第34話 ゲーム内配信/vs古代獣ヤマタノオロチⅠ
「やぁ、よく来てくれたね。師父氏にくま君。それとAWO飛行部の皆さん……と言っても二人だけだけど。山本氏はお元気ですか?」
私の前にはジキンさんに連れられたくま君、そして天空の開拓の時に競い合った乱気流のマスターである師父氏。
AWO飛行部からは初顔合わせの二人が来てくれた。
「ちーっす、初めましてっす。自分ムササビって言います。あ、これ名刺です」
「これはこれはご丁寧にどうも。ムササビのハーフビーストで飛行部に所属しているなんて珍しいですね。自分の皮膜で飛ばないんですか?」
「それ、みんなからよく言われるんすけど、自分、もっと大空を滑空したいんす。木から木の間を飛び移るんじゃなく、大空を滑空だけで飛び回りたくて飛行部に参加させてもらってるっす」
上から下まですっかり飛行服に身を包んだ二足歩行するムササビが愛嬌たっぷりにお辞儀をした。
彼をみてるとどこかスズキさんを思い出す。
「そりゃ良い。浪漫に満ちている。今日はよろしく頼むよ?」
「はいっす」
「続いて僕はアウルって言います。うちの父がよくアキカゼさんの話をしていまして、勉強してこいと本日やってきました」
「はて、父というと?」
「父はAWO飛行部のマスターをしている山本です。僕はその息子に当たります」
「はぁ、なるほど。こんなに大きなお子さんがいるとは思いませんでした」
「よく言われます。うちの父は生活が見えないから独身だと勘違いされてるみたいなんですけど、家では立派な父親ですよ。クランのみんなには信じてもらえないんですが」
「ははは。私もシェリルのお父さんには見えないとよく言われるよ。うちの娘は生真面目だからね。私より妻に似たのだろうね。とは言えよく来てくれた。学ぶことよりこっちが胸を借りるつもりでよろしく頼む」
「はい」
アウル君は山本氏と比べて好青年だ。
しかし山本氏とどこかに通ってる雰囲気を感じた。
気性がおとなしいだけで案外本質はよく似ているのかも知れないね。
「では次はワシかな? 乱気流でマスターをしている師父と言う。今はレムリアの姿で失礼するよ。人の体を捨ててはいるが、頭の中では常に人間の肉体でどこまで高みに至れるか考えている。此度の戦場では地上だけではなく空中戦もこなしてみせよう」
「よくぞ来てくれました師父氏。天空攻略以来ですね、お元気でしたか?」
「お陰様での。アキカゼさんのお陰で乱気流のクランも随分と人が増えた。あの試練に参加できてワシらのクラン理念が良い方向に浸透したのはアキカゼさんのお陰じゃ。今日はその時の礼をさせてもらうつもりで来た」
「最後にくまの番くまね。くまは森のくまって言うくま。普段は悪い事をしているレッドネームをお仕置きしたり慈善事業に勤しむ心優しきくまだくま」
「その割にPK扱いされてるのはなんでだろうね?」
「見た目が怖いからですよ。子供に見せたら泣くから変えろと言ってるんですが変えやしないんです」
「くまー父ちゃんひどいくま。息子はかっこいいって言ってくれるくまよ?」
「言わせているの間違いじゃないか? お前の息子はまだ2歳だろう?」
「それを言われると弱いくま」
森のくま君は仕草は可愛く反省していたが、興奮しているのか鼻息が荒かった。
「ところでみんなジョブは何を取った? 一応ランクも公開してもらえたら嬉しいね。まずは私から説明しよう。こう言うのは言い出しっぺから始めるものだからね。ちなみにプライベートな問題だから言いたくないなら言わなくて良いよ」
「俺っちは問題ないっす」
「僕も平気ですね。そもそもアトランティスでランクを公表しない方が迷惑おかけしますし、普通のことだと思ってました」
「無論、ワシも問題ない。切り札はともかくとして、やれることは事前に教えておいた方が事故は少なくて良いからの」
「くまもオッケーくま」
「僕の技術は白日の元に晒されてるので今更ですね」
全員から許可をもらい、私は続ける。
「まず最初に私はアトランティス陣営でテイマーをしている。ランクはⅤ、枠は5で、使役しているエネミーは『シャドウ強化型/タワー』『EBヨルムンガンド』『EBヒュプノ』最後にテイムしなおした『ボール強化型/マジック』を扱っている。EBは古代獣に与えられる表記だ。イベント限定モンスターという定義だろうね。EBは召喚が非常に限定的で最大100秒しか出していられず、その度にEBPというゲージを使う。回復にENは関係なく、自然回復でのみ回復される。そしてこれはあまり知られてない情報だが、古代獣ごとにEBPがある。私はこれらを用いて今回ヤマタノオロチに挑むつもりだ」
「へぇ、テイマーのジョブについて知らないことばかりだったので勉強になるっす」
「これ、さらっと僕たちに教えてますけど結構機密じゃないですか? 古代獣は捕まえられ始めてますが、枠を圧迫するので複数所持は非効率的と言われてます。だから実際に複数持ってるアキカゼさんの情報ってなにものにも変えがたいはずですよ?」
「まぁそれはそれ。今回協力申請したのは私だし、事前に知ってくれていた方がタイミングも計りやすいでしょ? ここぞというときは指示出ししますけど、基本的には各自の判断に任せたいので」
「それは確かに。ご配慮感謝します。じゃあ続いて僕ですね。僕はアキカゼさんと同じくアトランティス陣営でメカニックに就いています。ランクはⅣ。四つのメカを操り、最近ジキンさんの発見してくれたミラージュとの併用での転身で新しい構想が思いつきました。僕に限らず、今回参加するムササビさんも合体勢です。パーツパーツを組み合わせて様々な状況に対応するメカとなっています。乗り物から銃器、ビームソードに変形したりはお手の物。5つ合わせてロボットに変形した事はヒーローショーで見聞きしている方もいるでしょう」
「へぇ、あれってアウル君の仕事だったんだ?」
「それと俺っちのメカが合体してっすね。俺っちも合体変形勢っすが、あくまで強化パーツという扱いっす。メカのパワーアップ要素くらいで単機単機が変形合体させるほど器用じゃないっす。俺っちは空さえ飛べればそれで良いんで!」
「あれってやっぱり難しいんだ?」
「アキカゼさんのところの秋風さん……紛らわしいので探偵風の人と呼ばせてもらいましょう。あの人のメカは芸術的ですね。細部細部のこだわりが普通じゃない」
「あの人は昔から凝り性だったからね」
「凝り性というレベルに収めて良い人じゃありませんよ。とにかくあのレベルの変形ほどではありませんが、僕の操るメカはあれを目指して設計されてます」
探偵さんに密かにファンが出来ていたことにちょっとだけ嫉妬する。けどそれはあの人のロマンがその世代に影響を与えたということだからとても偉大なことだと思う。
「続いてワシじゃな。ワシはレムリア陣営に所属しておる。そしてジョブはブラスター。ランクはⅣじゃ」
「聞いたことのないジョブですね」
「レムリアでは一握りしか成れんからの。これはガンスリンガーとテレポーターをランクⅤまで上げたものに開かれるジョブよ。移動にはTPというゲージを使い、これはアキカゼさんの古代獣召喚と同じ様にENで回復できない特殊ゲージじゃ」
「ほう、TP……テレポーター……テレポートポイントですか?」
「そう思ってもらって構わんわい。ただこのTPじゃが、間に遮蔽物があっても直接相手にビームをワープさせて当てることもできる」
「やばいジョブじゃないですか!」
「ただし消費が激しくての。テレポートと併用してるとあっという間に枯渇してしまう燃費最悪の技じゃ。故に宙に浮くのはスキルで賄う。アキカゼさんの様にワープできるので囮くらいは引き受けるが、あまり多用は出来んのでそこばかりは気をつけとくれ」
カッカッカと笑って元気さをアピールしているけど、レムリアの姿でアピールされても説得力が弱い。
「最後にくまくまね? くまはムー陣営に所属しているグラップラーくま。ランクはⅣくま」
「また知らないジョブが来たね。ジキンさん知ってた?」
「一応事前に聞きましたが、派生条件はずっと一人でいたことだそうです」
「寂しいですね。まぁ熊って群れるイメージないですけど」
「そうくま! 男は一人の力で成り上がるものだってとーちゃんも言ってたくま。だからくまも自分一人の力で頑張ってたくまよ」
ふふんと胸を張るくま君。
あまり背を逸らしすぎると転ぶよ?
言わんこっちゃない。ドシンと尻餅を突いてしまった。
そのままのそのそと起き上がって続きを話し出す。
「グラップラーの能力は部分的に体を巨大化できるくま。腕だけを大きくしてぶん回すことも可能クマよ! スキルも今までと同様使えるくま! ただ空は飛べないので拾って欲しいくま〜」
自己紹介とジョブ紹介は終わり、配信の許可をもらって私達はヤマタノオロチの領域内に赴いた。
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