第二章:殺意の蹂躙

 最前列というせいもあるのかもしれないが、ここまで大音量を流されると頭が痛くなってきてしまう。


 鼓膜がおかしくなりそうな感覚に耐えながらステージを見ていると、全てのセットを終えたアシスタント達が木箱から離れだした。


 それを合図にワイヤーがゆっくりと巻き上げられ、木箱が揺れながら浮き上がる。


 草本の話だと、ここから先がこのマジックの見せ場になるはず。


 ドライアイスだろう、ステージ上に白い煙が漂い始めた。


 吊り上げられる木箱は、左右にゆらゆらと揺れながら確実に上へと上昇を続けていく。


 不意に、左の舞台袖から何かが現れた。


(……!)


 それを視界に捉えた瞬間、絵夢は小さく息を飲む。


 マジック用の特注品であろう。


 二人のアシスタントが運んできたそれは、高さ六十センチはあろうかという特大サイズの剣山。

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