第31話 敬遠されるって傷つきますよね。
人と仲良くなる方法!
一つ、何よりまず仲良くなりたいとアピールをする!
「えっと、その……アハハハハ」
二つ、自分を知ってもらえる様に、ちゃんと話をする!
「あ、あの! あ……やっぱり、大丈夫です。何もないです」
三つ、常に礼節を重んじる!
「お、お時間とらせて申し訳なかったです……失礼します」
何をやっているのでしょか、この子は?
いつも同じ事を言ってしまいますが、私の手が人のモノなら頭を抱えていますよ。
『学友たちと仲良くしたい』
入学から数日間、休憩時間になる度に私が寝転がる中庭にやってきていたエルフリーデが呟いた一言。
さすがに今回ばかりは自分でどうにかさせようと思いましたが私も本当に甘い事で、彼女の泣き顔を見てしまって助けてあげようと思ってしまったわけです。
けしかけて話しかけては見たものの、仲良くなりたいと伝えられない。
もっとけしかけて会話を続けさせようとしても、すぐに黙りこくってしまう。
礼儀だけはちゃんとしている。
あ、ちなみに人と仲良くなる方法はエルフリーデ本人が言っていた事です。
出来てるの一つだけじゃないですか! 本当に、大丈夫なのか、この子?
「やっぱりうまくいかないじゃん! どうしたら良いのー?」
それは私のセリフですよ。
まさかここまで人見知りを発揮するとは思っていませんでした。
学友の方達と話そうとすると目に見えて分かるほどに焦り始め、たどたどしい口調になり、ついには話すこともできずにどこかに逃げてしまう。
グライナー商会の方達やお屋敷の家令の皆さんとは普通に話すことができるのですけどねぇ……何故こうなったのでしょうか?
結局、逃げる様に戻ってきた中庭のベンチで、私とエルフリーデはぼんやりと一息ついています。
もうこのダメダメさにため息が出てしまいますよ。
エルフリーデ本人が一番凹んでいるのでしょうから、私がとやかく言えることではなりませんね。
まぁ犬なので喋れませんが。
しかし冗談を抜きにしても、自分の駄目さ加減にため息をつくエルフリーデ。空に校舎の方を見つめています。
「あ……レオノーラ様」
そう、私たちのいるベンチからは校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下が見て取れるのですが、丁度そこを人だかりが通過していったのです。
人垣の間からチラリと見える、見慣れた銀髪。
あまりに特徴的なそれに目をひかれ、そして取り巻きの多さにも度肝を抜かれてしまいます。
入学から数日でまさかこんなにも人気者になってしまうなんて。
日を追う毎に取り巻きの数が増え、エルフリーデたちが在籍する学年の中でレオノーラ様はある人と人気を二分する状態になっているのです。
なんだかんだとレオノーラ様のカリスマは凄まじいものだと感心するとともに、もう一人の人気者が誰かということは言わずもがな。
「そっか、レオノーラ様とハルカさんはたくさんお友達できたんだね……わたしだけかぁ、お友達が出来ないのって」
あらら、少し拗ねていらっしゃる様子ですね。
寂しそうに呟く彼女の表情を見ていると、少し胸が締め付けられる気持ちになりますが、しかしここで甘えさせてはいつもと変わりがなくなってしまいます。
「むーかしっから苦手だったんだよねぇ。集団生活って! あぁもう!」
ダランと腕と足を投げ出し諦めを口にするエルフリーデに思わず短く鳴き声をあげて直す様に注意をします。
こら、淑女らしくないですよ!
ヒッと彼女も声を上げ、「分かってるよ」なんて返してきますが、そんなこと分かったものではありませんよ。
なんせこの数年間、ずっとこの子を見ている私ですから本当に気の抜けている時やわざと言っている時とかも、完全に見分けがつく様になっているのです。
そしてこの言葉も……
「いっそのこと、頼っちゃう?」
そう、諦めた様に投げ出したこの言葉だって、違うと知っています。
「だめだめ! それじゃライバルなんて言われないよ!」
出口はおかしいですが……うん、それで良いのです。
他力本願のままではいけませんし、強者の威を借るのはもっての外ですからね。
それだけでも今日一日、ご学友から避けられた事にも意味があろうというものではないですか。
しかしどうにも違和感があるのです。
エルフリーデもなんだかんだと貴族の一員ですし、おじいさまはこの国の将軍様なわけです。
少なからず関係を持ちたいと思う方がいてもおかしくないはずなのに、話しかける人全員が彼女を敬遠している様なきらいがあるのです。
そう思い至ってから『ときめき☆フィーリングハート』の内容を頭の中で必死に思い出していたのですが特に思い当たる節はありません。
まぁ思い出せるのは大体ライバルキャラがハルカさんに返り討ちになっているところばかりだったんですけどね。
それにしても乙女ゲームが原作のアニメで、思い出せるシーンが色っぽいところではなく、戦っているシーンというのも……なんだかなぁと思うわけなのですが、これが私たちを惹きつけた魅力の一つであると思いますので、良しとしましょう。
そんな事を考えておけば……
「久しいですね、カロリング嬢」
ね? こうやって話が展開し始めるわけなのです。
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