 何十年前のワード引っ張ってくるんですか」
「煩いですね! それだけ凄いってことですよ!」
「ははは。一応は伝わりますよ。横文字並べてるだけですし」
「ほらー、馬鹿にされてる。君みたいな人がいるから僕達の世代が一緒くたにされるんだよ? 少しは語彙力を身につけなさい」
「はいはい、すいませんね」
今回は偶然に情報が見つかってしまったけど、その日は念入りに10階層まで探索した後、裏ルートまで回ったがあれ以上の情報となるとなかなか出てこなかった。
まぁ有益な情報と言うか、討伐の正しい手順のようなものは見つかったのでヨシとする。
さて、次の配信までに私も準備を進めていこう。
その前に新ジョブの検証から入ろうか。
ああ、やりたいことがどんどん増えて忙しいったらありゃしない。
飽きさせない作りになってて、一度攻略した場所も何回も掘り返さないと見つからない。
上手いギミックを考えるものだと製作者を称賛したくなった。
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