107・試験発表
実技試験はその後問題なく過ぎて行った。ジュールに続いて、リュネーも特に危なげなく実技試験を切り抜ける事が出来て、試験が終わったその日はレイアも交えて一緒に反省会をした。
レイアの方は学力も実技もそれなりに出来たようで、それを私に嬉しそうに報告してくれていた。
無事に試験の一日は終わって、結果発表の日まで、どこかそわそわしたような空気に包まれていて……誰もが待ち焦がれていた21の日が訪れた。
――
教室に入ると、緊張が広がっているのがわかった。
ちらっと私の事を見て、明らかにがっかりした子達がいたから、多分ベルーザ先生を待っているんだろう。
「おはよう。ティアちゃん。ジュールちゃん」
既に教室に来ていたリュネーと挨拶を交わした。彼女は結構落ち着いているみたいだ。
「リュネーさんは今日の発表、緊張しないのですか?」
「少しはするけれど……あの時、私は自分の力を精一杯だしたから、それを信じることにしてるの」
そう言って笑うリュネーの姿は、ほんの少しだけ大人になったように見えた。
ジュールにも同じように映ったのか、目を開いて驚いているようだった。
そうこうしているベルーザ先生が教室の中に入ってきて、ざわざわしていた生徒のみんなは、自分の席についた。
「……よし、みんな集まったな。まずは試験お疲れ様。まずは学力試験の用紙を返そう。名前を呼ばれた者は取りに来るようにでは――」
一人ずつ名前を呼ばれて、とうとう私の番が来た。まっすぐベルーザ先生に歩み寄り、その手から答案用紙を受け取る。流石に受け取った直後に点数を見るような無粋な真似はせず、しっかりと机に戻ってから確認する。
どちらかというと良い方だった。これならば、お父様に見せてる事が出来そうだ。それだけが気掛かりだったから、ほんの少しだけ安堵した。
「実技試験の結果は渡り廊下に張り出しておくから、後で確認しておくように。上位五名とエールティアは放課後に職員室にくるように」
その後すぐに授業が始まったんだけど……やはり試験の結果が気になるのか、そわそわしている雰囲気は拭えないまま、時間が過ぎていった――
――
午前の授業が大方終わり、昼休みに入ったその日はいつもと少し違っていた。試験の結果を見に来た生徒達のせいで、ちょっとした人だかりが出来ていた。
夏休み前の結果発表でもここまではなかった。やっぱりみんな気になるのは魔王祭に行けるかどうか、なんだろう。
「ティアちゃん、どうだった?」
「まだ見てない。レイアは?」
「ふふ、ふふふ、もちろん良かったよ」
偶々出会ったレイアに結果を聞いてみると、なんとも気味の悪い声で笑っていた。良かった……という事はかなり上位に食い込んでいたのだろう。
「そう。良かったじゃない。今回は魔王祭の見学が掛かってるものね」
「ティアちゃんは最初から決まってるものね。そういえばリュネーさんとジュールさんは?」
「あの子達は私を置いて行ってしまったわよ」
リュネーもジュールも、我先にと結果を見にいってしまった。それだけ気になるのだろう。
そういえば、答案用紙を貰った時、ジュールの顔が青ざめていたような気がするけれど……行ってみればはっきりわかるか。
しばらくの間、中々動かなかった人だかりが少しずつ進んでいって……ようやくたどり着いた時、レイアがなんであんな笑みを浮かべていたのかがわかった。
――
一位 エールティア・リシュファス(魔王祭見学候補除外)
二位 雪風・桜咲
三位 フォルス・イーディアス
四位 レイア・ルーフ
五位 リュネー・シルケット
六位 ウォルカ・エスフィニ
――
……まさか、私の名前の横にそんな事を書かれているなんて思いもしなかった。というか、結構知ってる人が上位にいる。雪風とフォルスって子は知らないけれど……違うクラスの子なのだろう。ウォルカは以前、オーク族のアストラに絡まれた時に少し話した妖精族の男の子だ。今でも偶に会話してるけれど、知人以上友人未満といった関係だ。
「ジュールは……駄目だったみたいね」
良く見たら、上と中の間くらいの順位にジュールの名前はあった。確かあの子は結構出来たって言ってたと思うけれど……。
そんな風に考えていると、渡り廊下の端でジュールが何とも言えない表情で絶望を噛み締めている最中だった。
「……ジュール?」
「……っぱり、な……」
私の声が聞こえていないのか、ぼそぼそと何かを言っていた。こういう彼女は珍しかったので、ゆっくりと顔を近づけて、何を言ってるか聞き取ろうとしてみると……。
「なんであんなミスを……せっかくエールティア様と一緒に魔王祭を見れるはずでしたのに……」
ぶつぶつと呟いている言葉を聞いていると、どうやらいくつか凡ミスをしていたみたいだ。おまけに一部の科目はあまり良い点数じゃなかったらしい。なんとか実技で巻き返そうとした結果、半分くらい上手くいったそうだけど……やっぱり甘くはなかったみたいだ。
可哀想だけれど、今回は諦めてもらうしかないだろう。
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