第150話 早起きは健康に良い?

 「おはようございまーす! 高橋でーす!」

 「お! 和馬!」

 「おはよう! 愛一郎、時間より早いな」

 「おはよう、あっ君」

 「愛一郎? 朝から元気がいいねぇ」


 天気は晴れ......らしい。空はまだ暗いからわからないな。バイト野郎は早朝の薄暗い時間帯から西園寺家でアルバイトをする予定である。開始時間は午前5時だ。


 日があと少しで出てきそうだが、まだ確認できないので、日中活動する人間にとってこの時間帯は新鮮な気分である。朝弱い俺でも少しだけ良い気持ちになれる。


 「悪いな。収穫量が多いし、人数が多いに越したことはないからつい呼んじまった」

 「いえいえ。でも、昨晩急に電話するのはやめてください」


 健さんが申し訳なさそうに俺に謝る。


 先日、生徒会長さんから健さんたちの連絡先を学校で渡されたので試しに電話してみた。そしたら後日、昨日の夜に、いきなり早朝バイトの依頼の電話がきたのだ。


 いや、マジで急だよ。


 「やっぱり早朝にバイトは眠いか?」

 「そうですね。慣れてないので眠いです」


 達也さんは元気ですね。慣れの差かな。バイト野郎、眠くてしょうがないよ。


 「はは。そんなんで大丈夫かい。さーて、バイトが7時までだから早速始めるかー」

 「頑張りましょう」


 陽子さんもやる気いっぱいだ。そう、俺は学校があるから5時から7時までがバイト時間なのである。


 「仕事内容はあっ君と私たち4人でトマトの収穫だよ」

 「以前の“ハウス”ですね。一度収穫したことのある物で良かったです」


 凛さんから軽く仕事内容を聴いた。今日の仕事内容は以前もやったトマトの収穫だ。


 ちなみに、“ハウス”は“ビニールハウス”の略で、西園寺家ではそう略しているらしい。


 「愛一郎、実は今日収穫するトマトは以前お前が採った物とは違う」

 「?」

 「もっと青いトマトを採るんだ」

 「もっと青いトマトを?」

 「ああ。トマトを大量収穫した後、選果し、出荷するまで時間がかかってしまうからな」


 バイト野郎は達也さんと健さんにトマトの収穫基準を教わる。陽子さんたちは別の所からトマトの収穫をし始めていた。


 ......不思議なもんだ。さっきから達也さんの“愛一郎”呼びに違和感が無い。きっと俺の中のどこかでもう諦めがついてるんだろう。


 「おめーさんのとこは完熟トマトを出すのが売りなんだろ?」

 「自分のとこと言うか、中村家ではそうですね」

 「鮮度の良い熟したトマトは最高に美味いが、持ち運びには向かねー」

 「なるほど」


 へー。以前、ここに来た時も聞いたけど、農家によって収穫時期が変わってくるんだよな。そりゃあ出荷の時点で潰れてたら最悪だよね。


 「こんな感じで採ってくれ。つっても基準より赤いヤツも採っていいからな」

 「ああ。後で俺たちが選果する際に分ける―――ふぁああ」

 「了解です。すごい欠伸あくびですね、達也さん」


 朝から元気な達也さんがここに来て眠気でもきたのか、欠伸をしだした。


 「おいおい。大丈夫か、達也」

 「おう。ちょっと

 「......。」


 「何が?」なんて野暮なこと聞かない。だって凛さんとのセックス確定なんだもん。あんな美人さんとずっるいなぁ。


 眠そうにしている達也さんが俺の方を振り向いて、ニヤニヤしながら言う。


 「愛一郎、羨ましいか?」


 “愛一郎”の呼び名でそんなこと聞いてきたら、息子に『ママとのエッチ最高』にしか聞こえませんよ?


 「うっ。......そうですね。あんな美人な奥さんは羨ましいです」

 「はは! そうだろう、そうだろう」

 「でも......嫌な言い方しますけど、朝早くから仕事なのによくヤリますね?」

 「まぁな。睡眠時間は1時間くらいかな」


 すごいな、達也さん。もう人生の先輩としか思えなくなってきた。


 「かー! お熱いなぁ、おい!」

 「ふっ。親父、すぐに孫の顔見せてやる」

 「楽しみにしてるぞ!」


 健さんが嬉しそうに返事をした。バイト野郎に至っては、会ってまだ2回しか顔を合わせていない達也さんと凛さんの生々しい話に絶句を禁じ得ない。


 子作りってことはゴム無しってことでしょ。......すげーな。先の先の先の話すぎて愚息でのイメージが全くつかないや。


 「そういえば、愛一郎」

 「和馬です」

 「なにを今更。......お前って彼女いんの?」

 「ぐはっ!!」

 「あ、いないのか」


 反応でバレちった。条件反射みたいなもんだからしょうがない。


 「エッチはいいぞー。トマト作ってるときより気持ち良い」

 「トマト栽培と一緒にしないでください。収穫に集中できませんよ」


 「おっぱいをトマトに例えるのは、トマトに失礼だが」

 「、失礼です」


 「瑞々しくて、見ているだけでしゃぶりつきたくなる」

 「お、おおー、そ、そんなに......」


 思わず、ごくりと生唾を飲んでしまった。そんなにすごいのか。たしかに凛さんのおっぱいはデカい。


 ああ、俺もいつか葵さんのを拝みたい。


 羨ましそうにしてたら、横に居た健さんが急に俺の肩を掴んできて言ってきた。

 

 「童貞のお前さんには酷な話だが、まずは女をつくることから頑張ってみろ!」

 「ちょっ! 彼女いないからって童貞と決めつけないでください!」

 「なんだ違うのか?」

 「ぐはっ!!」

 「なんで否定した......」


 くっそ。地雷でも条件反射が。


 「彼女なんて俺にはつくれませんよ」

 「いけるいける。お前ならいけるって」


 「無理ですって。......あーあ、いっそ諦めて、カボチャとかスイカの中身を良い感じでくり抜いてオナホにしてみようかなー」

 「前言撤回。お前、ヤベー奴じゃん」


 「じょ、冗談ですって」

 「性癖どうなってんだ? 雇うのやめようか考えるレベルだったよ」


 そ、そんなに?


 ただのバイト野郎のちょっとした野望だよ?


 なんかスイカって冷たくて気持ち良さそうだったから、割と『死ぬまでヤリたいランキング』の上位なんだけど。せっかく農家で働いてるんだし。


 まだ疑ってるのか、達也さんが腕を組んで俺に聞いてきた。


 「で、使はどうすんの?」

 「可能ならば、葵さんたちに食べてもらおうかと」 


 「知り合いに警察のもんがいるんだ。ちょっと待ってろ」

 「だ、だから、冗談ですって! 冗談!!」


 「スイカが可哀想じゃねーか」

 「じ、自分が言うのもなんですが、そこは葵さんたちを哀れんでください」


 そんなこんなで、バイト野郎は役に立ってるのかどうかなんてわからず、西園寺家の皆とトマトの収穫をバイト終了時間まで行った。


 いやー、楽しいね。健さんたちは人間関係に壁をつくるような気難しい人柄じゃないから、すっごく気楽で話しやすい。良い職場だ。







 「あ、高橋君」

 「あ、会長。おはようございます」

 「おはよう。バイト君」

 「ば、バイト君...」


 西園寺家に戻ったら、中庭で制服姿の美咲さんと会った。鞄を持っているということは、え、もう学校に向かうの? 早くね?


 「もう学校ですか?」

 「生徒会長は生徒の模範にならなきゃね。朝早くから来る部活動の生徒ももちろんその対象だ」

 「カップルを裁いといて何を言ってるんですか」

 「それとこれとは別だよ」


 この人との会話は、会話にならないので手短に済ませるのが吉だ。


 凛さんがこれから登校する会長さんに聞く。


 「じゃ、学校に行ってくる」

 「いってらっしゃい。今日も遅いの?」

 「いいや。デスクワークはもう嫌だから他の子に任せる」


 はい出ました。「生徒会長は生徒の模範」はどこ行った。


 「そ、そう。いってらっしゃい」

 「うん」


 その返事を最後に、会長さんは学校へ向かった。


 「なぁ和馬。“生徒会長”ってなんだ?」

 「俺も気になってた」

 「自分が聞きたいです。アレ、ただの独裁者ですよ」

 「あ、あんたたちねぇ」

 「み、美咲ちゃんもああ見えて頑張ってるんだから! ........たぶん」


 “たぶん”かよ。



―――――――――――――――――――――



ども! おてんと です。


この回、特に誤字脱字が多かったです!

修正します!

許してください。


それでは、ハブ ア ナイス デー!

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