スクード・インパラート

 マズルカがメサイアに倒される。

 その後ニサが建物を倒壊させナグアルが倒されたと思われる映像が空に映し出される。


「ノースさん、1人になられましたね。

 あ、そう言えばまだアイネさんがいましたか。燃やされていないと良いですけど」


 ノースはカノンの挑発に苛立ちながらも冷静であろうとする。


「お前、性格悪いな。なんでお前は戦うんだ? それだけ頭が良いならアリエル様が言ってることも理解出来るだろ」

「天使の人口を調整する事と人間界への進出ですか? 正直その結論に達するのは分かります」

「ならこっち側だろ」


 大剣と盾がぶつかり弾けると、2人は間合いを取る。


「人口増加事態は制御するしかないのかもしれませんが、食料に関しては労働力が無い訳ではないですよね?

 6割ほどの働いてない者をまずは動かすべきでしょう。一方的に惨殺して淘汰する前に国民にお願いするべきだと思います。


 人間界への進出、一方的な支配は問題外ですね。あの文化は人間が営んでるからこそ意味があるのですよ。

 そして取引するには私たちは余りにも未熟です。こんなことしてる時点で恥じるべきです」


「はん! 綺麗事だな!」

「まあそうなんですけどね。数字だけ見て、相手の気持ちを忘れては上手くいきませんよ。たとえ失敗しても後悔だけで次が生まれてこないと思いますけどね」


「シュティーア」背側が無数の角が生えたようにゴツゴツしている大剣を召喚すると背側を振り、カノンの盾を引っ掛け強引に剥ぎ取る。


「ティガー」大剣より一回り小さいバスタードソードより太く大きい剣を召喚し小回りの良さを生かし斬りつける。


「エレオス」カノンも剣と盾が一体になった武器で対抗する。


 お互いの目と羽の光が残像を残しながら剣と盾がぶつかり合うたび火花を弾けさせる。


「ノースさんの戦いかた、軍のものではないですよね? 個人的に魔物討伐をしている方の戦い方でしょうか」


 ノースは大剣を振りつつ嫌な顔をしながらも答える。


「たく、なんでもお見通しか本当に嫌な奴だ」


「レーヴェ」最初から使用していた大剣を召喚しカノンの盾剣を弾き飛ばす。


「シュラーク」小振りな盾を召喚し打撃を打ち込みながらノースの攻撃を防ぐ。


「反対に聞きます、ノースさんはなんで戦うんですか?」

「アリエル様の考えに賛同したってのもあるけど、この世界の調整に自分が関わる事が出来るってのが魅力だな。

 ついでに思いっきり力を出せるってのが理由さ」

「以外にしっかりした理由があるのですね」

「真面目に答えたのに、ホントに腹の立つ奴だ!」


 斬りつけられる大剣を飛びながら下がって避け、地面に着地したカノンはノースに問いかける。


「ノースさんは、思いっきり力を出すって言ってましたが今の力に満足してるんですか?」


 盾を新たに召喚し構える。


「ああ満足してるね。トリス様よりもらった力、魔女化は素晴らしいじゃねえか。リングも遠くが見えるとか下らん能力も体に埋め込む事で能力向上に役立ってるし文句ないね!」


 大剣と盾が再びぶつかるなか、カノンはノースを真っ直ぐ見る。


「私は今の力に満足してません。こう見えて欲張りなんですよ」


 盾を地面に刺し大剣を反らす、盾を手放し盾で反れた大剣を持つノースの右手を掴む。そのまま宙返りをしノースの右肘に膝を立て、力に逆らわず落とす。


 ゴキュ!


 鈍い音がする。


「ぐああぁぁぁ!!」


 ノースの右手が折れる。カノンはそのままノースの肩に移動し逆立ちの状態になり回転し両足で顔面を蹴って後ろに下がる。


 顔を蹴られ吹き飛ばされたノースは折れた右手を押さえながらカノンを睨む。


「私は思うんです。まだまだ何か出来るんじゃないかって。

 魔女様に力を分けてもらっても、色々な武器を使ってみても、知識をどんなに広げ学んでも、まだまだ何かあるはず。

 私はまだまだ何かできるはずだって」


 ノースはなんとか立ち上がり、額汗を浮かべカノンから目を反らさず間合いを探る。


「ノースさんは武器を召喚するときなぜ名前を言うのか知っていますか?」


 カノンの意図が読めないがノースは答える。


「武器の選別を確実にする為だ」


 カノンが微笑みながら近づく。思わず後ろに下がる。


 ゴンッ


 ノースの背中に何かがあたる。振り替えると大きな盾がそびえ立つ。


「い、いつの間に……」


「ガルディエーヌです。何も言わなくても自分から離れた場所に任意で召喚出来ます。こうなるには練習あるのみです。

 武器のイメージから召喚場所の選定、ただただ練習あるのみです。今に満足してたら何も出来なくなりますよ。

 せっかく永遠に生きられるんですから何もしないなんて勿体ないです」


 ノースの喉元に盾剣を突き立てる。


「そう思いませんか?」


 カノンの声が聞こえた直後、ノースは首元がヒンヤリしたと思ったら全身に痛みが一瞬走りそして何も感じなくなる。


 盾から出た無数の針が収納されるように消えていく。穴だらけになったノースが静かに倒れる。


「今のは、スクード・インパラートと言います。さて、私も急ぎましょう」


 カノンが緑の光を描きながら飛び立つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る