【KAC20205】文字数がきたら死ぬ男

須藤二村

第1話

 会社帰りに気を失い、目を覚ますと薄暗い部屋にある椅子に縛りつけられていた。


 暗がりに目をこらすと、どうやら男がいる。その男は俺の様子に気がついて、コンクリートの床に靴音を響かせ椅子の前まで歩いてきた。


「お前に与えられた余命は1200文字。ちなみに既に120文字使ったから残り1080文字しかない」


 は? 何を言ってるんだこの男は、頭がおかしいのか? いや、そんなことよりここはどこだ?


「言っておくが、全ての思考も文字にカウントされる。今のであと980文字になった」


 馬鹿な! そんなことある筈がない。しかし、もしそうだとしたら今考えてることもカウントされていると言うのか?


「クックックッ、そのとおり。あと900文字」


 糞っ、黙れ。お前のセリフもカウントされているじゃないか。しまった、まさか記号が出てくる度に一文字余計にカウントされてしまうのか? 無心だ、無心になれ……。




「……」




 頭の中を無心にする事で、二人の間に横たわる闇にしばし静寂の時が訪れた。男はじっと


「全然駄目じゃないか! いくら自分が黙っていてもト書きが流れてしまっては意味がない」


「あと720字だ。誰かに何か言い残さないで良いのか? なんならシェークスピアのマクベスのくだりを朗読してやろう」


「やめろっ!! いったい何の目的があってこんなことをしているんだ」

 額から滲み出る汗の玉が繋がって頬を流れ落ちる。


 ポタリ、ポタリ……。ポタポタ、ポタリ、ポタ、ポタリ。

「くっ、誰だか分からんが児童文学的な擬音表現をやめるんだ!」


 考えろ、思考だ。どうすれば助かるのか、なるべく文字数を使わずに考えるんだ。

 俺は、はたと閃いた。これに賭けるしかない!


「おい、今いったい何時なんだ?」

 男は腕時計を見る。

「ちょうど23時だ」

「23字……。そうか、あと1177文字だな!」

「馬鹿か貴様。あと410字しか無くなったぞ。もういいお前は終わりだ。これを見ろ」


 作戦は失敗だったか。台車に乗ったでかい機関銃が、奥から引き出され男の手によって弾帯が装填された。ベルトに連なった弾丸は何万発分あるのだろうか。


「そ……それで、俺を撃ち殺そうと言うのか」

 男は声をあげて笑いだした。

「くっはははは。撃ち殺すだと? 馬鹿を言うな。こうするのさ」

 そう言って男は壁に向かって機関銃の引き金を引いた。


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!


「ひっ!」

 腹にまで響く射撃音と辺りに立ち込める硝煙の匂い。

「どうだ? あとたった130文字で終わるぞ」


 これまでか! そう思った時、男はまた腕時計を見た。

「運のいい男だ。日付けが変わった。KAC2020はもう終わったのだ」



 まずいことになった。


 男はきっと、このままチャレンジカップに突入し百万発を撃ち尽くす気でいるのだ。また作者は運営から怒られてしまうではないか。

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……


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【KAC20205】文字数がきたら死ぬ男 須藤二村 @SuDoNim

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