5ー14





「ゆ、結衣さん?いつの間に……」


「……ついさっき……達也が項垂れてたから……どうしたのかぁって」



 俺は今、結衣を見上げる状況になっていた。近藤さんと話が終わって項垂れていると後ろから来た結衣には気づかなかった。


 近藤さんとの話を聞かれてないのかと冷や冷やしたが、結衣は俺と近藤さんとの話が終わるのを待ってくれたのだった。



「……なるほど……さっきの人は……達也の知り合い」


「そそ、たまたまベンチでお前の事を待ってたら、久しぶりに出会って、話をしてたんだよ」


「……ふむ……女では無い……なら、良し」


「逆に女だったら怒るのか……」


「……ん?……何だって?」


「い、いや。何でもありませんよ!」



 しかし、近藤さんとの話を聞かれなかっただけ、良かった。それにしても……結衣の格好が……。


 近藤さんとの会話を聞かれてなかった事に対して安堵と結衣の格好に対して……ニヤケが止まらん!


 綺麗な白髪はロングヘアーからツインテールになっており、肩出しのワンピースを着ており、ベージュ色の丈の長いスカートを履いていた。

 

 いつもは、おとなしいクールな女性のイメージなのだが、今、隣にいる結衣は一味違った。なんだか、クールさから小悪魔系?になったと俺は思う。



 そう隣にいる結衣を見ながら思っていたら結衣は俺が見ていた事に気づき、不敵な笑みをし、前髪の隙間から見つめてくる目にドキッとした。



「……どう……この髪?」


「え?え、えぇ〜と……大変美しいでございます」


「……フフ……ありがと」


(あかん、結衣が小悪魔になってるぅぅぅううう!!!)



 俺は顔が熱く赤くなっている顔を両手で隠し、結衣からそらした。



「……顔真っ赤」


「んっ!そ、そんな事はありますけど……」


「……フフ……可愛い」


「つ、突かないで下せぇ〜」



 両手で隠している指の隙間から頬をツンツンと突かれ、真っ赤になっている事も指摘され、もっと赤くなった。


 この状況はひじょーにまずい!どうにか打破しなくては!後手に回ったら厄介だ!



「も、もう行くか?時間も時間だし、さっさと買い物を済まそーー」


「……私はここで……達也を眺めてても……良いよ」


「……も、もぉ〜行きましょうよぉ」


「フフ……分かった」



 行く前に心が結衣の言葉で溶けかけていく。なんとか結衣を説得した俺は、行く道中もいじられ続けたのであった。




 そして、一つ学んだ。




(結衣が小悪魔になったら、厄介だ!!!)




 

 ーーー





 私は、電話で会う約束したアスタロトグループ社会長ーー黒崎 達也とブルーキャットの事で話し合った。



「班長、収穫はどうでしたか?」



 車を運転してくれているのはうちの部署や部下だ。鞄の中から封筒を取り出し、その封筒からアスタロトグループ社が調べた情報を見直した。



「そうですねぇ……可もなく不可も無く。流石は、アスタロトグループ社と言ったところか、我々の知らない情報も持っていましたよ」


「アスタロトグループ社って、一体どう言う会社なんですか?ちょくちょく、うちの部署の先輩達が話しているんですが……」


は、建設・金融・医療・ホテル経営から警備会社まで幅広い部門でトップを取っているのが、大手企業アスタロトグループ社です」


「表向きは……ですか」


「えぇ、【裏側】に関しては貴方は知らなくても良いでしょう」


「……どうしてですか」



 運転をしている私の部下は、少し不満げな声のトーンで言ったのはすぐに分かった。私の部下は新しく入ったばかり、知らない事は多々あるだろう。



「貴方は何かを捨てる度胸はあるんですか?」


「え……?」


「貴方は何かを知るために、何かを失う度胸はあるのかと、聞いてるんですよ」


「そ、それは……」



 バックミラーで私は運転している部下を睨むように見た。彼の目から躊躇するような顔をしており、断言は出来ていなかった。




「この世には知らなくても良い事があるんです。知ってしまえば、この世に居られなくなってしまう事もあるんですから」


「……分かりました」



 封筒に書類をしまい、鞄の中へと入れた。車の窓から見えた景色は、薄暗い雲が光り輝く太陽を包み込もうとしていた。



(黒崎 達也。若き社長であり、歳に似合わない程の風貌を持つ男。しかし、君の心はまだ、未熟………しかし、裏を返せば、大人になった君はどんな風に変わるのか。少々、楽しみですねぇ〜)



 そう思った私は小さくため息をつき、警視庁に着く前に少しだけ寝る事にした。






 ーーー






 俺は今、とてもまずぅ〜い状況になっている。公園を出て、服屋に向かうまでは良かった。入った後が地獄、いや、天国だった!



「……これ……どう?」


「美しいっす」


「……じゃあ……これは?」


「マジパネェっす」


「……う〜ん……どう?」


「はぁ〜……」


「……だ、ダメ……だった?」


「女神様はここにおられたか……」



 そう!俺は今、結衣の服の試着を見ているのだっ!!!






 失礼、取り乱しました。元に戻ります。






「それで、決まったのか?公演に着ていく服」


「……う〜ん、まだ。……そう言う……達也は?」


「俺もまだ」



 俺も俺で公演に着ていく服を選んでいた。俺は普通にある服を着て行こうかと考えたが、せっかく来たんなら買っていけば?と言われたので、買う事にしのだ。


 ま、せっかく結衣と一緒に公演を見に行くのだから、それなりのオシャレをしないといけない。



「殆ど、外に着ていく服って、学生服かスーツだけだったからな………う〜ん」



 目の前にある服を取っては自分の身体と合わせを繰り返しているが、自分にはピンッとくるものがなかった。


 サイズが合うのはあるが、自分の直感を聞いてみても《違う》と感じるので、中々決まらなかった。



「う〜ん、決まらん」


「お困りですか?お客様」


「えぇ、どの服が………って、何してんの」


「いやぁ〜、達也が珍しく服で悩んでるからいっちょ助けてやっか!と思ってね」


「その気遣いは有り難いが……なんで店員の格好してんの」


「え?言ってなかったか?ここ、竹本の親が経営してる店の一つなんだぜ。そして、俺はここでバイトしてるってわけ」


「ここって、あいつの店だったのか。と言う事は……あ、やっぱり」



 結衣がいたところを見てみると、結衣も結衣で竹本に見つかって、あっちこっちへと行ったり、試着されたりしていた。


 その間に、結衣は俺の方を向いて、助けて欲しい!ような目線をして方が……



「結衣……乙」


「俺達は、何も出来ないぜ」




 男共は、無力であった。





「ま、そんな事より、どうして服を選んでたんだ?」


「ん?あぁ、結衣と出かける日があってな。結衣に恥をかかせないようにオシャレをしようかと」


「なるへそ。それなら!服屋でバイトをして約5年の俺に任せろ!竹本の両親に認められてもらう為、己の腕と目を磨きに磨いた成果をとかとご覧あれ!」


「う〜ん、お前がそこまで言うなら、任せようかな。お金に関しては、高くても良いから合うやつ頼むわ」


「わっかりやした!では、まず、此方から着てみようか」


「分かった」



 公演に着ている服は、荒木に頼む事にした。結衣は竹本が、俺は荒木が。なんだかんだで、このペアが出来るんだなと思いながら、荒木に渡された服やズボンを試着し始めた。







ーーー






 アリスが蒼山ホテルから逃げ、ブルーキャットの一員に襲われた日。都心の外れにある廃病院。そこには、5人の人影があった。



「ソマリ、何か言い分はありますか?」


「えぇ〜とぉ、無いでぇ〜す」


「あんたねぇ……リーダーの命令違反したのよ。反省ってやつはないわけ?」


「ない」


「ハッキリ言うニャンねぇ……」



 5人の内、1人は4人の真ん中におり、囲まれているようになっていた。その真ん中にいるソマリは『反省してませぇ〜ん、後悔してませぇ〜ん』と言う雰囲気を出していた。


 そんなソマリに対してリーダーである山蘭は大きくため息をついた。



「はぁ……ソマリ。どうして、あのようは行動を起こしたのですか?」


「そんなの決まってるよ〜!あ、ば、れ、た、い、だけ!」


「でしょうね。貴女の性格を考えるとそうだと思いましたよ。えぇ、えぇ、貴女が暴れる性格で我慢出来ないのは分かっていたのに、それを止めれなかった私にも非はありますよ。えぇ、えぇ、まったーー」


「動揺。やばいリーダーが壊れた」


「ほら、ソマリ!寝ないの!起きなさい!起きろ!」


「くかぁ〜……ムニャムニャ……」


「アハハ……相変わらずですニャ〜ン」







 そして数十分後。




「すみません。取り乱しました」



 ご乱心した山蘭は、落ち着きを戻し、スーツの襟をビシッと直し、気を取り戻した。



「今回の暗殺依頼をもう一度、確認します。依頼主の注文で、『大勢の場や公の場での暗殺』」


「それって、暗殺っていうのかしらねぇ?」


「推測。TVやネットに大々的に知らしめるため」


「うぅ〜ん?私には分かんなーい!」


「空港での暗殺は失敗しましたしニャ〜ン。流石は、アスタロトグループ。手回しが早すぎて油断大敵ですニャン」


「次、狙うとしたら、護衛が手薄になった時が好機。しかし、相手はアスタロトグループを隠から支える者達が離れる事なく側にいる」


「そう簡単には、殺らせてくれないってわけねぇ……」


「だから、私達全員を呼んだのぉ〜?」


「正解。狙う者が協力すれば、暗殺出来る率は上がる」


「しかし、いつ、何処で、どうやって、暗殺対象を暗殺するか……が問題ですニャンねぇ〜」



 山蘭以外は、全員悩んでいた。



 相手は、大手企業のアスタロトグループ。表では、様々な部門で名を世間に轟かせ、世界にも支部を展開させる程の実力だが、裏社会でも同じだ。


 こんな逸話が、裏社会にあった。



 中国に『双竜』と言う犯罪組織が存在していた。双竜の名に等しいほどの指導者が2人いた。この組織は、テロ組織や宗教過激派組織に銃の密売、輸送、資金提供を行い、大きな組織へとなっていた。


 


 

 しかし、その組織は今は無い。




 何故なら、アスタロトグループが隠から滅亡へと導いたからだ。


 

 『双竜』の組織の下っ端がアスタロトグループ中国支部を襲ったのが原因だ。政府は『双竜』との繋がりも襲撃を無かった事にし、襲撃者は無罪放免となったからだ。


 その事を知ったアスタロトグループ社社長の達也の父は、裏から手を打つ事にした。


 国内にいる黒龍組を含め、諜報部の『暗ノ道』『日ノ河』を率いり、『双竜』に喧嘩を振ったのだ。まず先に『双竜』の下っ端達がいる場所を潰し、相手の戦力を激減させた後、『双竜』の本部へと侵入し、幹部含め、13人は公開処刑となった。



 こうして、裏社会に『アスタロトグループ』と『黒龍組』の名を轟かせる話の一つとなったのだ。



 だから、慎重に暗殺しなければならない。一員の勝手な襲撃で、アリスの護衛は厳しくなった。



「その日は、護衛が手薄になり、かつ、大々的に暗殺出来る特別な日……やはり」



 ブルーキャットのリーダーである山蘭は、一つの決断に至った。




「公演日、公演館にて、アリス暗殺を決行します」







ーーー

誤字、脱字などが有ればコメントしてください。


作者☆

デートシーンを書くと言いながら、少なくなってすみません!次は、デートオンリーにしますので、あしからず


それと、この作品の題名を変えよっかなぁ〜と思ってるんですけど、何かいい名前があったら是非、コメントしてください。

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