第二章:殺意の蹂躙

 重苦しい雰囲気に包まれた室内に、遠慮がちなノックの音が響いた。


 絵夢が入り口の扉に目をやると、草本が顔を覗かせた。


「どうも……」


 室内に充満する重い空気を感じ取ってか、困惑したように周囲を見渡す。


「あなたが、草本さんですか?」


 霧洲が訊ねる。


「ええ、そうです」


「私、府中署の霧洲と言います。詳しいことは後ほど説明しますので、申し訳ないのですが草本さんもここでしばらく待機していていただけますか?」


「え? 待機って……、何かあるんですか?」


 どうやらまだあまり状況を把握していないらしい。


 草本は怪訝そうな表情で霧洲を見つめ返す。


「ライヴに参加していた光野 雫さんとそのマネージャー、的場 裕太さんが何者かに殺害されました。細かい部分はこれから本格的に調べを始めますが、その際にみなさんからも少しお話を伺いたいのです」

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