第187話 飴玉感覚でピンクのヤツは口に入れるな

 「さて、何のゲームをしましょうか?」

 「好きなのどーぞ。あ、でもスイッ〇持ってるんだよね? じゃあそれ使ってなんかやろ」

 「わかりました」


 先程、中村家で夕飯を頂いた後、バイト野郎は千沙とゲームをすることになったので彼女の部屋に来たところである。


 正直、千沙こいつがボッチということが発覚したので、無下にはできないのが今のところの心情である。


 「ならニンジャ〇にします?」

 「お、いいな。俺もやってみたかったんだ」


 まぁ、美少女と二人っきりで居られるのは素直に喜ばしい。


 よし、千沙とゲームすると決まったら――


 「え、なんですか、急に――――きゃっ?!」

 「そのまま正座してて」


 俺は千沙の後ろに回り込んで膝カックンをお見舞いしてやった。


 なんのためかって?


 ふっ。――――――膝枕だ。


 「ちょっ!」

 「ああー、コレだよコレ。三週間ぶりだぁ」

 「い、いきなり膝枕ですか」

 「いいじゃん。これくらい譲歩してよ」


 役得である。マジ最高。できれば、スウェット越しじゃなくて陽菜みたいにショートパンツにしてほしいが贅沢言ってられないしな。


 「.....陽菜にしてもらってたんでしょう?」

 「それとこれとは別って言うか、陽菜には陽菜の良さがあるんだよ」


 そう。陽菜のムチっとした感じの太ももも良いけど、千沙のこの肉付きが少し足らないんじゃないかって心配になる細い美脚も最高なんだ。


 「私は都合の良い女ですか」

 「お前もお兄ちゃんのことそう扱ってるだろ」

 「べ、別にそれだけじゃないですよ」

 「?」


 散々我儘言ってた奴がなーに訳のわからないこと言ってんだか。


 「ああ、良い匂いがする」

 「き、気持ち悪いですよ!」

 「ごめん。つい久しぶりで」

 「ったく。.....まぁ、私も、こうして兄さんと二人っきりで居られるのが嬉しいです」

 「千沙.....」


 不思議。


 この雰囲気はどう考えても「お前、実はお兄ちゃんが好きなんでしょ」的な雰囲気なのに、この前みたいに行き過ぎた発言をしてしまうと嫌われてしまうんだ。


 俺の童貞心を弄んで楽しいか。この処女が。


 「さ、たくさん遊びましょう」

 「.....日付変わる前には帰るよ」

 「はは。御冗談を」







 千沙とゲームすること5時間程経つ。


 そう、気づいたらもいろんなゲームしてたんだ。......嘘みたいだろ? もう日付変わってるんだぜ?


 「千沙、そろそろ帰らせて」

 「駄目です。徹夜って言ったでしょう?」

 「初耳です」


 マジか。加減忘れたこの馬鹿妹はマジでバイト野郎を家に帰す気が無いらしい。


 「なぁ」

 「しつこいですね。じゃあ、力ずくで退帰ればいいじゃないですか」

 「.....できたら苦労しない」


 先程まで俺は千沙に膝枕してもらったのだが、どうも長時間しっぱなしで疲れたようで、今度は俺が膝枕することになったのだ。


 以前、陽菜にもやったように、千沙もバイト野郎にしてほしかったらしい。


 曰く、逆ってどんな感じですかね?と。


 「兄さん」

 「な、なに?」


 テレビゲームを継続してずっとやっているが、バイト野郎と話すときは真上に位置する俺の顔を見ながら話してくるのだ。


 この微妙な動きが息子に小ダメージを与えてくるので困っちゃう。


 「女の子を太ももに乗せるってどんな気分ですか?」

 「うーん、別に重くないし、苦痛には感じないけど、やっぱり女の子と違って“突起物”があるから意識しちゃう」

 「もう少しオブラートに言えません?」


 遠回しに忠告してんだよ。わかれよ。


 陽菜もそうなんだけど、なんでチ〇ポ寄りの太ももに頭乗せるの? 勃ったら寝心地悪いなんてもんじゃないよ?


 「逆にされてみてどんな感じ?」

 「“元祖・膝枕係”としては、まぁ及第点と言ったところでしょう」


 元祖・膝枕係。そこまで誇りに思う役割ではないと思う。


 「じゃあ退けって」

 「嫌ですよ。チン質とらないと勝手に帰っちゃいそうですし」


 なんだ“チン質”って。チ〇ポ握りつぶす気か。


 お前にそんな握力ねえだろ。よし、試しに握ってみなさい。そんでもって上下にシコシコと摩りなさい。ついでに咥えなさい。


 「なんかゴツゴツしてますし」

 「大腿筋が硬くて痛いだろ」


 「兄さんの兄さんもバキバキしてますし」

 「筋肉の塊だから同じく硬いだろ」


 「セクハラですよ、コレ」

 「生理現象ですよ、コレ」


 ああ言われたらこう言う。そんな会話を繰り返すことで時間がどんどん過ぎっていく。


 っていうか、真由美さんたちはなんでバイト野郎が帰ったことを確認しないのだろう。俺たち二人を放置なんてヤれって言ってるようなもんですよ。


 「ふぁあ」

 「さすがの千沙でも二時過ぎの今では眠いか」

 「ええ。今日....じゃなくて昨日は昼寝をしなかったんですから」


 よし、こんな夜中で今更だがそろそろ帰ろう。


 そう思ったとき、


 『コンコン』

 「千沙。ちょっといい?」

 「「っ?!」」


 廊下から聞こえた声は雇い主の声である。もう2時過ぎてんぞ。寝る時間じゃないのか、あんた。


 「入るよ」

 「だ、駄目ですって!! 今は駄目です! 少し待ってください」

 「え、あ、うん」


 年頃の女の子だからか。そこら辺はちゃんと察したんだね。良いパパじゃん。うちの猿親父と交換してほしいくらい。


 「なにボケっとしてるんですか?! 早く隠れてください!」


 千沙が小さい声で俺に訴えてきた。


 「え、なんで?」

 「時間考えてください! 丑三つ時ですよ?!」


 “丑三つ時”ってJKの口から出るんだな。


 「ベッドの下に潜ってください!」

 「....まぁ、俺がパパだったらこんな時間に娘の部屋で男を見かけたら殺すよね」


 でも今更じゃんね? 夏休み中はしょっちゅう、お前の部屋にずっと居たし。


そのことを千沙に言ったら、


 「アレ、お父さん知らないんですよ!」

 「マジか」

 「早く!」


 バイト野郎は千沙に言われるがままベッドの下に潜った。


 やっぱりお父様に言ってなくても、一つ屋根の下で俺たちは一か月近く一緒に過ごしたんだからバレてもそんな怒らないでしょ。


 「ど、どうぞ」

 『ガラガラガラガラ』

 「あ、高橋君帰ったんだ」

 「え、ええ。とっくに」

 「良かった。居たら石抱の刑だよ」 


 良かった、隠れて。


 “石抱の刑”っていつの時代だよ。あんのかこの家に。


 「で、何の用です?」

 「見回り的な? いくら信用がある高橋君でも、彼が娘の部屋に居たら落ち着かないからね」

 「過保護すぎです」

 「いやいや。でもさっき、玄関で高橋君の靴を見かけたときはもしやと思ったよ」


 いや、よくそれに気づいて真っ先にベッドの下を疑わなかったな。他に隠れるとこねーぞ、この部屋。


 「い、居ませんよ。なんならこの部屋を探ってみます?」


 自分で自分の首絞めてるよ、この子。っていうか、それ言うと却って怪しくない?


 「え、いいの?」

 「ベッドの下は駄目です。あっち系のモノがたくさんありますから」


 バイト野郎はいつの間にか“あっち系のモノ”になったらしい。


 「........まぁ、本当に探さないけど」

 「きっと裸足で帰ったんでしょう」

 「それはさすがに.......。いや、彼なら有り得なくないか」


 裸足で帰るわけねーだろ。どんなとこに信用を置いてるんだ。


 「それでね、今日の午後、高橋君にトラクターの扱い方教えてくんない?」

 「ええー」


 あ、こんなとこにアケコンあった。俺もコレ使ってみたかったんだよなぁ。今度頼んでみよう。


 「最近、気温も落ち着いてきたし、そろそろ千沙も部屋から出てくる時期でしょ」

 「私は冬眠から覚めたクマですか」


 ここにはコンドームが。お前には要らねーだろ。何に使うんだよ。水風船でもする気か(笑)。


 「はぁ......で、兄さんにトラクターの何をさせるんです?」

 「畑を耕してもらおうかな」

 「“ロータリー”はくっつけてるんですか?」

 「いや。それもお願い」


 こ、こっちの箱には..........ピンクの丸いヤツ?! 見た所、“線”が無いってことは、遠隔操作が可能な代物なんだろう。


 「仕方ないですね」

 「頼んだよ。じゃ、おやすみ」

 「ええ、おやすみなさい」


 これを彼女に付けさせてデートすることは男のロマンである。思わず、息子もロマン砲発射しちゃいそうな案件だ。


 「兄さん、出てきていいですよ」


 あー、しかもダイヤル式じゃないか。プラスの方向へ回せばいいのか、それともマイナスの方向か........この強弱の使い方を極めることが彼氏に求められるテクの一つだ。


 「兄さん?」

 「はむっ?!」

 「はむ?」


 ........................やべ。口に入れちった。


 「わ、悪い。今出るよ」

 「はぁ」


 どうしよう。飴玉感覚でJKの使用済みタマゴピンクを食べちゃった。


 さすがに今更口から出せないぞ。ドン引きどころの騒ぎじゃないもん。


 「大丈夫ですか?」

 「あ、ああ」


 本当にどうしよう。小さいけど、口のどの辺に潜ませおくかで、見た目でバレちゃう。


 「さて、続きをしますか」

 「いや、そほそほかえうそろそろ帰る

 「?」


 ヤバい。今、舌の上にあるから変な活舌になっちゃった。


 「もうここまできたんですから、今日は諦めてオールしましょう」

 「........。」

 「兄さん?」


 お前、目の前の男の口にはタマゴピンクが入ってんだぞ。決して溶けない飴を舐めてんだぞ。


 帰らしてくれ。洗って返すから。


 「......まさかとは思いますが」

 『ガコッ!ガチッ!』

 「な、ナンデモナイヨ」


 口の中で小型タマゴが大移動。


 千沙はベッドの下に上半身を突っ込んで何かを探し始めた。


 「ありましたありました。

 「っ?!」


 お、お前、まさか――――――っ?!


 『ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!』

 「「......。」」


 口の中で振動し始めたローター。ジト目で強弱を使い分ける妹。俺の口は性感帯じゃないよ。


 「..........。」

 「お、美味しいですね? この飴」


 ..................変態な兄でごめんね。

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