第一章:殺意の萌芽

 しかし、こういった行動が相手側にたいして悪い印象を与えないのは良いことだ。


 特に探偵のような職業に就いている立場ならば、なおさら都合が良い。少なからず依頼主にも信頼してもらえるかもしれない。


「あの、優衣はどこにいるんですか?」


 室内を見回していた影宮が、困ったような表情を浮かべながら口を開く。


「ちょっと前にどこかへ出ていったみたいだけど、よく分かんない。御手洗いかな?」


「そうですか……。すぐ戻ってくると良いんですけど」


 近くにあった椅子に座りながら影宮が呟く。


「本当に仲良いよね、影宮さんと優衣ちゃんって。俺にはそういう関係の相手がいないから、羨ましくなるよ」


 扉の横に立っている草本が、目を細めて影宮を見つめる。

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