第二章:殺意の蹂躙

(――!)


 反射的に絵夢もステージ上へ走り出すと、立ち竦むアシスタント達を無視してステージ中央へ近づいた。


「そんな……」


 間近にあるその光景に、堪らず口元を押さえる。


 ステージに設置された巨大な剣山。


 その剣山によって身体中を貫かれた光野 雫が、そこにいた。


 銀色に光るその針が光野の身体から滲み出す血液に赤く染められ、剣山の周りは徐々に血溜まりが広がりだしている。


「絵夢さん……光野さんは……?」


 いつの間についてきていたのか、背後から嶺垣が声をかけてきた。


 そこで始めて、大音量が止んでいることに絵夢は気付く。


「来ない方が良い。嶺垣くんは見ちゃいけない。客席に戻るんだ」


 肩越しに振り返りそれだけ告げると、嶺垣は何かを察したように歩みを止めほんの少しだけ迷った様子をみせてから頷いた。


 左側の舞台袖で、進行役の女性が蒼白になりながら震えているのが見えた。

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