第3話 和やかな時間
私とクラーナは、獣人の女の子ラノアちゃんを助けていた。
ラノアちゃんは隠れ里を探しているらしく、そこが現れるまで、私達の家にいてもらうことにした。
という訳で、三人暮らしのためにクラーナと買い出しに行っていたのだ。
今は、家の前まで帰って来ている。
「おかえり!」
「あっ……」
「あら……」
すると、家の戸が開かれ、ラノアちゃんが出迎えてくれた。
私達が戸の前に来ただけで、開かれたのだ。恐らく、匂いでわかったのだろう。
「ただいま、ラノアちゃん」
「ただいま、ラノア」
「うん!」
私達がそう言うと、ラノアちゃんは笑顔を見せてくれる。
なんだか、すごく癒される。よく考えたら、誰かに出迎えてもらうのは、そんなにない経験だった。クラーナとはいつも一緒にいるので、こういう風になることは少ないため、新鮮な感じだ。
「ちゃんとお留守番できていたんだね?」
「うん!」
どうやら、何事もなかったらしい。
それなら、安心だ。
「ふふ、偉いわね」
「えへへ……」
クラーナが褒めると、ラノアちゃんは得意気に笑う。
可愛らしい笑顔だ。本当にとても癒される。
こうして、私達は家の中に入っていくのだった。
◇◇◇
私とクラーナは、ラノアちゃんと一緒に過ごしていた。
「クゥン……」
ラノアちゃんは、私の膝に座り、甘えてきていた。
どうやら、お母さんが亡くなってから一人で過ごしていたため、人肌が恋しいらしい。そのため、私に体を擦りつけてきているのだ。
「……」
「あはは……」
そのことに、クラーナは少し痛い視線を向けてくる。
恐らく、嫉妬してくれているのだろう。それは嬉しいと思うが、子供に嫉妬するのは、できればやめて欲しい。
なぜなら、その視線によって、ラノアちゃんを可愛がるのを躊躇ってしまうからだ。子供の純粋な気持ちに応えられないというのは、少し辛い。
「クゥン……」
「あら……」
「あっ……」
そんな時、ラノアちゃんが、クラーナの膝に移っていった。
ラノアちゃんは、クラーナにも甘えるように体を擦りつける。そのことに、クラーナは表情を変えていく。
それは、反省の表情だ。目で、私に謝ってきている。子供に嫉妬したことを、反省しているようだ。
別に、私は怒ってはいないので、別に大丈夫だ。そう目で合図すると、クラーナは笑ってくれた。
「クゥン?」
ラノアちゃんは、よくわかっていないようで首を傾げていた。
その様子も、とても可愛らしく思える。
なんだか、とても和やかな雰囲気だ。
そんな雰囲気が、とても心地いい。
こうして、私とクラーナは、ラノアちゃんとしばらく過ごすのだった。
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