第二章:殺意の蹂躙

「そうですね。まったく、本当に最悪な――」


「七見さん、スタッフの人達が騒がしいんだけど何かあったの?」


 小さく頭を振りながらぼやくように言葉を紡ぎかける七見だったが、背後から聞こえてきた声にしまったというような表情で口を閉ざした。


 それから、慌てて振り返る。


「なんでもない! 今はステージに来なくていいから、控え室で待機していてくれ!」


「え?」


 七見の牽制は、意味がなかった。


 言い終えるより早く舞台袖から顔を出した天寺は、きょとんとしながら強張った表情の七見を見つめた。


 それから、ゆっくりとその奥にある変わり果てた光野へ視線をスライドさせる。


「……」


 瞬時には事態を把握できなかったのだろう、一瞬ぽかんとした天寺だったがすぐにその両目が大きく見開かれた。

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