第三五九食 大学生と戦う決意①
★
さほど広くはないが暖房のついていない室内は、扉と窓を閉めきっていてもひんやりと肌寒い。時折外の廊下を誰かが通り過ぎる以外には物音一つ立たないので、その孤独な空気が余計に寒々しさを助長している気がする。だが夕は身体が冷えた素振りも見せず、ただ机の上に
「……チッ。なんだ、テメェか」
しばらくした後に講義室の引き戸がガララと開かれ、入ってきたのは金髪ピアスの女子大生・
「……」
「……。…………。……?」
長い沈黙が続き、
「……オイ」
さらにしばらくの無言を
「オイ、爬虫類野郎」
「……」
「一丁前に
「……」
「……いい加減にしやがれ、話しかけてンのが聞こえねェのかテメェッ!?」
無反応を貫く夕に対して
「ち、千歳!? びっくりした、いったいいつからそこに……つーか急に大声出さないでくれよ、心臓に悪いから」
「さっきからずっといたし声も掛けてたっつンだよ!? オレの存在自体に気付いてなかったとかどんだけ気ィ抜いてやがンだ!」
良くも悪くも昔から目立って――というより浮いて――しまいがちな千鶴は周囲から奇異の視線を向けられることに
「チッ……テメェのことだ、どうせ
「うっ、ま、まあ……つっても、別に
「知ってるっつンだよ、今のテメェとあの子の事情なら」
「え? 知ってる、って……俺、お前にはまだ話してないよな? 誰か……
「
「クソガキ……あっ、
〝クソガキ〟と〝
「何日か前にクソガキから電話がきて、聞いてもねェのに色々聞かされたンだよ」
「電話って……え? お前と赤羽さんって個人的に電話するほど仲良かったのか? な、なんか意外だな……」
「ンなわけねェだろ、張り倒すぞテメェ」
心外な言葉に思わずヒクッ、と片眼を
「お前ってぬいぐるみとかキーホルダーとか真昼とか、可愛いもの大好きなわりに赤羽さんはそうでもないんだな? 顔だけならその辺の雑誌に
「誤解招きそうな言い方すンじゃねェ。大体いくら
「ははっ、たしかに問題児ではあるけどな」
「……そういやヤモリ、テメェはこれからどうするつもりなンだよ?」
「? どうって?」
夕が聞き返すと、千鶴は自分の金髪に指を通しながら言う。
「試験が終わったら真昼のやつ、父親と直接話つけに行くンだろ? テメェもあの子と一緒に行くつもりなのかよ?」
「……。……え?」
質問に答えるどころかまったくの初耳であるその話に、青年は小さく疑問符を
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