第一章:殺意の萌芽

 歩き去る草本にもう一度頭を下げて、羽舞は扉を閉めた。


「どこ行ってたの?」


 鏡台の前に座ったままの神川が、髪をいじりながら問いかける。


鈴木すずきさんのところに。やっぱり振り付けで不安が残っていたから、もう一度見てもらってたの」


「不安って、ちゃんと問題なく踊れてたよ。鈴木さんだってこれなら本番も問題ないって言ってくれてたじゃない。優衣はもうちょっと自信持たなきゃ駄目よ? 実力あるんだし」


「みんなに比べたら、わたしなんてまだまだよ。足を引っ張りたくないって考えちゃうと、どうしても不安ばかりつのっちゃって……」


 メンバー同士の会話を聞きながら、絵夢は近くに立つ日向へ小声で話しかけた。


「あの、鈴木さんていうのは誰なんですか?」

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