7 勇者と真祖2
「聖剣スキル──【星降る聖夜】!」
ファルニアが剣を地面に突き立てた。
両手を胸の前で合わせ、祈りをささげるようなポーズを取る。
同時に、空が鳴動した。
ごおおおおおおっ……!
無数の流星が降り注ぐ。
それらは光の矢となり、魔族軍を残らず貫いた。
一瞬にして全滅である。
「よくやった、ファルニア。これは褒美だ」
ユーノはファルニアを横抱きにすると、乱暴に唇を奪った。
「んんっ……!? ふぁ……ユーノ様ぁ……」
一瞬驚いたような顔を見せた姫勇者だが、すぐに蕩けた表情に変わる。
「これで右翼、左翼ともに抑えた。あとは僕が中央を突破し、敵の首魁であるフランジュラスを──」
言いながら、なおもユーノはファルニアとのキスを楽しむ。
「あらあら、戦場で女と戯れるなんて。かつての勇者ユーノとは随分と変わったようね」
ふいに、どこかから声が響いた。
まるで鈴の音のように澄んだ、美しい声音。
「──誰だ」
ユーノはファルニアとのキスを中断し、声がした方向をにらむ。
だが、そこには誰もいない。
「いえ、確かにいますわ」
ファルニアが前に出て聖剣を構えた。
先ほどまでの蕩けた表情から一転、凛とした表情だった。
彼女も勇者だけのことはある。
「目には見えませんが、強烈なプレッシャーを感じます……」
「ふふ、さすがは勇者の一人ファルニアさん。その感知能力は超一流ですわね。気配も魔力もすべて遮断したつもりでしたが……」
前方が蜃気楼のように揺らめいた。
空間からにじみ出るようにして、すらりとしたシルエットが現れる。
黒衣をまとった黒髪の美女だ。
「我が名はフランジュラス。悠久の時を生きる吸血鬼の真祖なり──」
血のように赤い唇に笑みを浮かべ、魔族が名乗った。
「かつての十三幹部か。しかも僕らが一度倒した相手じゃないか」
ユーノはせせら笑った。
そう、フランジュラスは、彼らがクロムを犠牲にしてアークヴァイスを手に入れた後、最初に倒した幹部である。
「完璧に殺したはずなのに、こうして見ると元通りだね」
「わたくしは不滅の存在。何度でもよみがえります」
優雅に微笑むフランジュラス。
「なら、もう一度──いや、何度でも殺すだけだ」
ユーノは聖剣を手に、前へ出た。
※
SIDE フランジュラス
ここまで強くなっていたとは──。
戦闘が始まって、わずか三分。
ユーノの前に、フランジュラスは防戦一方に追いこまれていた。
「さすがに魔王様を討った勇者だけのことはありますわね……!」
「僕の強さを──偉大さを、今さら悟ったか!」
ユーノが叫んだ。
「はははははははは、後悔しながら死ね!」
傲慢に笑いながら聖剣を振りかぶる。
今までにも彼とは何度か相対したが、こんな表情をする青年ではなかった。
強くなったことで増長しているのか。
あるいは、これこそが彼の本性なのか──。
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