第二章:殺意の蹂躙

「え……! 事故が起きたんじゃなかったんですか!? 殺害って……、そんなまさか」


 動揺したように瞬きを繰り返す草本。


 話の真偽を確かめたがるように絵夢へ視線を向けてきたので、無言で首を縦に振って答える。


「なんてことだ……。まさか、あの人たちが死んだなんて」


 蒼白になりながら息をつくと、草本は手近な場所にあった椅子へ力なく座り込んだ。


 ついさっきまで一緒に食事をしていた人が、今はもうこの世にいない。


 こんな現実が突然目の前に現れれば、これくらいのショックをうけることもあるだろう。


(そういう意味では、僕は冷静なのかな)


 ふと、そんな疑問が絵夢の胸中に浮かぶ。


 人の死を間近に見るなんてことは一度もなかったが、不思議と取り乱してはいない。


 あれほど残酷な死に方を目の当たりにしているのに、ここまで落ちついていられるのは何故なのか。

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