ミーテの火

 火と光が舞う。ぶつかり弾け周囲を焦がしいていく。


 今の私に何が出来る。火力は上げれるか……無理ではないかも知れないけど今精一杯の力を出している。

(ご主人さま正直に言います。僕の今の限界です。経験不足は否めません)


 イグニスに聞いてみたが私と同じ意見みたいだ。奇跡でも起こせば爆発的に力が上がって相手を圧倒する……なんて展開もあるかもなんて期待するだけ時間の無駄だろう。


 ならば今やれることをやるしかない。

 自分の手を見る、右腕に火傷とイグニスが書いた文字が巻き付くように刻まれている。

 右足の太ももや左肩の傷はニサちゃん戦のやつだ。

 お腹はうしおとこの角。他にも小さな傷は犬ゾンビの分もあるけどバスの事故の方が多いかな。


 どれも痛かった。これ以上傷つくのは正直嫌だ、怖い。

 

 アニママスがハズレとか言ってたけど実力的にはケルンの方が圧倒的に上だ。傷付きたくないとか今の戦いで言ってられない。

 なんとしても勝つ。


 戦いながらケルンを見ると自分の回復力に自信があるのか、それとも私の攻撃など効かないということか突っ込んできて攻撃を仕掛けてくる。


 炎を鎌にして振る。あっさり避けられた鎌を鞭のようにしならせ、ケルンの元へ戻す。

 それをも軽々避けるケルンに無数の小さな火の玉を投げ、周囲を弾けさせ花火の様な爆発を起こす。

 その爆発で生まれた火の粉を集めて火の渦をつくると、渦の中心にケルンを閉じ込める。


 その渦に斧状にした炎を投げてぶつけて爆発させる。

 爆炎の中から飛んでくる閃光を炎を渦にして腕に巻き、絡めとる。


 力を足に集中する。体から火の粉が激しく舞い上がる。

 ケルンの攻撃を前方に展開した盾で受けながらまっすぐ突っ込む。


 間合いまで入ると拳で殴る。ケルンも負けじと殴ってくる。お互い殴り合う。


「きみはなんでそんな必死になるんだい?

 この世界なんて関係ないだろう。巻き込まれたとは言え逃げる選択もあっただろう?」


 殴るだけでなく、蹴りも混ぜお互いの赤と白の軌跡が激しくぶつかり合い弾け周囲の物を破壊していく。


「巻き込まれでも、ミーテさんに命を繋いでもらって、ミカや舞、ニサちゃんやメサイアちゃんを初めリエンさんやノームさん皆と関わったこの世界で逃げるなんて選択肢は無いよ!」


「それは立派なことで」


 ケルンがバカにしたように笑う。


 光の剣で切られ、お腹を蹴られ吹き飛ばされる。そこに閃光が追撃してきて右足を貫かれる。激しい痛みと共に血が散る。


 地面に転がる私にケルンが走って追撃をしようとするが、地面が爆発し火柱が上がる。


「っと地面に炎を埋め込むとかエグいことしてくれるね」


 ケルンが私の方へ向かってまっすぐ光を放ち私が地面に埋めた炎取り除きながら再び突っ込んでくる。


 左足だけで体を支え立ち上がり、盾で飛んでくる光の線を受け流し回転しながら剣を振るう。その剣先がケルンを向いた瞬間に剣を伸ばす。


 剣がケルンを右肩を貫く。貫き肩から飛び出た剣先を二股に分け返しをつくると延びた剣を私の方に引き寄せる。

 引っ張られるケルンと倒れそうになる自分の勢いに任せて右手に炎を纏わせケルンの左胸を貫く。


 右手に心臓の鼓動が大きく、近く感じられる。

 力を込めて体内から焼き尽くす為に全力で力を入れる。

 髪の毛を始め火の粉が激しく舞い上がると、私の手から放たれた炎でケルンが包まれるれ大きな火柱が立ち上がる。


「イグニス全力で、まだまだ全力で……すべてを燃やしつくす力を……」

(ご主人さま……もう )



「いやーー、けっこうビックリしたよ」


 炎の中から声が聞こえ私の右腕を炎の塊が掴む。


「な!? これでもだめなの……」


 私が出した声なのに、自身でも落胆の声を出したのだと分かってしまう。

 炎の塊が手を型どり光の剣を生み出すと右手を切り落とす為に振り下ろされる。


 スローモーションのように見える軌跡。ただ見えるだけで何も出来ない。

 刃が腕に食い込むのを見てるだけ。


(え……ん でぃ……ねー)


 声が頭の中に響く。右腕を中心に炎が渦を巻く、その火は私が今まで見たことの無いような火力で光の剣を焼きつくす。


(さい……ご、……みて)


 その声と共に私を纏う炎が業火となり地面をも焼き始める。


「な、なんだよその火力はミーテの火みたいじゃないか!」


 体に纏わりつく火を払い姿を現したケルンが間合いを取り驚愕の表情を見せる。

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