第56話


 「・・・・なに?」


 「泊まるとこについたら、言いたいんだけどいい?」


 何度も許可を求めてくるところに少しイライラしながら、礼二はうなずいた。


 それから6時間ほど歩いていたが、魔物にも会わず、盗賊にも会わず、嵐の前の静けさのような旅路になった。


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 「ここが、今日から拠点にする村です」


 ミリナが言って指さしたのは、それなりに大きな村だった。馬車などが多く停まっており、多種多様な格好の人が活動していた。


 「ここ、ですか・・・・・」


 「なにかご不満があるんですか?」


 雄二が口に手を当てながら、続けた。あまりこの村が気に入っているようには見えない。


 「・・・・・あまりに人種が多いと、魔物かどうか判断できなくないですか?」


 魔物の中には、人型になるものもいる。雄二はどれを懸念しているのだろう。


 「大丈夫です。村の内部にはいたるところに魔物の感知装置があるので、すぐにわかります」


 「そうですか・・・・・・・・・」


 ミリナに言われてもまだ心配そうな雄二はしぶしぶ歩き始めた。後ろの天使たちと礼二もそれについていく。


 (魔物の感知装置・・・・・・・死んでるスライムはノーカウントだよね?)


 大鎌を担ぎながら、内心ビクビクしていた。なにしろここで魔物だ、なんて言われてしまえば天使たちは聖剣なしで戦うことになる。


 (それにしても、魔王が軍を集めているにしては平和だな、ここは)


 「この村は、わが国でもっとも冒険者が多いと言われています。だからこそ、魔王領近くでも栄えることができているのです」


 雄二に聞かれたのだろうか、ミリナが説明を始めていた。


 「彼らに協力を仰ぐことはできないんですか?」


 「残念ながら、魔王城に大勢で行くのは得策ではないでしょう。幻惑魔法などでかく乱されたら、すぐに仲間割れしてしまいます」


 「それもそうですね」


 (もう、雄二が勇者でいいんじゃないか?)


 なぜ素手専門の自分が鎌なんて持っているのだろうと、ボヤーっと考えながら歩いていると、宿についた。


 「ここは我々で貸し切っています。お好きな部屋をお選びください」


 ミリナの声掛けで、天使たちが無邪気に中に入っていった。天使だからこれぐらいの運動で疲れることはないだろうが、それでも精神的に休む場所を求めていたのだろう。


 「じゃあ、またあとでね。礼二くん」


 しっかり釘を刺しながら、美空も中に入っていった。


 (どうせろくな提案なんだろうな・・・・・)


 ※次回更新 6月5日 21:00

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