★★★ Excellent!!!
君のいない春の中で、君のいる春を今もずっと待っている。 聖願心理
『植えた種から芽が生えて、その芽が小さな若木になった。
花が咲くのはまだまだ先で、早く大きくなるようにと、来る日も来る日も声をかける。
そのうち若木は大人になって、私の身長を追い越した。
今では優しい木陰をくれるのに、この背中をそっと受け止めてくれるのに、まだまだ蕾は見当たらない。
数え切れないほどの春が、巡った』
この詩のような、幻想的な一節から始まる物語。
何が起こるんだろうと期待させながらも、同時に作品の雰囲気を一気に作り上げる。
想像と期待感が混じり合う中で、本筋の物語に入って行く。
魔女候補として生まれたココは、村の人々から腫れ物扱いをされている。
居心地の悪い村で、唯一ココが心を許せるのは、フィンという少年だった。
ココとフィンの出会い方が、私は好きだ。
日常の何気ないドジを見て、フィンがココを『異質』という印象から、『普通の少女』というイメージに変わる。
ひとつのささいな出来事が、ココとフィンの関係を変える。
人間関係の変化なんてこんなもの。
大げさではない、変化の仕方が私は好きだ。
物語が進んで行くにつれ、雲行きが怪しくなってきて、遂に事件が起こってしまう。
そこで、ココとフィンはどうするのか。どうなってしまうのか。
それを是非、自分自身の目で確かめてほしい。
そして、読み終わった後、また最初に戻って、プロローグ的な一節を読んでほしい。
きっと…
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