第337話 『大聖堂』四人衆
「『魔力隠蔽』」
俺達の周囲を覆うように、限りなく薄い魔力の膜を展開するマリーさん。これによって膜の内部と外部が隔てられ、内部での魔力反応が外に
だが敵に感知されないほどに薄い魔力膜を展開しなければならないという技の性質上、物凄い集中力が必要とされるのでそれほど長い間これを維持することはできない。
「いくよ……『徹甲衝撃弾』!」
――――ドパァァンッッ!!
俺が持つ最強の必殺技『
「一丁上がり!」
突然仲間が吹き飛んだことで、残りの三人は一瞬で戦闘態勢に移行する。流石は連邦最強の魔法士集団『
すかさず弓術士がこちらの魔力反応を探知して、強化された矢を放って
「『
だがそのくらいのことは事前に予測済みだ。俺は即座に最強の盾である『白銀装甲』を展開し、難なくこれをやり過ごす。
――――カァンッ と音を立てて、弾かれた矢が粉々に砕け散った。
……矢の先端部分が鉄製だ。あれを弓で飛ばすのか。いったい何キロの弓力があるんだ。
「『
そして俺が防御を担当すると同時に、マリーさんが反撃する。握り拳ほどの石が無数に現れ、そのすべてが敵の弓術士に襲い掛かった。
――――ゴォオオオオン……ッ
『石礫』自体は初級の土属性魔法に分類される。だがそれの完全上位互換である『石礫の豪雨』は上級魔法だ。加えて、一つ一つの『石礫』の射出速度が砲弾並みの超高速である。脅威度でいえば、俺の『衝撃連弾』とほとんど変わらないだろう。
弓を放った直後の敵はこれに対応できず、まばたきほどの間に石の雨に呑み込まれて消えていった。
二人目、撃破だ。
「「『飛翼』!」」
不意を突かれたとはいえ、あっという間にSランク級の魔法士二人が倒されたことで残り二人が動揺しているのがわかる。
その隙を狙って俺達は同時に『飛翼』を展開、超スピードで接敵する。
「――――『
「――――『
敵召喚術士が魔法陣の描かれた布を地面に広げて、サソリ型の魔獣を召喚する。禍々しい光とともに現れた十数メートルはある巨大なサソリは、両手の
それとほぼ同時にマリーさんが「パンッ」と柏手を打つように両掌を合わせ、彼女の契約神獣である
「ギィィイィイィィイイィイィッッ!」
「グルォ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!」
サソリは毒針を持っているし、鋏も厄介だ。……だが陸上において最強の名をほしいままにするからこその
ピーター君の凶悪な一本角が赤熱化し、熱気で周囲の景色を歪ませる。
「俺も負けてらんないな。――――『烈風』」
間合いまで残り数メートルというところで、俺は目の前にいた格闘タイプの敵魔法士に、範囲攻撃である『烈風』を放った。
流石に相手も待ち構えている状態なので一撃で倒せるとは思わないが、クリーンヒットさえすれば割と大きなダメージを与えられる筈だ。
――――ドゴォオオオンッ!
周囲の地面を削りながら、『烈風』の衝撃波が敵魔法士を呑み込む。
「!」
土煙に包まれて敵の姿は見えない。だが今の一撃で確信した。
こいつは……強い!
――――バッ、と土煙をかき分けて何事もなかったかのように敵が飛び出してきた。そのまま正拳突きを放ってきたので、『魔力刃』を展開して斬りつけるとすぐさま腕を引っ込めて奴は距離を取る。
ふむ、反応速度も速いのか。
それにしても……擦り傷はいくつか見られるが、致命的な怪我はどこにも負っていないようだ。うまく『烈風』の衝撃を逃したのか。どうやってだ?
「貴様、やってくれたな」
「何のことだ?」
「とぼけるな。我の同志を殺しただろう」
「さてな。俺は自分の家に忍び込んできたコソ泥を追っ払っただけだぞ」
「コソ泥はどっちだ!」
激昂する敵魔法士。感情のコントロールがなっちゃいないな。これで奴の冷静さは失われたも同然だ。
「『白銀の彗星』……貴様がそうなのだな」
「さてな」
当たり前のように正体がバレているが、別に問題はない。ようは『
後に残った連邦軍兵士なんて、大した労力もなく一網打尽にできる。全滅させれば、
「我は『鉄拳』のイゴール。『白銀』よ、勝負だ」
「『鉄拳』か。その名に恥じぬ戦いを期待しようじゃないか」
名乗りを上げて、再び戦闘態勢へと移行するイゴール。だらりと脱力したような独特の構えに妙な既視感を覚える。
「……まるでロシアのシステマみたいだな」
前世における軍事大国の軍用格闘術を彷彿とさせるイゴールに、俺の警戒度は跳ね上がる。
こういう手合いとはあまり戦ったことがないので、慎重にいかねばならない。
『纏衣』と『意識加速』を強化しつつ、俺もまた格闘戦の構えを取る。
さあ、第二ラウンド開始だ。
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