第19章 テスト期間のドラゴン

第111話 建国クラブ発足

「建国クラブ第一回会合を始める」

「なんで俺達ここに集められてるの」


 ミニアの宣言にダッセンが文句を垂れた。

 またミニアは思いつきで妙な事始めたな。


「道化師はギャグ以外発言しないように」

「もしかして、俺達も道化師なのか。強くなれると聞いて参加したんだが」

「ライナルドは守備隊長」


「俺は?」

「エイドリクは下級文官。セラリーナは女公爵。ホムンは宮廷魔導師」

「ミニア、公爵だなんて、手に余る」

「仮の家臣だから、安心して」


「強くなれないなら俺は帰る」

「第一回の議題はどこに建国するか決める。その候補地に魔獣を蹴散らして突撃よ」

「奥地の魔獣とやれるのなら歓迎だ」


「ドラゴンの護衛はつくのか。俺、ドラゴンの護衛が居なかったら行かないぞ」


 とエイドリク。


「俺も行かない」

「もちろん一緒。ダッセンは語尾にげすをつけるように」

「なら行くよ」

「俺も行くでげす。くそう、雇われてるこの身がつらいでげす」


 ダッセンのりがいいな。


「私も一緒に行くわ。森の奥にピクニックなんてきっと楽しいわね」


「候補地をどんどん挙げて」

「俺は遺跡群の近くが良いと思う。強い魔獣が居そうだ」

「却下、畑が作れない」

「じゃあ、草原で」

「それはどこの草原?」

「えっと、どこかにあるだろ都合のいいのが」

「それだったらあるでげす。幻の草原でげす」

「いい。とってもいい。幻というのが気にいったわ。ダッセンはその場所の詳しい情報を調べて」


「魔獣の情報も頼む。強いのが居るといいんだが」

「強いのは勘弁して」

「私は草原でピクニックなんていいと思うわ」


「宮廷魔導師、意見をどうぞ」

「あー、怪我のないようにな。まあ、この間のゴーレムみたいな強敵はいないだろう。あの時でもドラゴンは無傷だったんだよな。電撃で気絶しかかったけど」

「なんの話でげすか」

「こっちの話。気にしなくていい」

「幻の草原、いいと思うぞ」


「現地まではドラゴンで飛ぶから、馬車の手配は要らない。皆は手ぶらできて。日程は私の試験が終わったら知らせる。では、第一回建国クラブ終わり。解散」


 今は試験期間だから、生徒が自由に出歩いている。

 講義がなくて進級試験を受ける生徒が少ないからだ。

 試験を受けるにはお金を取られる。

 駄目元で受けているとお金が幾らあっても足りない。

 それにカンニングは禁止だ。

 カンニングが見つかると下手をすると退学になる。

 入学試験は再度受けられるが、同じ手のカンニングは通用しないため、カンニング入学は更に難しくなる。

 当然、進級試験には筆記用具以外の物は実技に必要な物しか持ち込めない。


 ミニアのカンニングを手伝うつもりはなかったからいいと思う。


「なあ、ミニア。あんまり頑張る必要はないぞ」


 ゴーレムを使い隣を歩いているミニアに話し掛けた。

 五年で建国するという目標はあるが、どうしてもじゃない。

 五年は人間にとっては長いからな。

 その間に王国の情勢が変わるともかぎらない。


「絶対卒業してはくをつける」

「貴族だって魔法学院の卒業生は少ないんだから。力を抜いてリラックスだ」

「分かった緊張しないように頑張る」

「講師の試験のレポートというか論文はできたか」

「うん少しだけ」

「見せてみろ」


 ミニアからレポートを受け取って見てみた。


 呪文に対する新しい形での翻訳 ミニア


 魔法語は現在秘密のベールに包まれている。

 しかし、そのままで良いのだろうか。

 否である。


 ここに私は呪文を翻訳して新たな言語を創造するという提案をしたい。

 『ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・ハニスイろコチリリろカイトカゆよレ・む』という呪文がある。

 これは誰もが最初に覚える呪文である。


 これを私は以下の様に翻訳した。


返答期待しない 主よ(注文うけない)

{

 火、玉、試験();

}


 ここで注目するのは『()』の役割だ。

 これは事柄を受け渡すのに使われる。


 次に注目するのは『{}』の役割だ。

 これはやってほしい事の始まりと終わりを示している。


 『;』はやって欲しい事の単体の終わりだ。


 どうだろう呪文が分かり易くなったのではないだろうか。


 ここでレポートは終わっている。


「短いな。実例をもっと増やした方が良い」

「うん、そうする。でも翻訳難しい」


 一つ手助けしてやるか。

 十連続弾を翻訳するとさしずめこうだな。


返答期待しない 主よ(注文うけない)

{

 『ニ』を定義;

 10回繰り返し{

  火、玉、試験();

 }

}


 こんな所だろう。

 ループの所を詳しく書く事もできるが、簡潔かんけつにまとめた方がいい。

 文章を空中に出した。


「ミニア、十連続弾はこんな感じでどうだ」

「うん、参考になった」

「誘導弾だとこんなだ」


 以下の文章を空中に出した


返答期待しない 主よ(注文数受け取る、注文受ける)

{

 軌道データを定義;

 『ニ』を定義;

 魔法『モセ』を定義;

 モセ=火、玉、作る(威力1000);

 千回繰り返し{

  魔法、方向(モセ,軌道データ,軌道データの長さ,注文1);

  魔法、動かす(モセ,軌道データ,軌道データの長さ);

 }

}


「なるほど、こんな感じで翻訳していけば良いのね」

「後は頑張ってみろ」


 ふと、明日は遠出などしてみたいなと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る