第282話 発情したメスはナニをすれば大人しくなるんですか

 「なんで俺のベッドに居んの?!」

 「なんでもうパンツ脱いでるのよ?!」

 「見せるためじゃねーよ!」

 「一瞬だったからちゃんと見れなかったじゃない!」

 「この状況で見んなッ!!」


 なんで陽菜が居んの?! 帰ったんじゃないの?!


 あのクソババアかッ!!


 「というか下になんか穿け!」

 「嫌よ!」

 「なぜッ?!」


 陽菜を見れば今まで布団に潜っていたからか、どこか火照っている感じでエロい。


 現在、パンツ一丁の俺は、上に大きめのパーカー、下半身にパンティーしか身に着けていない陽菜と揉めている。


 「ま、マジでビビったわぁ。シコろうと思ったら陽菜が居んだもん」

 「わ、私が抜いてあげるわよ?」

 「だ、だから、そういうのはな......」


 まさか夜這いか。コレが俗に言う、夜這いなのか。


 こいつ、こんな攻め方までするのかよ......。


 「もしかしてずっと中に居たのか?」

 「うん」


 「“うん”って......。千沙はもう帰ったし、お前が居なかったらバレんぞ?」

 「さっきママに『やっぱり桃花んち(隣の家)に泊まる』って言ったから平気よ。だからもう一回脱いで」


 「いや、そうはならんよ?」

 「え、なんで?」


 逆にどういう思考回路したらそんな結論に至るん?


 おま、ちょ、夜這いは駄目だって。


 未だパンツ一丁の俺は陽菜から少し離れて、勉強机の席に座った。


 「こっち来なさいよ」

 「お、お前なぁ。意味わかってんのか?」

 「と、当然よ?」


 そ、そこまでしてヤりたいってか。この変態JCは。


 いや、もうJKか。


 とりあえず俺は居ても立っても居られないので話を逸らすことにした。


 「というか、玄関にあった靴はどうしたんだよ。俺らが帰宅したときには陽菜の靴は無かったぞ」

 「ああ。それなら......よいしょっと」


 そう言って陽菜は布団の中から自分の靴を取り出した。


 「ここにあるわ」

 「死ねよ......」


 人の布団の中に外履き用の靴を入れてんじゃねーよ。軽く殺意湧いたわ。


 「おま、汚しやがって......」

 「この部屋にビニール袋は無かったけど、なぜか新聞紙があったから靴を包んだわ」

 「ああ、そう。自分ごと靴を隠す必要ある?」

 「驚かしたいじゃない」

 「お前も驚いてたじゃねーか」


 俺はベッドが汚れていないか確認するため、陽菜がちょこんと座っているベッドに再び向かった。


 「な、なに。やっぱり襲う気なのね」

 「違う。汚れが無いか見るんだ―――よッ?!」


 俺は再び驚く。そのせいで変な声が出てしまった。


 掛け布団をめくったそこには外履きの靴によって汚れていた痕跡は無く、あったのはよくわからないである。


 いや、“よくわからない”なんて野暮なことは言わない。


 「お、おい、布団が一部濡れているんだが」

 「和馬の匂いに包まれていたら......つい」

 「“つい”って。......マジ?」

 「てへ」

 「......。」


 こいつ、人のベッドで自慰行為してたな。


 なんて野郎だ。ここまで発情しているロリだとは......。完全に油断してたわ。


 でもなんでだろう。正直、悪い気がしない。むしろすっごいムラムラする。


 「......。」


 やばい。布団のシミが目に入ってからそこしか見れない。


 え、ちょ、アレだよね。プシッ的なアレだよね。


 マジ?


 「あ、あんたガン見しずぎよ」

 「......。」

 「無言はちょっと引くわ」


 俺も自分のこの様子にドン引きだわ。


 「......とりあえず帰れ」

 「なんでよッ!」

 「いや、流石にこれは正気の沙汰じゃないぞ」

 「あんたもでしょッ!」

 「いや、俺は至って正常だろ」


 フリルが特徴のおパンティー姿の陽菜は俺のベッドの上で立ち上がった。


 必然と俺の視界に陽菜の下着が入ったため、パズルのピースを当て嵌めるが如く、布団のシーツの染みとおパンティーの若干一部色が濃くなった部分が無関係でないことを確信してしまった。


 どうやらマジもんのらしい。


 「いい! ここに絶好のメスが居るのよ?!」

 「自分で“メス”って言うな」


 「それで襲わないってどういう神経してるの?!」

 「襲われようとして男子高校生の部屋に潜んだお前の神経を問い質したい」


 「あんたのそれはただ童貞を拗らせているだけ!」

 「違くはないけど、すごいズバッと言われた」


 夜でも怒鳴り声を出す近所迷惑な陽菜はベッドから降り、今度は俺の下までやってきた。


 俺に迫るその足取りは怒りからだろうか。下はおパンティーしか穿いていないのに恥じらいも無くこちらに向かってくる。大きめのパーカーを着ているから、立てば必然とそのおパンティーは隠れる。


 こちらもそんな陽菜を見ては何をされるか予想できずに身構えてしまう。


 「ひ、陽菜さん?」

 「......ねぇ。私ってそんなに魅力的じゃない?」


 急接近したと思えば今度は下を向いて小声でなんか言ってきた。


 「はい?」

 「和馬に勇気を出してあんなに魅せつけたのに......いつも軽くあしらうし」

 「は、はぁ」

 「あんたのせいよ......。“好き”って言ってるのに“嫌い”も言わないんだから―――ワンチャンあるって思っちゃうでしょ」


 お、落ち込んでらっしゃる。


 そうですね。今の和馬さんは“嫌い”と陽菜に言えません。


 実際に嫌いじゃないけど、心の籠もった“嫌い”を陽菜に伝えなければきっと陽菜はこの先もこうして好意を寄せてくるだろう。


 正直、今はそんなことよりズボン穿きたい。全裸でパンツしか身に着けてないよ、俺。そんな俺の前に下丸出し(薄皮一枚)の陽菜が居たら絵面マズいよ。


 「......俺はズルい人間だよ。のが怖くて何も言えない。返事ができない」

 「何よ、“今の関係"って」

 「......なんだろうね」

 「は?」


 中村家にバイトで通っている俺が姉妹のうち特定の誰かと付き合ったらきっとあの楽しい空間が壊れる。一年だぞ、一年。そろそろ俺が働いて一年が経とうとしている。だから気づけたことも少なからずある。


 朝から肉体労働で疲れても皆とならどんな仕事も楽しいし、昼は中村家でご馳走になっている。日が暮れるまで仕事して身体がバテてもやっぱり採れたての野菜でいただく夕飯は最高だし、その後の団欒も一人暮らしみたいな生活をしている俺にとっては掛け替えのない居場所だ。


 夜は美少女と一緒にゲームだぜ? 徹夜覚悟だけど。


 そんでもってその空間が壊れたらきっともう二度と元には戻らない。それだけは言える。千沙も陽菜もそりゃあ好きだし、付き合いたい気持ちもある。でも俺のことだから絶対見た目で判断してる。俺の“好き”ってのは容姿でしか判断してないんだ。


 「と、とにかく、俺はそんなハニトラに引っかからないから」

 「またそうやって逃げる」

 「高校行ったら俺より良い男子いっぱい居んだからさ」

 「なんであんたにそんなこと言われなきゃならないのよ」


 いや、ご尤もだけど。


 ......最初は童貞を捨てたかっただけだ。できれば相手も処女が良いなんて贅沢言って、相手探して。でも身体の相性が悪かったり、肉体関係で嫌われたら自信がなくなる。


 だからセフレを求めた。自信を付けたくて。


 でも会長曰く、それは逆にヤリチンと女子に認識され、却って彼女なんか作れないとのこと。


 だからセフレは諦めた。自信ってどう付ければいいんだよって話。


 「俺でもよくわからない」

 「......。」

 「いや、本当に何が正解かわからないんだ」


 彼女を作って青春イチャラブをしたいと思うのは誰もが思うことで、自然なことだ。が、そんな想いも一瞬で終わるような恋じゃ無理で、“ずっと好きでいられる”彼女を見つけないと成し遂げられない。


 歌手で言うと小◯和正的なアレ。


 試しに付き合って、もしすぐ別れたらそれも良い経験になる? いや、傷跡しか残んないだろ。特に陽菜と千沙となんてあの団欒の居心地に関わる。恋愛以上に大切だと思ってしまっている俺の気持ちが少なからずあるんだ。だから“恋愛”についてもっとわかんなくなる。


 何もかも“恋愛”を1ミリも知らない俺が悪いんだ。皆どうやってカップル作ってんだろ。あみだくじかな。


 「陽菜は元カレと別れたときにどんな気持ち―――」

 「......。」

 「あ、いや、ごめん。失言だった」


 陽菜に聞いてどうする。こいつにとってその話は忘れたい記憶だろ。それが勝手な思い込みだとしても、少なくとも俺の口から発していい言葉じゃない。


 陽菜に嫌な思いをさせてしまったと俺は思わずそっぽを向いてしまった。


 「とりあえず、今日はもう遅いから家に―――」

 「はぁ~。この匂い最高ぉ~」

 「っ?!」


 陽菜を家に帰らせようとしたらなぜかこいつは膝立ちになって俺の股間に顔をうずめた。


 「ちょ!」

 「石鹸の香り? もっと咽せ返るような匂いを想像してたんだけど」


 未だパンツ一丁の俺のケツをその細い両腕でがっちりホールドしながら、竿が閉まってある箇所に自身の鼻を押し付けている。


 そして生温かい息が愚息を煽る。


 吐息なんて大して感じることもないのに、パンツという薄衣を容易く貫通するから刺激がすごい。


 は、初めて異性の口がブツに......。


 ―――じゃなくてッ!!

 

 「お、おい。放せ!」

 「いいじゃない」

 「は?」

 「別に身体を重ねてからでもいいじゃない」


 とんでもないことをおっしゃっているんですが。


 陽菜は依然として俺から離れようとしない。愚息に鼻を押し当ててクンカクンカし続けている。


 もう少しパンツから口を離してもらえるとよく聞き取れるんですが。ちょっと声が籠っててよく聞き取れません。


 でもなぜか言わんとすることはわかってしまう。


 「あんたが童貞を拗らせていても、カップルに身体の相性を求めるのも、“好き”がどうのこうの説くのも」

 「ひ、陽菜さん?」


 「私に元カレがいたとしても、初めての相手が処女じゃなかったとしても............愛想尽かされるなんて心配しても」

 「......。」


 まだ言いたいことがあるのか、俺の愚息からその小さな顔を離したかと思えば次の瞬間―――


 「全部気持ち良くなってから考えればいいわよねぇ」

 「っ?!」


 口からピンク色にも等しい舌がパンツ越しにも関わらず、愚息を下からなぞるように舐めた。


 火照った表情と温かい唾液の感触が浸透というかたちで股間に刺激を与える。


 今までに味わったことの無い刺激の類だからもう息子は元気溌剌だ。


 「くっ!」

 「あはッ! それよ! もういいでしょ? 頭で考えるのは二の次。“快楽”が先よぉ」


 こ、ここまで煽られたら黙っていられない!


 俺はしがみつく陽菜を無理矢理引っぺがして抱き抱え、乱暴にもベッドに投げつけた。


 「きゃっ?!」 

 「そ、そんなに言うんだったら覚悟できてんだろうな!」

 「覚悟も何も準備万端よ! ずっと濡らしてたんだからもう最初っから入れなさい!」

 「っ?! う、うぉぉおおおおぉぉおお!」


 傍から見て、完全に体格差のある俺が陽菜を襲っているようだ。いや、間違っていないけど、ムードもくそもない状況なのは冷静じゃない今の俺でもわかる。


 こんなことしたら駄目だってわかっていても、もうこれ以上気持ちを抑えられずにはいられない。


 全裸に等しい俺はパンツからガッチガチになった愚息をこんばんはさせた。


 服を脱ごうとせずこのまま来てと言わんばかりに期待の眼差しを見せる陽菜に、俺はソレを見せつけたのだ。


 「か、かじゅま!」

 「くそ! 俺の初めてを受け取―――」

 「ちょちょちょ! ゴム! ゴム! ゴム! ゴム!」


 ゴムゴムうっせぇなッ!


 今から俺はギアセ〇ンドしてピストンするんだよッ!


 「............“ゴム”?」

 「お、お義母様?!」

 「和馬、あんたねぇ......せめてゴムしなさいよ」


 ......本日二回目じゃないですか。


 せめて事が終わるまで引っ込んでてくれよ。


 見ろよ。親が居ると知ったら息子も引っ込んじまったじゃねーか。シュンって。シュンってさ......。


 そうだよな。普段家に居ない両親が今日は居るんだもんな。


 部屋の出入り口付近を見れば、お母さんが覗き見してたと言わんばかりに、ゴム無し生セッ〇スをし始めようとした息子を止めにきた。父は居ない模様。こんな現場、親に知られたくなかった......。


 「童貞なんだからちゃんと着けなさいよ。刺激が強すぎて秒で一発だから。秒で」

 「......陽菜、帰ろう。家まで送るよ」

 「え、あ、そ、そうね」


 「え、帰っちゃうの?! 続きは?!」

 「......おかげで少し落ち着けたよ。ありがとう、クソババア」

 「お、お気の毒ね」


 先程まで俺の言うことを聞かなかった陽菜が素直に頷いて応じた。さすがの陽菜でも部屋に他所のうちの母親が入ってきたら継続する気持ちは失せてしまうだろう。


 こうして俺は陽菜の帰る支度ができ次第、とりあえず隣の家に居る桃花ちゃんじゃなくて中村家へ送ったのであった。もちろん気まずさから道中、会話すら無かった。


 くそうくそう。

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