第40話
「悪い悪い。すっかり忘れてた。すぐに帰るつもりだったんだけど」
皿を持ったままで、礼二はメイドに話しかけた。彼女は顔を上げて、冷たい声で言った。
「礼二様の食事や行動はこちらで決めさせていただいております。その通りに動いてもらわなければ、困ります。今後、こういったことがないように、」
「あ゛あ?」
「ひっ!」
メイドの言葉に、礼二から殺気が放たれた。
「・・・・1つだけ聞かせろ」
礼二はメイドの襟首をつかんで、持ち上げた。
「お前は、俺の邪魔をする気か?」
「め、滅相もございません! 私は、誠心誠意、」
「行動を決めるなとは言わん。常識の範疇なら、従おう。だが、俺に相談もなしに俺のことを決めるな」
「は、はい・・・・」
「今は帰れ。食事が終わったら、部屋に戻る。なにか質問は?」
「お、お食事は・・・・」
「作ってもらったのに申し訳ないが、今日はここで済ませる」
「わ、わかりました・・・」
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「お騒がせしました」
「いやいや。すっとしたよ」
「え?」
団長に頭を下げると、にこやかな笑みが帰ってきた。
「ああいうメイドは大体、貴族の次女や三女でな。団長の俺にも失礼な態度をとることが多かったのだ。まして、天使様方は怒鳴られると弱いらしくてな。訓練中でもペコペコしておった」
「そうだったんですか」
「どうも、あの高圧的な態度は好きになれん」
「それは俺もですよ。まあ、あいつは変わると思いますけど」
「あれだけの剣幕で言われたら、変わるだろう」
「・・・・・少しは大人げなかったと、自覚はしています」
そういうと、団長が礼二の背中を叩いた。
「いてっ!」
「な~に気にしてんだ。お前はまだ子供だろ。もう少し、やんちゃしてもいいんだぞ?」
「・・・・ありがとうございます」
それからは、何事もなく食事を終え、礼二は部屋に戻った。
「お、おかえりなさいませ」
「・・・これからの予定は?」
「ご、午前中にヘルマン陛下との会談。その後、訓練となっております」
「そうか。会談はいつからだ?」
「い、今から2時間後です」
「わかった。ありがとう」
それだけ言い、礼二は荷物をあさり出した。中には、正装も入っているはずだ。
(ん~、これでいいか)
「出てってもらえる?」
「は、はい」
メイドが素直に出ていくと、礼二はさっさと着替えを済ませた。
(やはり、メイドはいらないな。王かミリナに頼んで、なくしてもらおう)
※次回更新 5月10日 21:00
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