フロート2‐3

 フロートは止まる気配がない。


 このままだと何回転するか分からず、私は腕の端末からフロートの動きを止める。


「メアリ、大丈夫かな?」


 その言葉にメアリは疲れた笑み浮かべながら私の腕を掴む。


「これ、危ない……」

「ん――、次は大丈夫でしょ」

「つぎ?次もあると思ってる!」

「いや、もうしないよねって話」


 とりあえず端末で確認する限り、フロートは壊れていない。

 端末経由で見ると、あらゆる変化を独自に判断する仕組みらしい。そのため、とりあえず回転した様子。


「じゃあ、次も叩くと回るの?」

「そうなるね」


 私の即答にメアリは口だけ笑っている。

 うん、やらかしたね。


「とりあえず、フロートに両手を置いている時だけ動くようにしようか」


 私は端末から操作方法を設定して、もう一度メアリに挑戦してもらう。

 彼女はおそるおそる、フロートに手の平をのせる。その状態から体重を前に預けるよう促すと、メアリは動きだしたフロートに焦る。


「ねぇ!どうやったら止まるの?」


 慌てるメアリを刺激しげきしないよう、私は冷静に両手をフロートから離す。

 すると、フロートは水平に停止する。


「これなら、大丈夫でしょ?」


 その言葉に彼女は不安気な表情をする。

 だが、使いこなせれば空中を泳ぐことも可能になる。


 そのためにも、まずは慣れてもらわなくては。

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