閑話 悠莉の視点 はじめまして、〇〇です レ

ども! おてんと です。


時系列的に和馬が悠莉ちゃんに告白されたところからの話になります。



―――――――――――――



 「1年1組の百合川ゆりかわ 悠莉ゆうりと言いますッ!!」


 私は女が好きだ。


 それもたまらなく。


 性的に。


 「高橋さんッ!! ひッ、ひひひひ一目惚れしました! 私と付き合ってくださいッ!!」


 そんな私が一つ年上の異性の先輩に告白したのは、深くないような、それでも決して浅くない理由があるからだ。



*****



 「やっと今日から......女子高生!」


 入学式以降の初登校日である今日、私、百合川 悠莉は居ても立っても居られなかった。だから朝会が始まる予定の時間より30分も早く教室に到着してしまった。


 教室にはまだ誰も居ない。さすがに初登校日であっても私みたいに早く来る新入生はそういないのだろう。


 なぜ、そこまで私が今日を楽しみにしていたかと言うと、うちのクラスメイトにめちゃくちゃ可愛い女子がいるからだ。


 それも二人。


 「中村陽菜ちゃんと米倉桃花ちゃん......ふふ」


 その二人こそが私のである。何の“目当て”かって言うと、18禁に等しいので明示したくない。


 まぁ、平たく言えば性的な関係を持ちたい女子たちと言えますね。


 「まだ来ないかなぁ」


 私が早く教室に着いてしまったのも、もしかしたらその二人も早く来るかもしれないという邪な考えからだった。


 私のそんな原動力は濡れた下半身からだった。


 「二人ともすごかったなぁ」


 本当にすごい可愛かった。入学式当日、体育館でそれは行われたのだが、式が始まる前と終わった後で男子女子問わず周囲からの注目がすごかった。


 私も二人を始めて目にしたときは絶ちょ――絶句した。


 一人はポニーテールの美少女。見た目は女子中学生真っ只中なスタイルで、もうしばらくは女子高生に見えないなってくらい可愛らしいミニマムボディである。またその可愛らしさに反して、周りにどんなイケメン男子が寄ってきてもなびくことを感じさせない気の強さも感じられた。


 「○したい......」


 もう一人は巨乳美少女。黒髪セミロングで片側耳元の髪をピンで止めているのが特徴的で、華やかさのある女子であった。また身長は私より高い。まぁ、私がそもそも女子の平均的な身長と比べて低いんだけど。


 注目すべきはおっぱいである。私は胸の大きさだけなら同年代の女の子に負けない自信があったんだけど、桃花ちゃんはそんな私を脅かすような存在だった。たぶんだけど、辛うじて私の方が少し上なくらい。


 「犯したい......」


 駄目だ。教室に私以外まだ誰も居ないからってこんなことを女子が口にしては駄目だ。


 いくら二人が犯したいくらい可愛いからって私の内にいる欲望を曝け出しちゃ絶対に駄目だ。


 「神様、ありがとうございます」


 でもそんな美少女二人と一緒のクラスになれるなんて......私はなんて運の良いレズビアンなんだろう。神様が犯せって言っているようなものだ。


 あ、自分で“レズビアン”って言っちゃった。


 私は決してレズじゃない。ただ女性が好きなだけ。性的に。


 「よし! 絶対にこんな性癖を外に出さないよう、気をつけて二人と友達になろう!」


 まずは友達からだ。その次は......げへへ。


 期待で大きな胸を膨らませてしまう私であった。



*****



 「ねぇ、百合川もどう?」

 「......。」


 数日。あれから数日経ってしまったのだ。


 陽菜ちゃん桃花ちゃんに話しかけられずに数日がッ!!


 そんなとある日の放課後、虚しくも陽菜ちゃんと桃花ちゃんと話すことすらできなかった私は、私を囲む男子女子6名に悩まされている。


 私は人見知りだったのか、今までずっと二人にどう声をかけたらいいのか考えてばかりで結局いつになっても声をかけられなかった。


 帰りのホームルームが終わり、二人も早々に教室から居なくなったので、目的を失った私も帰ろうとしたが、昼休みの頃からずっといろんな人達から遊びに行こうと誘われている。


 「遊び行こ? カラオケが苦手ならどっかファミレスにでも行こうよ!」

 「あ、あはは」


 なんでこの人達は私を誘ってくるんだろう。大して親しくもないのに。いや、親しくなりたいからこそこうして誘ってくれるのかな?


 でも、男子がなぁ。


 私、女子は大好物だけど、男子は好きになれない。だって男の人って下半身が原動力みたいだし(ブーメラン)。


 そんな私に目の前の男子がニカッと笑いながら言う。


 「あ、なら、百合川の行きたいとこは? 皆でそこ行こうぜ!」


 おうち帰りたい。


 「人数多い方が楽しいって」


 じゃあ他の人誘えよ。まだ教室にうじゃうじゃ居んだろ。


 「あ、俺、バイト始めたから稼いでるし、奢れるよ?」


 貴様のはした金でか? こりゃたまげたな。


 おっといけないいけない。男子が相手だとつい本音がなぁ。口に出ないだけマシだよね。私は終始苦笑いしてやり過ごしている。


 今度は数名の女子が私に聞いてきた。


 「悠莉ちゃんはどこ行きたい?」


 ホテルかな? 今から行く? というか、イク?


 「人数多い方が楽しいと思うなぁ〜」


 うん。私もハーレムしたい。貪りたい。


 「私まだバイト始めてすらいないから金欠だよぉ」


 私が奢るからホテル行こ? お金払うから一緒に気持ち良くなろ? 潮吹こう?


 おっといけないいけない。女子が相手だとつい涎がなぁ。口から出ないだけマシだよね。いつまでも苦笑で対応していられないので、私は思い切って断ることをした。


 「あ、あの」

 「もしかして今日は他に用事とか?」

 「は、はい。すみません。今日はこの後予定があって」

 「そっかぁ。残念」


 私も男子が居て残念。男さえ居なければル○ンダイブで即遊びに行ったのに。


 「じゃあ、また今度ね」

 「はい」


 こうして私にしばしの安寧が約束され、また一人ぼっちになれた私であった。


 「ねぇ、聞いた? 陽菜ちゃん、噂ではかもしれないって話」

 「っ?!」


 しかしクラスメイトの誰かが会話した、信じがたい内容が私の耳に入ってきて安寧どころではなくなってしまった。


 「ああ〜、聞いた聞いた。まぁ、陽菜ちゃん可愛いもんね〜」

 「ね! でも早いよねー。まだ入学してから間もないっていうのに―――」


 私の席の後方に居る女子生徒2人がその話をしていたことに気づいた私は、2人をまるで襲うかのような野獣のごとく飛びついていった。


 「その話どういうことですかッ!!」

 「「ひッ?!」」


 突然迫ってきた私に対して2人は悲鳴を上げるが、私はそんなこと気にせずに大声を出した。


 私は2人のうち、片方の女子生徒の胸倉を掴んで問い質す。


 「陽――中村さんに彼氏ができたって本当?!」

 「ぐ、ぐびじまっでる! ぐび!」

 「わわわ! ちょ、百合川さん落ち着いて!」


 は?! 私は女子こうぶつになんてことを!!


 少し冷静さを取り戻した私は、掴んでいた胸倉を離して女子生徒を解放した。ゴホッゴホッと咳き込んでいるところ悪いけど、とりあえず一言謝るから本題に入ってほしい。


 すぐに。


 「それで?!」

 「え、ああ、陽菜ちゃんがね? 一つ年が上の彼氏作ったみたいなんだよねって話」

 「まぁ、いてもおかしくないルックスだし、そこまで驚くことかな?」


 「相手は?! そのクソ――男子生徒はなんと言うんですか?!」

 「く、“くそ”? 誰だっけ?」

 「名前はえっと......高橋なんたらさん」


 「高橋!!」

 「ああー、たしかそんな名字だったかも」

 「顔はまぁまぁ? 私の部活の先輩が言ってたけど、実は1年生の頃は眼鏡で冴えない感じだったんだって。今はがらりと変わったらしいよ」


 そ、そんな進級したのでイメチェンしました野郎に私の陽菜ちゃんが......。


 許すまじ。


 「あ、それ私も聞いた〜。それでもって部活もやっていないのにそこら辺の男子高校生よりすごい筋肉してるんだって」

 「“ガチムチ”ってやつですか......」

 「私も実際に見てないからわからないけどそうみたい。あとさ、勉強もできる方なのか、成績も学年トップらしいよ」


 な、なんてことだ......。女子の好物そのまんま混ぜた男子みたいだ。


 まるで女子たちから注目を集める“花蜜”である。


 ルックスはまぁまぁみたいだけど、筋肉質で、その上勉強までできるなんて......。あらゆる女子が男性に求める多様な属性を兼ね備えているつもりか。


 「噂ついでに言うと、実はヤリチン男らしいよ」

 「っ?!」

 「らしいね〜。イメチェンもマッチョも成績トップも女子に好かれてそのうち食べるためって聞いた〜」


 違った。“花蜜”じゃなかった。


 とんだ“人食い花”だった。


 「そ、そんなヤバそうな奴に中村さんが......」

 「さぁ? 好みだったんじゃない? それに実際、この前、お弁当を持ってその先輩のクラスで一緒に食べてたみたいだから噂は本当みたい」

 「あ、部活の先輩もそれ言ってた」


 なんて羨ましい。というか、もうそんな仲に?


 くっ。もし2人の話が本当なら彼氏持ちの女の子じゃ潮を吹かせることが難しくなる!


 で、でも私にはまだ米倉桃花ちゃんという、巨乳美少女が―――


 「でさ! 面白そうな話がまだあって! 実は桃花ちゃんもその先輩狙ってるかもって!」

 「ふぁ?!」


 私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。2人は様子がおかしい私を見て驚いている。


 え、ちょ、え? 陽菜ちゃんも桃花ちゃんもその人を?


 いやいや、それはさすがに......。


 「こ、根拠とかありますか? 米倉さんも中村さんみたいに一緒に同じお弁当食べたとか」


 私は必死に笑顔を作って2人に聞いてみた。


 「うーん。でも2人が教室で会話すると、男子たち限らず私たちも聞き入っちゃうから、盗み聞きした話からだと......たしか桃花ちゃんはその人を驚かせたいとか、今後もイジって楽しみたいとか」

 「それに陽菜ちゃんもなんか黙認しているみたい」


 な、なんてことだ......。


 私はがくりと膝から崩れ落ちてしまった。まさか学年美少女トップの2人がその男の手中だなんて。


 そして私は即切り替えて、あることを決めた。


 決めましたッ!!


 「2人から高橋を奪わなきゃ!」

 「「へ?」」


 あ、やべ。つい。


 「な、なんでもありません。あははは」

 「な、なんかドロドロした関係に......」

 「わ、私何も聞かなかったことにする〜」


 よし。そうと決まればさっそく高橋なんたらヤリチン男の情報を集めなきゃ。



*****

〜その後〜

*****



 「へっぶし!」

 「お? どうした、和馬。風邪か?」


 「さぁ? どこかの美少女が俺のことを噂しているのかも」

 「はは。童貞からくる風邪だな」


 「“童貞からくる風邪”ってなに。鼻とか喉からみたいに言わないで」

 「とりあえず薬飲んどけ。ほら」

 「なんで持ってんの......」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る