第252話 息ヌき長女はあと少しだけJK

 「良い天気ですねー」

 「そ、そうだね!」


 天気は晴れ。一月中旬である今は相も変わらずクソ寒い。ああ、でも今年は例年より早めに暖かくなるんだってね。


 そしてその前に花粉だ。実はバイト野郎、花粉アレルギー持ちなのだ。症状に出るのは目の痒み。


 一年の季節に対する愚痴として、冬は“クソ寒い”で、春は“クソ痒い”、夏は“クソ暑い”に、秋は“クソエロい”である。


 「葵さん、今日の仕事はなんですか?」

 「きょ、今日はここ、ブロッコリー畑で作業をします」


 なぜ“クソエロい”のかって? 愚問だね。秋は日中暖かいが、その時間帯以外は少し寒い。そのため、服装調整をミスってしまった女性が、朝は着込んでいたけど、日中は暑いから脱ごうといって、隠していた肌が露出されるのだ。


 ムワッとな。


 そのムワッとさがフェロモンを飛ばし、オスを煽ってくるんだ。


 伊達に“せい欲の秋”とは呼ばない。


 「本当に良い天気だ......。お日様が眩しい」

 「......そうだね」


 で、前置きが長くなったが、今現在ここ、ブロッコリー畑に居るのはバイト野郎と巨乳長女の二人だけである。


 巨乳長女曰く、センター試験が終わったから少しだけ息抜きしたいのだとか。そんな息抜きを家業でするってあんた女神か。


 ということで畑に着いて早々、仕事せずに呑気なことを言っている俺たちだ。


 「和馬君、そろそろ......」

 「この時期でも日に当たっているとぽかぽかします」

 「......。」


 原因はにある。


 その状態というのは、


 「ちょ、ちょっと!いい加減に仕事しないと!」

 「ええー」

 「早くから退いて!」


 “膝枕”のことである。



******



 「葵さん、我儘が過ぎますよ」

 「それすっごくブーメランだから!」


 現在、バイト野郎はブロッコリー畑周囲の土手ら辺で巨乳長女に膝枕をしてもらっている。


 なぜかって? それは以前に行った“第三回アオイクイズ”のご褒美だからだ。


 「葵さんの罰ゲームでしょう? まだ10分しか経ってませんよ」

 「だってこれすごい恥ずかしいんだもん!」


 別に俺から急に畑の上で膝枕してくださいなんて言っていない。葵さんが久しぶりに“アオイクイズ”を開催したいとかキチガイなこと言ってきたので、「じゃあ以前の罰ゲームが先です」と言って、今に至るのだ。


 そしてその葵さんが正座して、真正面から仰向けになって寝転がっている俺を膝枕している状況である。


 「そうですか? どっちかと言うと、自分は仰向けになっているので眩しいです」

 「絶対嘘! 私の胸が陰を作ってるから眩しくないでしょ?!」

 「このビーチパラソルのことですか?」

 「一文字余計だよッ!!」


 あれれ、卑猥なこと意図して言った訳じゃないんだけどな。ごめんち。


 「ああ、マジ最高」

 「ほんっと最悪....」


 かれこれ10分はこうして葵さんに膝枕をしているのだが、如何せん土手の上ということもあって少し居心地が悪い。贅沢な話である。


 「このまま時が止まればいいのに」

 「私は和馬君の息の根が止まってほしいです」


 いつの間にか辛辣な口調になった葵さんの表情は芳しくない。そんなに嫌だったのかね。ちょっと傷ついたわ。まだ解放する気ないけど。


 「ちなみに葵さん、アオイクイズをしたいって言ってましたけど、もしかして今日ですか?」

 「当たり前じゃん。今日みたいに息抜きしたい日にしかできないでしょ」

 「受験終わるまであと少しですよ」

 「ストレスって言うのかな? クイズとかして罰ゲームで発散したい」


 それは俺がクイズで負ける前提の話ですよね?


 あんた前回負けたんだから、こうしてバイト野郎を膝枕しているんですよ? ストレス発散の逆になってませんか? 収束する一方な気がします。


 「だからそろそろ退いて―――」

 「では最後に葵さん、うつ伏せになってもよろしいですか?」

 「よろしくないですよ!!」


 ええー。


 「なんでうつ伏せになる必要があるの?! この変態ッ!」

 「枕の臭いを嗅ぎたいと言うか、スーハ―スーハーしたいと言うか」


 「すごい要求セクハラしてきたね?!」

 「駄目でしたらこのパラソルを揉んでいいですか?」


 「さっきから私の胸をパラソルって言わないでくれない?!」

 「まぁ、なんというか、平たく言うとエッチしたいです」

 「通報していいですか?!」


 そう言って、巨乳長女は通報をするために胸ポケットから携帯を取り出した。


 さすがに笑えない結果になってしまので、諦めた俺は潔く葵さんの膝枕から退いた。


 時間にして15分近く膝枕をしてもらったので、畑に着いても仕事を全くしなかった高校生二人である。


 「さ、じゃあ仕事しましょうか」

 「ちょ、その前にアオイクイズだよ!」

 「いやいや。自分はアルバイトで中村家に来ていますから」

 「なっ?! 何を今更常識人ぶっているの?!」


 正論だからな。


 正直、俺的にはアオイクイズとかリスキーなキチガイゲームしたくない。正解できたのも偶然なんだ。今回も正解できるとは確信できない。


 「ブロッコリーの収穫ですよね? さ、始めましょ」

 「......。」

 『ピッピッピッ』

 「ああー、はいはい。わかりました。わかりましたから、そのガラケーに打ち込んだ三桁の番号に電話しないでください」


 こいつ、我慢の限界だったのかヒャクトーバンしようとしたぞ。


 「じゃあ第四回アオイクイズを開催します!」

 「はぁ......」


 「まずはいつも通りに罰ゲームを決めよ?」

 「そうですね....。これと言って急には思いつかないです」

 「私は前から考えていたヤツだね」


 そりゃああんたから急に吹っ掛けてきたゲームだからな。


 どーせまたキチガイな罰ゲームなんだろ。そこは今までの内容と一貫して共通しているからな。


 葵さんはゴッホンと軽く咳払いして俺に罰ゲームを宣言してくる。


 「和馬君が答えを外した場合、ビルパン穿いて5分間躍ってもらいます!」

 「......。」


 ほらな。容赦なくコレだよ。


 ビルパンってアレでしょ。ビルダーパンツのことでしょ。ボディビルダーが自分の肉体を披露するときに身に着けている布面積の少ないパンツのことでしょ。


 「葵さんは本当に変態ですね......」

 「和馬君に言われたくないんですけど!」


 「ベッドの上でしたらいくらでもお触りしていいですよ?」

 「さっきどんな心情で私のこと変態扱いしてきたの?!」


 俺を苛めて楽しいのか。苛めていいのは筋肉だけだぞ。俺じゃない。


 「で、和馬君は何を要求するの?」

 「そうですね....。自分が指定した台本を読んでもらう数分程度の動画を録らせてください」

 「?」


 俺の要求する罰ゲームに葵さんは今一要領が掴めていない様子だ。


 「自己紹介とかちょっとした質問に答えてもらうもんです」

 「よくわからないけどいつもの、え、エッチな要求は無いのね?」


 「ええ。変な言い方ですが、葵さんとは接触しません。ただの動画作成です」

 「ど、動画として残っちゃうのはなぁ......」


 「なんでしたら自分も葵さんにビキニ着て踊ってもらう罰ゲームに変更しますが......」

 「そ、その動画作成でお願いします」


 なんだお前。他人にはほぼ全裸で躍らせる癖に自分は駄目とかナメてんのか。パコるぞ。


 ふふ。まぁ、でもこれで良いオカ―――もとい、あの動画が作成できるぞ。


 「ま、和馬君に正解させなきゃいい話だからね!」

 「それフラグじゃないですか?」


 こうして、畑に居てもまったく仕事を始めようとしない高校生たちによるクイズ大会の幕を開けたのであった。



――――――――――――



ども! おてんと です。


ということで、次回は久しぶりに“第四回アオイクイズ”を開催致します。


どちらが勝つか、どのような問題になるのかお楽しみください。


それでは、ハブ ア ナイス デー!

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