人魚姫1‐4
さぁ、大仕事だ。
人魚姫を運ばなくてはならない。
彼女の体勢を起こしつつ、枕代わりに使った上着を抜きっとって羽織る。
人魚姫は眠っている……はず。
昨日とは違い、人魚姫を抱える手は彼女の熱を感じる。それは嬉しいような恥ずかしいような妙な気持ち。より相手を人間的に捉え始めているのだろう。
何か考えてコートを羽織った訳ではないのだが、無意識にでも彼女の肌が自分に触れるのを避けたのかもしれない。私だって男でそれ以前に動物の雄だから。
その点、人魚姫がブランケットを巻き込むように抱えているのは本当にありがたい。見えない状態だから良いが、彼女の淡い肌や胸元が近くにあるというのはやはり気になる。せめて地上に運び終えるまではそのような意識は片隅に投げておきたいのだ。
両手が塞がるなか、膝上まで海水の中を前日の水路目指して進む。
昨日より若干水位が低いかもしれない。今が引き潮ならラッキーだ。
海水に弱い彼女をできるだけ海水に触れさせずに水路まで運ぶことができる。
そして、地下水路の前。
彼女を枯れた水路へ上げようとした。
その時。
目が合った。
抱えられている状況、それに困惑する人魚姫と。
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