第042話 懐きました
気絶してしまった二人のこともあり、宗徳と寿子はのんびりと休息を取ることにした。
「それであなた。どこへ行っていらしたのです?」
リヴァイアサンも疲れていたのか、湖に浮きながら、顎を陸に上げて寝息を立てていた。
その顔は宗徳の脇にあり、肘置き代わりにして撫でている。肌は鱗の様に見えるが柔らかく、産毛もあって触り心地が良い。
《クフン》
撫でられるリヴァイアサンも気持ちよさそうにしていた。
「地球だ。善じぃの家の裏に湖があっただろ。そこと、この底にあった鳥居が繋がってた」
「そんな事があるんですねぇ。師匠はご存知なのかしら?」
「どうだろうな。そこで善じぃの玄孫に会ったぞ。律紀と同じくらいの女の子でな。治季っつって面白い子だった」
変わった感性を持っているのは確かで、悪い子ではなかったなと思い出す。
「あと、イズ様に会った」
湖にあった法具を探していたらしいイザリの話もする。
「イズ様が? そういえば、昨日は何か難しい顔をしていましたよね。それに関係しているのでしょうか?」
「どうだろうな。でも、その法具の欠片を治季が見つけたら俺のところに連絡が来ることになってる。回収してくれってさ」
「そうですか。イズ様に言われたのなら、確実に遂行しなくてはなりませんね」
「おう」
《クスゥ……》
イザリは宗徳達よりも年上だが、見た目は幼い子ども。その見た目から、どうにも困っていたら助けなくてはと思ってしまう。
実際はとんでもなく優秀な魔女様だ。宗徳達に協力できることは少ない。けれど、だからこそ、手を貸せる時は必ず手を貸そうと考えているのだ。
「それにしても……この子はどうします?」
寿子は、気持ちよさそうに眠るリヴァイアサンを見て思案する。
「ここに一人ってのも寂しいだろうな。けど、獣ってのはそういうもんなんじゃないのか?」
普通の野生の動物達だって同じだ。これだけ大きな個体。縄張りと呼べる場所は広いだろう。そうそう、同じ個体も近くにはいない。それは、これだけ人懐っこいものにしてみたら酷く寂しいことだろうとは思う。
「そうですねぇ……」
そんな会話が聞こえたのだろうか。リヴァイアサンはパチリと目を開けると、ウルウルとする瞳で宗徳を見つめる。
《クゥ……》
「うっ、そんな目で見ても、その図体じゃ連れてってやれないしなぁ」
ここまで懐かれるとは思っていなかったと弱り顔でリヴァイアサンを見つめ返すことしかできない。
しかし、そこでリヴァイアサンは不意に浮き上がると、空中でとぐろを巻きながら、体から光を発する。
輪郭が全て、まるで蛍光灯のように光るものになると、それが急激に縮んでいった。
「おおっ!?」
どうなるのかと驚いて見ている宗徳と寿子の前で、次の瞬間、光を解いたリヴァイアサンはほんの二十センチほどの小さな龍になっていた。
「おわっ、ちっさっ」
「まぁまぁ。可愛らしいっ」
どうだと言わんばかりに嬉しそうな表情で降りてきたリヴァイアサンは、宗徳の前に浮いて鳴く。
《くきゅっ》
「ははっ、これなら一緒にいられるな」
《くぅ》
こんな白い龍の置物ならありそうだと思える大きさだ。そのリヴァイアサンは、一緒にいられると聞いた事で宗徳の首に巻き付く。
《くきゅきゅ》
「おっ、おいおい。ははっ、なんかいい感じの襟巻きか? あったかいな」
《くふっ》
体を巻きつけたまま、宗徳の頬にスリスリと頭を擦り付ける様は、やはりまだ幼いのかと思わせた。
寿子が羨ましそうに見つめる。
「かわいいわっ。あ、名前は? リヴァイアサンなんて可愛くない名前ではいけませんよ」
「いやいや、付けていいものなのか?」
《くふんっ》
「いいのかよ」
《くきゅっ》
生き物に名前を付けるからには、その命に責任を持つべきだと思っている宗徳は、これに少しだけ難色を示したのだが、本人がその気らしいので考えることにする。
「名前かぁ。う~む……そうだな。龍……なんかやっぱ威厳のある……皇とか……コウリュウ、徨流ってのはどうだ? 徨は彷徨うって意味だが……目標を決めずにどこまでも行けるって事だ。流れるようにって意味も込めた。龍もかけて、見た目が水の流れを思わせるからな。どうだ?」
意味のある名前。それは時笠家らしいものだった。
《くきゅきゅ~♪》
「ははっ、気に入ったか?」
《くきゅ》
「ふふっ、これからよろしくね、
《くふん》
こうして、リヴァイアサン改め『
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読んでくださりありがとうございます◎
可愛い子です。
次話どうぞ!
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