Ver.3 講師編

第21章 助手のドラゴン

第120話 ドラゴン連絡網

「えー、呪文翻訳学の授業を始める。私は講師のミニア」

「俺は助手のホムンだ。賞金首なんで、本人を見つけても放っておくように」


 いよいよ、ミニアによる呪文翻訳学の授業が始まった。

 生徒はなんと五人。

 そのうちの一人はセラリーナで身内もいいところだ。


 講義は進み。


「とこのように翻訳出来るわけ。次回からは実際に魔法を改造するから、期待して」


 ミニアの講義は無難に終了した。


「洒落たカフェ見つけたの。行かない?」


 そうセラリーナがミニアを誘っている。


「あの私もご一緒していいですか」


 そう言ってきたのは女生徒の一人だ。


「うん、いいよ」

「そうね。人数が増えると楽しいわ」

「メイリーンです。よろしくお願いします」

「ミニア。よろしく」

「セラリーナよ。仲良くしましょ」


 俺は女の子の輪には邪魔だな。

 退散するとしよう。


 俺はドラゴンの身体を駆りウィッチの所に押しかけた。


「よう、遊びに来たぜ」


 俺はドラゴンの言葉で言った。


「伝言魔法でも良いのに。会いに来たの。呆れた」

「なんか顔を見たくなってな」

「用事がないなら帰って」


「えーと、そうだ。知り合いのドラゴンが増えたんだ。伝言魔法のドラゴンネットワークを作ったらどうかな」

「他のドラゴンと話す事なんてないわ」

「でも未来は分からないだろ。人間が大挙して攻めて来たらどうする」

「それは面倒ね。縄張りを放棄するのもしゃくだわ」

「だろ。連絡するかはともかく連絡網は作っていいんじゃないか」

「ええ」


「あー、幼竜はどうするかな」

「戦力にならないでしょ」

「そうだな死なれてもな。そう言えば会う成竜はみんなメスなんだがなんでだ。幼竜はオスだ」

「そんな事。ドラゴンは数が減ったのよ。そして生き残ったのがほとんど身体の大きなメス」

「なるほどバランスを取り戻そうとオスばかり産まれるのか」

「そうね」


 一つドラゴンの生態が理解できた。

 帰りにスネイルの所へよると、スネイルはむしゃむしゃと草原の草を食べていた。


「何の用」

「伝言魔法ってのを教えておこうと思って」

「それ、何の役に立つの」

「助けを呼べるのが利点かな」

「必要ないと思うけど教えて」


 俺は伝言魔法をスネイルに教えた。


「困った事はないかな」

「時たま身体が無性に痒くなる時があるの。身体を岩とかにこすりつけるのだけど、上手く行かなくて」

「水浴びはしないのか」

「しないわね。周りに湖もないし」


 そうだな小川はあるが、スネイルの巨体ではすずめの涙だ。

 しょうがないな。

 冒険者ギルドに依頼だな。

 依頼料は肉食魔獣一頭ってところか。


「俺がなんとかしてやるよ」

「頼むわよ。痒くなったらイライラするの」


 俺は最寄の冒険者ギルドにゴーレムで顔を出した。


「依頼をしたい」

「はい、うけたまわります」

「依頼主は幻の草原にいるドラゴンで。仕事は彼女の身体洗いだ。依頼料は肉食魔獣一頭だ」

「うーん。困りましたね。あなたテイマーですよね」

「そうなっているな」

「ドラゴンとの意思疎通はどうやって」

「もちろん伝言魔法だが」

「それだと一方通行ですよね」


 どうしようかな。

 やむを得ない。


「ドラゴンが伝言魔法を使えるよう調教した」

「そんな馬鹿な。ドラゴンが魔法を使うですって」

「事実だ。彼女の名前はスネイルで、魔法名は『トミチニリト』だ。疑うのなら会話してみると良い」


「ギルドマスター!」

「どうした」

「私ではこんな案件扱えません」

「説明しろ」


「俺が説明しよう」

「ドラゴンに伝言魔法を仕込んだ」

「どうやって」

「そこは秘術だな」

「そうか、教えて貰えないとは思っていたよ」


「話を戻すぞ。ドラゴンが痒くてたまにイライラするらしい。ドラゴンの身体洗いの依頼を頼みたい」

「そうなのか。ちなみにどんな所が痒いんだ」

「ウロコのな隙間にゴミが詰まるんだ。そうすると痒くなる。普通だと、ドラゴンは水浴びして回避するんだが。幻の草原には大きな水場が無いだろう。だからできない」

「あんた詳しいな。さすがドラゴンに伝言魔法を仕込む男だ。表のドラゴンもあんたのだろう。ドラゴンを手なずけるコツを教えてくれないか」


「表のドラゴンは弟子のだが、一つ言うとドラゴンは孤高で仲間を求めてない。普通は無理だな」

「そうか。がっくりだな。ドラゴンを愛馬にしたかったんだが。子供の頃の夢さ」

「彼女と仲良くなれば乗せてもらえるかもな」

「そうか、根気良くやってみるぜ」


 依頼は無事に受理された。

 ウィッチにドラゴンが伝言魔法を使えると、人間にばらした事を伝えた。

 私も人間と伝言魔法したかったのよねと彼女から返答があった。

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