第二章:殺意の蹂躙

 いつの間にか、床に広がり続ける血溜まりが絵夢の足元にまで流れてきていた。


 慌てて三歩ほど後退しながら何気なく視線を前方へ向けると、床に何かが落ちていることに気づく。


(鍵?)


 近づいて目を凝らすと、それは小さな鍵だった。


 車や部屋等に使われる鍵よりもサイズは小さい。


 いったい何の鍵なのか。


 手に取って確かめられたら良いのだが、あまり余計なことをして後々面倒なことになっても困る。


(あ……、もしかすると)


 ふとあることを思いつき、光野の遺体へ視線を移す。


 鍵が落ちているのは遺体の背後。


 針が突き出す背中を見て、もう一度足元に落ちている鍵へ視線を戻す。


(これって、手錠の鍵なんじゃないかな?)


 光野の両手両足に付けられた拘束具。

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