第55話 双猛将
「てっきり、最期まで主殿の傍で戦うものと思っていたぞ、
「お主こそ、てっきりルインを倒すものと」
「なーに、ルインなんざ御当主の相手ではない。問題は
「そこは蛇が何とか出来るだろ、違うか?」
「ガハハ!だから俺はここに残ったんだぜ?」
この2人はまさに規格外だった。
身体の大きさや筋力だけの話ではない。
その反応速度、判断力、そして最適解を確実に具現化する身体能力。
その全てがだ。
兵士達と連携して、失敗作達を着実に1人ずつ仕留めていた。
とは言っても、味方の損害も大きい。
前衛は既に数えるくらいしか残っておらず、後詰を出して対応している。
暗黒種族と戦っているトールズ達中央軍の状況も分からない。
失敗作であろうが、コイツ等は1人も外に出せないのだ。
出てしまえば、取り返しのつかない事になる。
何としてもここで倒す必要があるのだ。
「しかし、なかなか手強い!」
直槍で薙ぎ払う寅。
失敗作の1人は空中で受け止め、後方へ飛び、もう1人は
「コイツ等の中でも個体差があるみたいだ」
「シロの話だと、個々の肉体に別の人格を植え付けた結果だとか言っていたっけか?」
「全く意味が分からん」
「
「何故分かる?」
「体格と武器がちぐはぐだ」
タイパンはそう言って、失敗作の1人を指差す。
「まず、アイツ。恵まれた体格をしていながら使用武器は
「確かに……、普通に考えれば逆だな」
全員が全員という訳ではないが、半数近くは身体に合わない武器を使用している。
「無理に定着させた反動で、失敗作になったと考えるのが妥当でしょうな」
「しかし、このままで埒が明かんぞ」
「なぁに、すぐに
タイパンの言っている好機とは、単純に相手の体力切れ。
華奢な身体で大斧など振り回していたらすぐに限界が来る。
元々の身体の持ち主ではない事が裏目に出る訳だ。
そして、それはすぐに訪れる。
振り下ろされる大斧を寅が受け止めた瞬間だった。
鈍い音と共に、大斧が地面に落ちる。
「なんだ?」
「手首が砕けたな。そんな細腕で大斧なんて使うからだ」
動かない自分の両手を、声1つ上げずに見つめる様子は、ただただ異様としか言いようがない。
ソイツ1人だけではない。
身体にそぐわない大振りの武器を使っていた奴等の動きが止まった。
「さて、ここからは俺達の番だな」
寅が直槍を構え直した。
その瞬間、手首が砕けた大斧使いの首が飛んだ。
「なんだ!?」
「貴様等、ごちゃごちゃうるさい」
首を失った死体が倒れたその後ろに、1人の女が立っていた。
「誰だ、お前」
「私もコイツ等と同じ、ただの失敗作よ」
「お前は喋れるんだな」
「コイツ等の失敗は、強制的人格移植の拒否反応による人格崩壊。私とは違う」
「じゃあ、お前は何なんだ」
「私は成功作であり、失敗作よ」
「何を言っている?」
寅には理解出来なかったが、タイパンにはその一言で全てが理解できた。
タイパンの顔が強張る。
「寅殿、つまりコイツは人格移植に成功したが、移植した人格が目的とする者ではなかった為に失敗と判断されたって意味だ」
「貴方は賢いのね」
「何処の誰かは知らんが、ここで死んでもらうぞ」
「起き抜けの女を襲うなんて、
「敵だろ?それだけで充分だ」
「分かりやすいのね、貴方好みだわ」
「女の振りしてんじゃねーよ。お前、元は男だろ?」
タイパンのその一言で、ソイツの表情は一変した。
「今が正しいのよ!前の身体が間違っていただけ!!」
「いや、お前からは男の匂いしかしねーよ。御託はいい、来いよ、クソ野郎」
「野郎って言うな!!」
タイパンに斬りかかる。
手にしているのは
タイパンは両手剣で受け止める。
「ガハハハ!戦闘鎌!?」
「何よ、文句あんの!?」
「カマが鎌使ってる!それはボケなのか!?」
「うっさい!私は女だ!!」
旋風の如く戦闘鎌を高速で振り回す。
タイパンはそれらを両手剣で防ぐ。
「タイパン!」
「寅殿!他の奴等の相手をお願いしたい!」
「チッ、分かった!」
戦闘鎌の失敗作以外にも、あと13人の失敗作が残っている。
その中でも、体格に合った武器を持っているのは7人、他は恵まれた身体の癖に小剣や
デカい図体でも、練度が高ければ厄介だが、どれも身体を捌き切れていない。
デカい身体が足枷になっているのだ。
それらを早々に排除して、
「この数は中々に厄介だな」
チラリとタイパンの方を見る。
戦闘鎌と両手剣の激しい剣戟が続いていた。
ほぼ互角だ。
「やるしかないか」
軽く笑いながら、寅は直槍を構え直した。
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