3-3

 人間ではない――か。


 見た目が違えば人間ではない。

 それで、いいのか?


「なぁ、レイヴン」

『何でしょう?』

「人間同士ですらトラブルだらけ。相手が何だろうと気にしないさ」


 人魚のことは何も分からない。

 意思疎通ができるかもしれないし、できないかもしれない。

 だが、何事もこちら次第だろう。


「まぁ、何か言語的な要素があれば、優秀ゆうしゅうな通訳もいるわけで」

『それは人間同士が前提です。ジェイ』

「じゃあ、とレイヴン。お互いに話ができる。人魚とも上手くできるさ」

『それは私が支援用人工知能であるからでして……』


 心配しても仕方がない。

 身振り手振りは私が、言語的な部分はレイヴンが担当。

 仮に人間相手でも言語や文化が違えば、初対面のリスクは変わらないだろう。

 レイヴンを旅のサポート役にしたのはこのため。


「何か他に懸念けねんは?」

『そもそも、捕食対象に擬態ぎたいする生物だとしたら――』

「ジョークか?」

『真剣です!』


 レイヴンの目が緑色に変わる。はいたって真面目らしい。

 このAI、そんな心配をしていたのか。


「だったら、目を合わせた時点で喰われていたさ」

『それでは困ります』

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