第108話 アダルトグッズ:ゴーヤ

 「今日はゴーヤを収穫します!」

 「キエェェェーーー!」

 「あんた、暑苦しいを通り越して気持ち悪いわよ」


 「た、たしかにちょっと怖い」

 「ゴーヤですよ? あのゴーヤを収穫ですよ!」

 「ゴーヤの収穫ごときでなに興奮してんのよ」


 天気は晴れ。安定の晴れ男、和馬であって嬉しい限りである。最高気温は39度とまぁ殺人的な暑さだな。熱中症には気をつけねば。


 「ゴーヤがどうしたの?」

 「いえ、言ったらセクハラになりますし、やめときます」

 「その一言でもうわかっちゃったよ! ほんっと最低だね?!」


 失礼な。日頃、性欲を持て余した人妻が野菜で自慰行為をする際に使うものと言ったら、ナス、ゴーヤ、トウモロコシと決まっている。でもそんなこと言ったら絶対変態扱いするし、自重したのにコレだよ。


 っていうか俺の一言で伝わったんなら葵さんも大概ですよ。


 「あんたってなんでそんなに変態なのよ」

 「そ、それほどでも」

 「褒めてないわよッ! ど、どーせ、ゴーヤを使う前に女性をんでしょ?! ほんっと最低ッ!」


 いや、そこまで言ってませんが。


 「そ、それだけじゃないよ。高橋君のことだからきっと目隠しとか耳栓とかしてはず......」

 「うっわ。ドン引きよッ!」


 いや、そこまで言ってませんが。


 「「お、女の敵....」」

 「......。」


 今回ばかしは俺が被害者なんじゃないんだろうか。二人の被害妄想でバイト野郎の株はゴキブリ以下だ。


 「はぁ.....仕事しましょう」

 「そうだね」

 「ちゃっちゃと片付けましょ」


 「っていうか薄々気づいてたけど陽菜おまえ、もう足の怪我は治ったのな」

 「そ、そうね。辛うじて....と言ったところかしら」

 「あっそ」


 嘘つけ。何が『辛うじて』だ。お前がバイト野郎のためにスーパーまでプロテイン買いに行ったの知ってんだぞ。


 「ゴーヤはこれくらいの大きさを採ってね」

 「意外と葉っぱの中に埋もれているから見逃さないようにしなさいよ」

 「ふむふむ」


 「で、硬さが無くてふにゃふにゃした柔らかいゴーヤはポイして」

 「それに腐って虫がたかるかもしれないから遠くの方に捨てなさい」

 「ほうほう」


 俺は葵さんと陽菜にゴーヤの収穫の仕方を聞いていた。二人とも説明が上手だからすぐ覚えられる。


 ちなみに今日はこのゴーヤ畑に来る際、葵さんが軽トラを運転して助手席には陽菜、荷台にはバイト野郎といったフォーメーションである。帰りも同じだろう。


 「という感じで高橋君、さっそく収穫を始めてください」

 「了解です」


 「質問とか無いのかしら?」

 「あるけど、あんま関係ないことだし」

 「す、スリーサイズ聞いてくるとかドン引きよ」

 「まだなんも聞いてねーよ」


 お前の貧相な胸に興味なんかねーよ! このひっぱいがッ! あ、『ひっぱい』というのは『陽菜のおっぱい』を略してるだけだから。貧相の『ひ』じゃないから(笑)


 というか、これで中村家美人三姉妹の俺を見る目が普段どんな奴だかわかったわ。光栄ですこと。


 「気になることって?」

 「いや、まぁ、この黄色のゴーヤってどうするんですか?」


 俺は葵さんに気になっていたことを聞いた。収穫には特に関係ないっぽいが見た感じみたいだ。種は真っ赤で、ゴーヤの外皮もどろどろである。握ったら簡単に潰れそう。


 「あーそれも見つけたらポイしてね。ごめんなさい、言い忘れてた」

 「いえ、お気になさらず。事前に知れて良かったです」


 「まぁ、黄色のゴーヤは前回収穫するときに見逃しちゃって、そのまま熟しちゃったのよ」

 「あ、やっぱ熟した説が当たってたのね」

 「?」

 「こっちの話。さーて、始めますか.....って葵さん?」


 葵さんは顎に手を当てて何か考え事をしているみたいだ。どうしたんだろ。


 「......。」

 「葵姉?」

 「....なんか嫌な予感がする」


 「よし、ここで“アオイクイズ”だよッ!」

 「あ、アオイクイズ?」

 「予感的中ぅ」


 まーじか。この人、数日前の屈辱忘れてんのかな。俺の罰ゲームも受けてないくせに、なに勝手に次のクイズにいこうとしてんだ。


 「なによ、そのまるで知能を感じないクイズ名は」

 「......。」

 「か、和馬、楽しみねッ! 正解できるよう頑張りましょ!」

 「よろしい」


 俺を巻き込まないでほしい。またやんの? めんどいんですけど。


 「というか、葵さんにまだ前回の罰ゲームを受けてもらってないんですが」

 「うっ。ツケといてッ!」


 罰ゲームにツケ利かねーよ。早くち〇ぽしゃぶれッ! っじゃなくて、背中を流してもらいたいものだな。


 「前回って?」

 「初回だよ、初回。今回で二回目セカンドインパクトだな」

 「先輩主催のイベントを地球規模の危機にしないでッ!」


 逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだってか? まぁ今回で罰ゲームを増やせるならそれはそれでありかも。


 「で、罰ゲームはどうするんです?」

 「今回もやるのかしら?」

 「うん。問題を出す側、受ける側のどっちか負けた方に課せられるの」


 それに今回はこの雰囲気だと、陽菜は問題を“受ける側”だ。


 これでこちらの戦力は二倍。農業に関して知識がある陽菜が味方なら怖いものなしだ。思わず余裕の笑みが出てしまいそうだ。


 「じゃあ、葵姉に罰ゲームしてもつまんないし、私はで」


 これであちらの戦力は二倍。農家ガチ勢によるニワカ野郎へのいじめ問題が生じた。難易度も倍となって、思わず涙を流してしまいそうだ。


 「高橋君の罰ゲームは?」


 正直、勝てる気がしない。こちらが罰ゲームの優しさを伝えて、あっちが提示する罰ゲームを考え直してもらおう。加減を覚えてほしい。


 「ぽ、ポッキーゲームで」

 「本当に『自重』を知らないよね!」


 葵さんが怒ってきた。


 「くっ! 1+1は?!」

 「陽菜ッ?!」


 陽菜はなんでか、野菜と全く関係ない問題を言い出した。え、なにそれ。「2」って言ったらお前、罰ゲームだよ? いや、受ける気満々か。陽菜だもんな。それに既に一回シたし......。


 「あ、危ない危ない。目の前の誘惑でつい。よく考えたらそれ以上の要求をこちらが罰ゲームにすればいい話じゃないッ!」


 よく考えなくても過度な要求はしないでください。お願いします。


 「ひ、陽菜、加減してね? 少なくとも彼はなんだから」

 「わ、わかってるわ」

 「.....葵さんは?」


 「冷え冷えジョッキの生卵10個流し飲みでッ!」

 「「......。」」


 “加減”どこ行った。


 あんたの言う罰ゲームはマジで罰ゲームだよ。本人しか楽しめない、自分勝手な罰ゲームだよ。


 「もちろん半裸でねッ!」

 「あ、葵姉....」

 「......。」


 葵さんこそ『自重』を知った方がいいんじゃないだろうか。よくこれで人を責めることができるよな。


 「え、えーっと、葵姉がその気なら私はねぇー」


 陽菜様、陽菜様、陽菜様、陽菜様、陽菜様、陽菜様、陽菜様、陽菜様。


 「和馬のスマホの画像や動画ギャラリーを公開してもらうわッ!!」


 あッーーーーーーーー!!


 それ駄目なヤツぅ。女の子には見せられないお宝たっくさんあるヤツぅー!


 「さ、高橋君覚悟して!」

 「和馬、え、えっちなデータあったら全部消すから!」


 陽菜、そんなことしたら、俺のスマホの使用済みストレージと未使用ストレージが逆転しちゃう。


 息子共々泣いちゃう。勘弁してください。


 「はは。無駄口を叩くんじゃなくて仕事をしましょう!」

 「さ、高橋君覚悟して! 最近、スマホのビデオ機能も使いこなせるようになったからね!」

 「和馬、覚悟なさい! 代わりにわ、わわわ私とのツーショットでストレージ埋めてあげるから!」

 「......。」


 まずい、これ以上勝手に変なオプションを付けられてはたまったもんじゃない。受けるしかないのか......。


 くっ殺ッ!



―――――――――――――――――


 ども! おてんと です。


 前回とスパンが短いですが、次回は『第二回アオイクイズ』を開催します。


 読者の皆様もどちらが勝利するか予想しながらお楽しみください。


 あ、ゴーヤーはゴーヤとも呼ぶらしいです。


 それでは、ハブ ア ナイス デー!

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