第179話 男性はできないんじゃない。ヤれないんだ。

 「陽菜、これはいったい.....」

 「見てわかんない? 以前、私がしたんだからしなさいよ」

 「男の人の膝枕.....」

 「姉さん、涎垂れてます。......陽菜、その人、ばっちいですよ。今すぐやめてください」


 ばっちいって言うな。


 先程の“千沙あやし騒動”より、今度は“兄膝枕騒動”に移行したバイト野郎と中村家三姉妹である。スパン短けーよ。


 でも、今はマジでやめてほしい。ノーパンだから生地の薄い短パン一枚しか間に無いのだ。


 「陽菜、実は今はちょっとヤバくてな」

 「なにが? やったから、やってもらう。当然のことでしょ」

 「っていうか、さっき陽菜、和馬君に『ノーパンなの?』って言ってなかった?」

 「そ、そうですよ! その人ノーパンですよ?!」


 ノーパンなんだけど、ノーパンって言わないでほしい。俺が意図して穿いてないみたいじゃん。っていうか、千沙返せよ。


 それに先程、風呂に入ったからか、いつものポニーテールではなく、髪をおろした状態であるため、特に抵抗なんて感じなかった。


 ああ、この位置からでもわかる。陽菜の相変わらず甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐるから息子が困っちゃう。


 「また今度するから。今はマズいから」

 「何がマズいのかしら?」

 「おふ?!」


 地味に陽菜が寝返り打つたび、敏感なところをぐりぐりされて感じてしまう。


 ああ、これ、ノーパンとか生地の薄さとか関係無いわ。イチモツがある時点で男がしちゃいけないヤツだわ。


 だって俺の亀の頭が陽菜の後頭部に当たってるもん。頭と頭がごっつんこしてるんだもん。


 「それよりチョップした所をちゃんと摩って?」

 「う、動かないで。.....そんな必要ないだろ。それに、位置的に“摩る”というか“撫でる”じゃん」

 「じゃあそうして。ついでに痛い痛い飛んでけーってして」

 「え、えぇー」

 「しないと退かなーい」


 こいつ.....。


 でも悲しかな。美少女の頭が息子の真上にあるんだ。ちゃんと理性を保たないと“おっき”しちゃいそう。


 「陽菜、さっきあんなに食べてたから和馬君が辛そうだよ! もうその辺にしてあげて!」

 「葵姉、もうそんな域じゃないわ」


 もう腹にくる刺激というより、ち〇ぽにくる刺激がやばいです、葵さん。


 「兄さんの兄さんが! 兄さんの兄さんが!」


 その言い方はち〇ぽより却ってち〇ぽを意識させちゃうから。下品に聞こえるから。


 「千沙姉、和馬は今、私の“お兄ちゃん”だから」

 「くっ!」


 くっ!じゃねーよ。姉二人役に立たねーな。こっちはもう勃ちそうだぞ。

 

 「なんで和馬をノーパンにしたかはわからないけど、それとこれとは別よ、別。でもありがと」


 お礼すんじゃないよ。


 「和馬ぁ。なんか頭に硬ぁいのが当たってるんだけどぉ」

 「くっ!」

 「“くっ!”じゃないですよ、兄さん!」


 お前だってさっき言ってただろ!


 ヤバい、限界である。フルおっきしちゃいそう。


 「ひ、陽菜。そんな腹筋様間近に頭を置いているってことは、もしかして、頭の真下に......」


 ここで長女、やっと現状の危機を理解した模様。コーナーで差をつけるどころの話ではない。やっとスタート地点である。


 っていうか、“腹筋様”って何。


 「「ごくり」」


 姉二人は何をしているんだろうか。末っ子の後頭部におち〇ぽが敷かれているっていうのに、呑気に生唾飲み込んでいるよ。


 「ああー、撫でてくれないとうつ伏せになろうかなぁー」

 「っ?! それは枕をする意味がないじゃないか?!」

 「そもそも膝枕なんて枕としてちゃんと機能してないわよ」


 言っちゃったよ。まぁ、そうだけどさ。する方は(ガッチガチになって)痛いし、(タち上がるのに)邪魔だもんね。初めてやってみてわかったよ。


 陽菜が口を開け、それを更に自分の両手の指で広げて、綺麗なピンク色の舌をバイト野郎に見せてきた。


 「かじゅまぁ、うつ伏せになるわよぉ」

 「っ?!」


 どうしよう。JCがこの上なくち〇ぽ煽ってくるんですが。


 そんなに口を開けた状態でうつ伏せになったら、もうフェ〇じゃん。膝枕どこ行ったんだって話だよ。


 「あはっ。もうガッチガ―――」

 「よぉーしよしよしよしよし! ここが痛かったのかなぁ? 痛い痛いの飛んでけー!」

 「もう撫でなくていいわ。そんなことよりうつ伏せになりたい」


 やらせといてコレだよ。


 フェ〇したいってか。もう勘弁してくださいよ。童貞には刺激が強すぎるって。


 「だ、駄目だよ?! なに姉たちが居る前で、え、エッチなことしようとしているの?!」

 「そうですよ! それに、それ以上刺激すると“天然のチチーマヨ”がでちゃいますって!」


 下ネタじゃねーか。


 なんだ“天然のチチーマヨ”って。絶頂汁だろ、それ。


 「葵姉たちがナニ言ってるのかよくわからないけど、汚れたらもっかい風呂に入ればいいじゃない」


 “ナニ”がよくわかってなかったら汚れる心配しねーよ。舐めてんのか。あ、いや、ソコは舐めないでほしいです。


 「私も湿ってきたし。......あ、いや、えっと、ふ、服が汗でね?」

 「「「......。」」」

 

 だから下ネタじゃねーか。


 後から取り繕ったって遅いからね。お前は姉二人の前で下のお口がお湿りしちゃったんだよね。プシッちゃったんだよね。


 駄目だ。さっきの事といい、今の発言でもうガッチガチのおっきおきだ。


 「ああ。膝枕って最高ね。楽しくなってきたわ」

 「.....に......しろよ」

 「へ?」

 「いい加減にしろアホッ!!」

 「いだだだだだだだだだだだだだ!!!!」


 俺は太ももの上にある陽菜の頭をアイアンクローして持ち上げた。その際、立ち上がったので、身長差から陽菜は宙吊り状態となった。


 『ミシミシミシミシミシミシ』

 「ミシミシ鳴ってる!! ミシミシ鳴ってる!!」

 「おんまえはいっつもいっつも! わざとやりやがってよぉ!!」

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 陽菜の泣き叫ぶ声がリビングに、中村家に響き渡る。


 「反省してんのか?! ええ?!」

 「どーどー!!」

 「兄さんの握力でやったらトマト潰したみたいになっちゃいます!!」


 マジでこいつを握りつぶしてやろうか。


 葵さんたちがアイアンクローしている俺を止めてきたので、とりあえず陽菜を床に下ろした。


 「はぁはぁ」

 「大丈夫?!」

 「頭の形がぁ。チョップの次は、アイアンクローって.....」

 「アントニオ和馬.....」


 未だ痛がっている様子の陽菜である。女の子の顔面を鷲掴みするなんて初めての体験だわ。


 落ち着きを取り戻した俺と息子は、こうして夜中にご近所迷惑なバカ騒ぎを終え、俺は帰宅することとなった。


 『ピロン!』

 「ん? あ、桃花からメールだ」

 「え、なんで?」


 帰ろうとしたら桃花ちゃんからメールがきた。


 葵さんにそう聞かれたが、バイト野郎もよくわからない。とりあえず内容を見よう。


 [お兄さん。夜遅くにごめんね? 家に居る? 居ないよね。居たらさすがのお兄さんでも止めるよね]


 「なんのことかしら?」

 「さぁ?」


 陽菜に聞かれたことを桃花ちゃんに送り返した。


 『ピロン!』

 [とっても言いにくいんだけど、智子さんの“喘ぎ声”がうるさいです]


 「言いにくいと言う割には、すごいドストレートに言ってきましたね」

 「「「......。」」」

 

 マジかよ。俺の両親、昼にセッ〇スしてたのに、夜もシてんのかよ。ご近所さんに迷惑かけてんじゃん。マジでやめろよぉ。


 桃花ちゃんに聞こえてるっていうことは、窓閉めてないのかな? 網戸なのかな? 閉めろよ。うちの親はどこまでオープンなんだよ。


 息子はどうすればいい? 「タフだね」って褒めればいい? そろそろ帰りたいんですけど。


 「.....あんたの両親すごいわね」

 「まぁ、ポジティブにいきましょう。家族が増えると思って。16歳差ですが(笑)」

 「わ、私、赤ちゃんとか抱っこしてみたいかも」

 「.....。」


 他人事だと思いやがって。犯すぞ。


 そんな勇気もなく、これからどうしようかと悩む童貞野郎であった。

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