第三五五食 うたたねハイツとデリバリー③
ひよりが持ち帰ってきた
最後の一つ以外はどれも
「ひ、ひよりちゃんっ!? なんっ、どうっ、こここれっ、これっ……!?」
「とりあえず落ち着きなさい」
「なんで」「どうして」と聞きたかったのだろうが驚きのあまり言語能力を喪失している真昼に対し、親友の少女は落ち着いた様子で告げる。
「『
「!」
「でもあんた、テストが無事に終わるまであの人と会うつもりはないんでしょ? だから家森さんの代わりに私がこうして準備を手伝う約束をしてたのよ」
「あとはまひるんと一緒に食べる役もねー。おにーさんが『一人で食べるより、誰かと食べた方が美味しい』からって、私たちの分も作ってくれたんだってー」
「一人で食べるより……」
それは初めて夕と料理をした翌朝、真昼が彼に言った言葉だ。当時、誰かと一緒に食べる
「お兄さん……全部覚えててくれたんだ……」
隣室から運ばれてきたばかりでまだじんわりと熱を帯びている容器を手に取り、ぎゅっと胸に抱き締める真昼。
『真昼。あんまり頑張り過ぎないようにな』
『〝頑張る〟と〝頑張り過ぎる〟は別物だよ。ずっと全力疾走してたら、いつか息が切れて倒れちゃうだろ?』
「ひとつなにかを頑張ったんなら、ひとつ自分にご褒美をあげるくらいで丁度いいんだよ。真昼はただでさえ頑張り屋なんだから、息の抜き方も覚えないとな?」
『また一緒にご飯を作って、一緒に食べよう。
「…………そうだよ……私、なにやってるの……」
「
「……
真昼の様子を後ろから眺めながら、
「……みんな、ありがと。私と一緒にお兄さんのごはん、食べてくれる?」
「……当たり前でしょ、そのために来たんだから」
「もー私お
「あんたもせめて机の上の片付けくらい手伝いなさいっての!? ……ってあれ? ひより、玄関のとこに置いてある鍋、アレなに?」
「ああ、それも家森さんが用意してくれたのよ。温め直すから食べたい人は言って。中身はカレーだから」
「お兄さんのカレー!? は、ハイハイっ! 私っ、私が飲むっ!」
「まひるんちょっと落ち着こー? 心配しなくてもたくさん入ってるしー、そもそもカレーは飲み物じゃないしー」
「……?」
「いや、そんな心底不思議そうな顔されてもー」
途端に騒がしくなった部屋の中で、少女たちは食事の準備を進めていく。つい先程隣で
「えへへ、それじゃあ――いただきまーっすっ!」
「声でかっ!?」
「あははー、まひるんってばテンション上がりすぎー」
「……」
雪穂と亜紀がそれぞれの表情を浮かべる中、ひよりは気付いていた。真昼が大声でそう言った目先には隣室との間を
そして向こう側から
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます