第4章 冒険者のドラゴン

第21話 薬草採取

 ベヒーモスの素材はギルドのお金が足りないので買取拒否になった。

 しょうがないので代金の代わりに家が建っている周辺の土地を押さえた。

 その土地は所有者がなくただ同然みたいだ。

 厳密に言うとこの街の領主に所有権がある。

 ベヒーモスを売った金の一部をギルドマスターが領主に納め許可を貰った。

 余った金の代金は魔法払いに。

 俺は貰った土地を囲むようにストーンウォールで壁を出し囲った。

 出入りは俺が飛んで行う。

 後で鍵付きの入り口をミニア用に作らないとな。


 ミニアはというと。


「Dランク。させられた。薬草採取。課題」


 フェンリル、ギガントボア、ベヒーモスと高額すぎる獲物をギルドに売ったので今のままじゃ不味いとなったらしい。

 二階級アップしてDランクになったのだが、魔獣の素材しか納品していないので課題を出された。

 その第一弾が薬草採取だ。


「でどの薬草を採れば良いんだ」


 俺は魔法を使い話し掛けた。


「これ」


 ミニアが冊子に書かれた絵を指差す。

 えーと、ヒール草。

 絵の横にはヒールポーションの材料と書いてある。

 ギザギザの葉っぱといい、黄色い花といい、形はまんまタンポポだ。

 飛びながらは探せないな。

 ミニアに付き添い歩きながら森に入る。




 黄色い花をつけていれば薬草は分かり易いのだが、そんな都合が良い訳ない。

 雑草の中に埋もれている薬草は本当に分かりづらい。

 一時間ほど探しているのだが、結果はゼロだ。


「むう。ない」

「そう、むくれるなよ。一緒に探してやるから」


 ドラゴンの大きな体はちっぽけな薬草を探すのは不向きだ。

 中腰で薬草を探すドラゴン。

 なんて酷い絵面なんだろう。

 格好よさの欠片もない。

 いらいらしてきた。

 こういう時は魔法の出番だ。


 貰った魔法の中から使える物を探す事にした。

 ミニアがアイテムボックスから魔法を出して、一枚一枚を俺に掲げて見せる。

 あった、対地形サーチ魔法だ。

 解析した魔法のイメージはこんな感じだ。


void main(int argc,char *argv[])

{

 TEL *tp; /*伝言魔法の定義*/

 char terrain[1000]; /*地形データ格納場所*/

 int i; /*カウンター*/

 tp=topen("魔法名"); /*回線を開く*/

 terrain_load(terrain,sizeof(terrain)); /*地形データ読み込み*/

 for(i=0;i<sizeof(terrain);i++){ /*ループ*/

  if(terrain[i]==*argv[1]){ /*地形データと探し物比較*/

   tprintf(tp,"距離は%d、方向は%s",distance(i),directt(i)); /*結果を伝言として送る*/

  }

 }

 tclose(tp); /*閉じる*/

}


 地形データを読み取って目当ての物と比較して答えを返す。

 なんて事のない魔法だ。

 検索範囲が狭いのでそこを増加してコンパイル。


 実行すると薬草へ距離と方向のイメージが頭の中に送られた。

 これ範囲内にある薬草全てに反応している。

 ドラゴンの頭じゃなかったら覚えきれないところだ。


「そこ、今居る所から半歩先だ」


 ドラゴンの指を使うと薬草は摘まめない。

 なのでミニアに指示を出した。


「薬草。あった」

「次はその右隣だ」


「ふん♪、ふん♪」


 ミニアから鼻歌が飛び出す。

 機嫌が直ってなによりだ。


 そういえばポーションってどう作るんだ。

 さっき見せられた魔法の中にポーション作成の魔法があった事を思い出した。


 イメージは。


void main(void)

{

 potion_make_test();

}


 もの凄く簡単だ。

 でも今までの例でいくと上級者用の魔法があると見た。


 採った薬草に魔法を掛ける。

 薬草は薬瓶に入ったポーションに変化した。

 おい、薬瓶はどこから出てきた。

 ストーンバレットで石の塊を出しているから今さらか。


 薬草を五束採取して依頼に指定された数は揃った。

 俺はミニアを乗せて街に向かって飛んだ。

 今回は街道脇ではなく冒険者ギルドの前に着陸した。

 実はベヒーモスを売ったら領主の覚えが目出度くなった。

 つまり、街に入る許可が得られたのだ。

 俺は冒険者ギルド前の大通りにでんと居座った。

 馬車が通れなくて俺の前で停まる。

 すいませんね。でかい図体で。

 俺は建物を壊さないように慎重に羽ばたいて浮き上がった。

 おっかなびっくり馬車は俺の下を通過していく。

 再びギルドの前に居座る。

 ミニア、遅いな。

 俺は耳を澄ませた。


「鑑定終わりました。薬草一束銅貨五十枚になります」

「五束。50足す。50足す。50足す。50足す。50足で。分かんない」

「銀貨二枚と銅貨五十枚です」

「じゃあ。それで」


 ミニア計算が苦手なんだな。

 後で教えてあげないと。

 待てよ魔法で解決できないか。

 こんなイメージでどうだろう。


int main(int argc,char *argv[])

{

 int i,ans; /*カウンターと答え*/

 ans=0; /*合計の初期化*/

 if(argc<2) return(0); /*足す数字がなければゼロを返して終わり*/

 for(i=0;i<argc-1;i++){ /*足す数字の分だけループ*/

  ans=ans+atoi(argv[i+1]); /*足し算*/

 }

 return(ans); /*答えを返す*/

}


 足し算限定だが、当座はこれでいいだろう。

 それとエラー処理の事に気づいた。

 今までの魔法はそこにバグが潜んでいる。

 この魔法を例にとると足す数字がないとバグる。


 それで『if(argc<2) return(0);』をつけた。

 こういう事は厳密にやったほうが良いだろう。

 他の魔法も見直して対処する事にした。


 薬草を売ったミニアが出て来る。


「お疲れ。実は足し算魔法を作った。使ってみてくれ」

「ウィザ。天才。大好き」


 ミニアは満面の笑みで言った。

 嬉しかったのだろう。

 計算しまくって魔力切れを起こした。

 俺はミニアをそっと咥え。

 そして、街道脇の家まで運んで行き家の中に壊れ物を置くように横たえた。

 苦労して口で毛布をかけ、俺もその横に寝そべった。


 あどけない顔で眠っているのを見て思う。

 まだまだ、お子様だな。

 でも、嫁に行く時にはきっと泣いちゃうんだろうな。

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