第134話 試験という名のデート
今日はヴィナを弟子にとるかどうかの試験という名のデートだ。
ヴィナは魔力増強の魔道具をジャラジャラとつけて現れた。
やっぱりな。
魔力を増やす欲求には逆らえなかったか。
「今日はどこに行く」
「呪文屋に行ってから、図書室に行って、そして研究室よ」
「マッドサイエンティストらしい選択だな」
「私はそんなのじゃないわ。ちょっと魔法に対する好奇心が旺盛なだけよ」
「まあいいや。とっとと行くぞ」
呪文屋に着いた。
タルコットの店ではなく、ミニアと最初にきた呪文屋だ。
この店の目玉は確か銅貨二十枚のくじだったな。
ヴィナはまっさきにくじを目指した。
やっぱりそこに食いつくか。
「くじお願い」
「どうぞ、好きなのを選んで」
ヴィナがくじを五枚引く。
「ハズレ、ハズレ、ハズレ、ハズレ、えっと、これは当たりなのかな」
「どれどれ。ソクチス・ニミハスチスイシレ・ソクチス・モチニミゆヒラニシよ・が・スイカナスミゆニミハスチスイシよレ・む、だな。ちょっと待て、考える」
char infrared; /*赤外線*/
char main(void)
{
return(infrared); /*赤外線を返す*/
}
「どう分かった」
「暗視の魔法だな」
「便利そうじゃない」
「お客さん、残念ながらそれはお遊び魔法なんですよ。使ってみれば分かります」
「そうなの。ソクチス・ニミハスチスイシレ・ソクチス・モチニミゆヒラニシよ・が・スイカナスミゆニミハスチスイシよレ・む。視界せま」
「分かりましたか。実用には適しません」
改造すれば使えるな。
char infrared[10000]; /*赤外線*/
void main(void)
{
TEL *tp; /*伝言の定義*/
tp=topen("テニツチスシ"); /*俺の回線を開く*/
twrite(infrared,1,10000,tp); /*伝言に書き込み*/
tclose(tp); /*閉じる*/
}
こんなのでどうだ。
視界1メートルの正方形だ。
ドラゴンは赤外線が見えるのでいらない魔法だが、ミニアには使える。
「ちぇ、今日はハズレね」
「姿隠しの魔法はここで手に入れたのか」
「ある訳ないよ。遺跡で手に入れたのよ」
「やっぱり使える魔法は遺跡だな」
「ええ。図書室にいきましょ」
お馴染みの学園の図書室だ。
ヴィナは盛んに何かを探して図書室をうろついた。
「何か探している文献があるのか」
「今は蘇生魔法を探しているわ」
「ほう、蘇生魔法ねぇ。手掛かりはあるのか」
「古代の文献に記述があったの。特別に見せてあげる」
写したと思われる魔法語を見せられた。
どれどれ。
『チカナカチスチニニミチ・トラミラトチミ・トラトイニモチクラナ』か。
直訳すると、『在ったらいいな その三、蘇生魔法』だ。
「この文献は希望というか空想を書いた物だ。望み薄だな」
「そんな。今までの努力は無駄だったというの」
「そんな事はないぞ。調べる過程で色んな知識を身に着けただろ。それは糧になっているはずだ」
「無駄じゃなかったのね。魔法の達人のいう言葉だから、信用するわ」
「次は研究室だな」
ヴィナが慣れた様子で研究室の鍵を開ける。
その研究室は書棚が沢山置いてあって、黴臭そうな感じがした。
「この研究室の研究テーマはなんだ」
「ゴーレムの作成よ」
「おう、それは俺も知りたい」
「でも、中々ゴーレムの実物が手に入らなくて、研究は進んでないわ」
「なんて所に連れて来るんだよ。今は授業中で人がいないが。人が帰ってきたら、大騒ぎになりそうだ」
「鍵を掛けたわ。ゴーレムの秘密を教えて」
「いいだろ」
『ソクチス・モチカイスニチリガヌワムレ・
ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・
ソクチス・ラスコニカガヌワワムレ・
モチキニソ・けモセレ・
モセほモチキニソろモチノイゆモチカイスニチリネトニツイラハゆモチカイスニチリよネニモチキイコリラソノよレ・
モチキニソろトセニスチリゆモセネラスコニカネトニツイラハゆラスコニカよよレ・
モチキニソろモラヒイゆモセネラスコニカネトニツイラハゆラスコニカよよレ・む』と紙に書いて渡した。
「何の呪文?」
「物質を円運動させる呪文だ」
「なるほど、あなたはこうやって動いている訳ね」
「納得したか」
「ええ、視界はどうやって確保しているの」
「それがな。研究途中でスライムに感覚共有して補っている」
「でも、実際にゴーレムを作れたのだから凄いわ」
扉のところがガチャガチャとうるさい。
「ありゃ、研究室のメンバーが入ろうとしているのか。俺は人が来たら退散するぞ」
「そんなはずは。メンバーはみんな鍵を持っているはずよ」
扉の所で爆発が起き、扉が吹き飛ばされた。
せっかちな野郎だな。
ノックして開けてもらえばいいのに。
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