第一章:殺意の萌芽

「いえ、そんなこと……」


 どう言葉を返せば良いのかわからず、困った様子をみせる影宮。


「別に、困るような話じゃないじゃんか」


 目を伏せる影宮へ笑って告げると、草本は入り口の扉を開けた。


「さて、そろそろ俺も自分の控え室に戻るけど、客席まで案内しなくても大丈夫かな?」


「あ、ええ。それくらいなら自分たちだけでも平気です。いろいろありがとうございました。食事まで奢ってもらって」


「良いんですよ。誘ったのはこっちなんだし。それじゃ、また後で」


 軽く手を振って通路へと出ると、草本は扉を閉めようとしてふいにその動きを止めた。


 通路へ出てすぐ横。絵夢の立つ位置からは壁で死角となる場所に誰かがいたらしい。


 僅かに驚いた表情を草本がみせている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る