第189話 厄介ごとのスパンが短い

 「で、俺んちに来たと」

 「うん」


 厄介ごとを人んちに持ってくるんじゃないよ。なんで俺んちなんだよ。桃花ちゃんが居る隣の佐藤さんとこでいいじゃん。


 「はぁ」

 「ご、ごめんなさい」


 ........普段、お世話になっているからしょうがない。

 

 先程、雨の中、わざわざバイト野郎の家に来たというポニ娘は、今はシャワーを浴びて落ち着いたと言ったところである。


 無論、事が事だから服など持ってきていないので、上は俺の長袖、下も俺の長ズボン、下着は.........きっと母親のなんだろう。さすがに俺のパンツは穿いてないよね?


 「まぁ、どこにでもある親子喧嘩でしょ。せっかく来たんだし、お互い頭を冷やす時間があってもいいんじゃね? ゆっくりしてけよ」

 「......ありがと」


 お礼を言うなら俺の服を着ないでくれるかな? 陽菜が普段着ている服より全然大きいサイズの服なんだから色々と見えそうで怖いわ。


 でも、俺もお礼を言っておこう。ありがとう。眼福です。


 「はい、ココア」

 「....あったかいわ」

 「ホットだからな」

 「そ、そうじゃなくて、この居場所というか、なんというか....ごにょごにょ」

 「?」


 暖房入れるって程の時期じゃないからまだなんもしてないけど、アパートだから一軒家より暖かいもんか。


 「しっかしまぁ、あの真由美さんが怒るなんてなぁ」

 「しょっちゅうよ。和馬が居る時は遠慮してるだけ」


 それもそうか。うちのような巨乳JCが居ようとお構いなくオープンな家族はそうないよ。


 「さて、これからどうしよっかな」

 「い、いつまでもここに居たら迷惑だし、帰るわね」

 「い、今更だよ。せめて服が乾くまで待ってて」

 「....そうね」

 「それにその恰好で外は出られたら困る」


 お前が来ているその白地の長袖、胸の部分に“サビ残”って書いてあんぞ。そんなロリJCが歩いてたらヤバいわ。


 「ど、独占欲....」

 「違うから。出ていくならもっとマシな恰好しろ」


 馬鹿なこと言う元気は出てきたんだな。


 時刻は17時半頃である。夕飯には早すぎるし、テレビでも視て寛ぐか。そう思ってテレビを点けようとしたら、


 『プルプルプルプル♪』

 「あ、葵さんからだ」

 「っ?!」


 陽菜から聞いた話だと、こいつはどこに行くかなんて言ってないのにもう場所を割り当てたのか。さすが、巨乳長女。


 『もしもし。和馬君?』

 「はい。愛しの和馬です」


 『そっちに陽菜がお邪魔しちゃってる?』

 「スルーですか」


 『キリないじゃん。真面目に答えてよ』

 「....そですね」


 俺は陽菜にどうするか視線を送った。


 「居ないって言って!」

 『あ!その声はやっぱりそっちに居るんだね?!』


 馬鹿なの? そんな大声出したらバレるに決まってんだろ。


 『陽菜、千沙から話は聞いているから、とりあえず家に帰っておいで。ね?』

 「嫌よ! ママが謝るまで私帰らないから!」

 「陽菜....」 


 『和馬君に迷惑でしょ!』

 「身体で支払うからむしろ感謝してるわよ!」

 「し、しししししねーよ!」


 『え、あ、そ、そうなの? お邪魔しちゃったかな?』

 「そうよ! もう3時間くらいしたら電話ちょだい―――あだっ?!!」

 「アホ! 葵さん、何もしてませんから。依然、童貞のままですから」


 あ、自分で言っててなんか悲しくなってきた。


 『ひ、陽菜、そこに居るのね? ごめんなさいね、泣き虫さん』

 「いえ。それより.......あ、いや、陽菜に代わるんで当人たちでお願いします。自分が入ることじゃないので」


 真由美さんの声が聞こえたけど、電話越しでもわかるくらい弱りきってるよ。陽菜からは話の要点さわりしか聞いてないから、こいつがなんて言ったかはわからないしな。


 「ママ....」

 『陽菜....』


 「『早く謝りなさいよッ!』」


 すごい。どこに着火する要素があったのか全然わからなかった。


 「ママが謝るまで私、絶対にここを出ないから!」


 やめて? 人んちで籠城戦しないで?


 『別にいいわよぉ? そっちで泣き虫さんとパコパコして保健の勉強でもしてなさいな!』


 下ネタじゃねーか。


 なんで俺にトバッチリがくるんだよ。二人で話し合って解決してほしいから電話を渡したのになんで喧嘩おっ始めてんの。


 『保健は入試に出ないよ?』

 「葵さん、少し黙っててください」


 「葵姉、出るとしても雌蕊めしべ雄蕊おしべの関係よ」

 「陽菜、話変わってるから」


 なんだこいつら。なんで親子喧嘩から交尾の話になるんだよ。


 『はいはい。お母さんは謝るために陽菜に電話したのでしょう?』


 お、その声は千沙もそこに居たのか。なんだ、まだ親戚のとこに戻ってないのか。


 『だって、思い出したら沸々と苛立ってきて―――』

 「なによ、それ。ママがいけないのになんで怒るのかしら?」


 『あ、あああああなたがもっと勉強に力を入れていれば済む話なのよッ!!』

 「人間なんだから限度ってものがあるでしょ! それにストレス溜まって碌に集中できないわよ!!」


 『また言い訳?!』

 「ママの子だからね!」


 『ちょ! それどういう意味?!』

 「そのまんまよ! 私だって苦手な科目の2、3個あるわよ! でも頑張ってるの!」


 この親子喧嘩はいつまで続くのだろうか。


 俺はケチな性格なのかもしれない。こうして第三者として二人の話を聞いているとつい通話料金のことを気にしてしまう。別に親が払うしどうでもいいことなんだけど。


 『大体ねぇ!』

 「あー! あー!」

 「....。」


 ......仲いいね。



――――――――――――――――――



ども! おてんと です。


今回はキリが悪いので短めとなってしまいました。許してください。


次回はこの続きです。


それでは、ハブ ア ナイス デー!

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