第一章:殺意の萌芽
「うん、なんか立派だなと思ってね」
「は?」
意味が理解できないという風に眉根を寄せる助手から視線を逸らす。
神川との会話が済んだらしい羽舞は、近くにあった椅子に腰掛けると、正面に座る影宮と何やら話を始めたところだった。
何だかちゃんとした挨拶もしていない気もするが、そろそろ失礼した方が良いだろうか。
(これ以上ここにいてもすることもないしなぁ)
「お、みんな揃ってるね」
嶺垣に声をかけ退室しようかと思いかけた矢先、外でメールを打っていた天寺が意気揚々とした様子で部屋へ入ってきた。
「七見さんはいないの?」
ちらりと室内を見渡しながら訊ね、自分のバッグが置いてある場所へと向かう。
そのバッグの横には、影宮が持ってきたあの赤い薔薇が置かれていた。
「七見さんはスタッフさんと最後の打ち合わせしてますよぉ」
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