第二章:殺意の蹂躙

「あの、七見さん」


「何ですか?」


「これは、事故なんでしょうか?」


「は?」


 唐突な問いかけに、間の抜けた声を出す七見。


「いや……、そうだと思いますよ。まさか、自殺ということはないでしょうし」


「自殺……」


 その発想はなかったな、と絵夢は思った。


 衆人監視の中で、これほど派手に無惨な死を演出するというのは、現実ではなかなか無いアイディアだ。


 しかし……。


(七見さんの言う通り、こんな自殺はあり得ないだろうな)


 ライヴ前の光野を思い出してみる限り、自殺をしようとしている様子は微塵も感じられなかった。


 だいたい、これから人前で死のうとする人間があんな悠長に昼食をとるだろうか。


(やっぱり、事故なのかな)


 マジックに使われていた小道具に何かしら不備があった可能性。

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