第62話 匂いの保存

 私とクラーナは、お互いの匂いを嗅ぎ合った。

 たっぷりと堪能したので、私達はお風呂に入ることにした。

 明日は、ラノアも帰ってくる。その際、レクリアさんとレフィリーナちゃんも来るかもしれないので、流石に今日はお風呂に入らなければならない。

 夜にどうせ入るのだが、一度さっぱりしたかった。そのため、もう入ってしまうことにしたのである。


「ねえ、アノン……一つ相談があるのだけど」

「うん? 何かな?」


 脱衣所にて、クラーナは私にそのように切り出してきた。

 なんだか、少し遠慮がちな感じだ。何か、言いにくいことなのだろうか。


「その……さっきまでアノンが着ていた服のことなんだけど」

「うん」

「それを……私にもらえないかしら」

「なるほど……」


 クラーナの言葉に、私は色々なことを察した。

 彼女は、私の匂いが好きである。二日お風呂に入らなかった匂いは、私の匂いが濃くなってたまらないものであるらしい。

 だが、二日お風呂に入らないことなどそうあることではない。つまり、この匂いはとても貴重なのである。

 クラーナは、私の服を保存することで、その貴重な匂いも保存しようとしているのだ。


「……恥ずかしいけど、いいよ」

「本当?」

「うん、大丈夫……」


 恥ずかしかったが、私はクラーナの提案を受け入れることにした。

 クラーナのこのような提案は、できるだけ受け入れることにしている。彼女の喜ぶ顔を見るのは、私にとっても嬉しいことだからだ。


「ありがとう、アノン……んっ」

「んっ……」


 クラーナは、私にお礼とともにキスをしてきた。

 その嬉しそうな顔を見られたので、私も満足である。


「……クラーナ、それなら私もお願いしてもいいかな?」

「え?」

「その……クラーナの服を……」


 そこで、私はクラーナに同じお願いをしてみることにした。

 私も、彼女の二日お風呂に入らなかった匂いが好きだ。それを、保存したいと強く思う。


「もちろん、いいわよ。その気持ちは、よくわかるもの」

「ありがとう、クラーナ……んっ」

「んっ……」


 クラーナは、私の提案を受け入れてくれた。

 これで、彼女の貴重な匂いを保存できる。私にとって、それはとても嬉しいことだ。


「それにしても、アノンも匂い好きになったわね。出会った頃は、ここまでではなかったはずよね?」

「うん……犬の獣人と過ごしているからなのかな?」

「そうかもしれないわね。影響を与える程、私は匂いについて、色々と言った自覚があるわ」


 本当に、私は匂いが好きになった。

 でも、これはきっといいことだろう。お互いに匂いが好きなら、お互いの行動を理解することができる。それは、とても楽しいことだ。

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