5ー22
公演館内・管理ルーム
管理ルームの中では、ブルーキャットの一員であるベンガルが一人、パソコンに向かってキーボードを打っていた。
「………」
(くっ、私よりもハッキングが上手い……!それに同時に多数から攻めてくるとは……)
山蘭とシャムは、炎悟と氷宮。ニャン吉とソマリは、諜報部『暗ノ道』含め"鴉"と交戦をしているが、ベンガルは"見えぬ敵"と戦っている。
リーダーである山蘭を助けにシャムは管理ルームを出た後も、ベンガルはハッキング相手と戦っていた。主権を取り戻しても、取り返され、暗号化されるーーその繰り返しだ。
人間であるベンガルが勝てないのは、当たり前だ。なんたって相手は、天才が生み出したAIが相手なのだから。体力など不要。フルタイムで、攻め入る事が出来るのが、AI。
そんな事も知らず、どうにかしてなんとかしようとしているベンガルのパソコンの画面がいきなり真っ暗になった。
「!どうして……電源がつかない。もしかして……やっぱり」
画面が消えたパソコンの電源を入れようとしてもつかず、管理ルーム全ての電気が使えなくなってしまった。
こうなっては、自分がここにいる意味は無いと思い、仲間の元へ管理ルームから出ようとしたが、管理ルームの出入り口はオートロック式。いくらドアノブを押しても開かず、立ち止まってしまった。
「他に出口は……窓は無い。完全に閉じ込められた」
(公演館の電力の元を断たれた……。これだとリーダーやシャムにも会えない)
仲間に会えなくなったと言う真実を突きつけられたベンガルは、少しの悲しみと己の無力さに嘆きそうになったが、そんな事をしている暇があるなら、他の出口はないか探そうと決めた。
そう思い、部屋中を探し回っていると、なんだか息苦しくなってきた。
「はぁ…はぁ…空気が減ってる……?」
(窓も無く、扉もオートロック式で隙間も無い……)
なんとか探そうとしたが、見当たらず、ただただ空気を減らすだけで、息苦しさが増してきた。
空気が少なくなったのと、普段動かなかった為、急に動かした事によって余計に空気を減らしてしまった。
「はぁ…はぁ…」
(本当に……やばい。目が……ボヤけてきた)
体も言う事を聞かず、壁に横たわるように座り、両目はボヤけ、段々と見えなくなってきた。
ベンガルは、目蓋を閉じると同時に意識も段々と暗くなりながら消えて行った。
管理ルームの扉が静かに開けられた。
一人の全身黒装束は、壁に横たわっているベンガルの前に膝をつき、首元に手を当て、生きているかを確認をする。
その時。ベンガルは、目を開き、首元にある黒装束の手首を掴み、睨みつけるように見つめた。
「……!」
「質問……貴方は、誰?」
「………」
(まだ、意識があった……)
ひ弱そうな腕でも追い詰められた時には、これまで以上の力が湧くと言うのは本当だ。
ベンガルが掴んできた手を離そうとしても動かず、掴まれていない手の方でまた、気絶させようと思った時、ベンガルはぬいぐるみに仕込んであったナイフを取り出し、黒装束の胸に向かって刺した。
「っ!…さ、刺さらない」
「特別性の繊維で作られた布は、刃や火、電気も通しません」
「完敗、一矢報いれなかった」
「それでは……おやすみなさい」
「うん……おやすみ」
(ごめん、リーダー。負けちゃった)
そうして、ベンガルは本当に意識を失った。
「任務完了、ブルーキャットの一員を捕らえました」
全身黒装束の正体は、諜報部『日ノ河』のリーダーである"狐"だった。顔には狐の仮面を付けており、左手の甲には黒龍組を表す、金の龍が刺繍されている。
今日は、会長の達也の護衛として達也の付近にいたのだが、諜報部管理AIの指示によって、ベンガルを確保しにきたのだ。
通信で言うと、パソコンの電源が付き、画面にはアスタロトグループ社と諜報部のマークが写っており、管理ルームのパソコンからAIが確認し始めた。
『確認……。ブルーキャットの構成員と一致。捕虜として確保しろ』
「了解」
『引き続き、"狐"は会長の護衛に務めろ』
「捕虜は、他の者に引き渡しておきます」
諜報部管理AIとの通信が終わると同時に、他の諜報員達が現れ、ベンガルを連れて消え去った。
それを見送った"狐"は、管理ルームの電気類の全ての機材が戻ったのを確認すると、"狐"も管理ルームから出て、達也の護衛へと戻った。
その後、ベンガルの仲間である山蘭、シャムが来た時には、管理ルームはもぬけの殻だった。
ーーー
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作者
4連休だ〜!やった〜!
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