第三五四食 うたたねハイツとデリバリー②
★
ひよりが美味しいお店とやらに向かっている間、形だけ勉強するフリを保ち続けていた
「純粋に疑問なんだけどさー、まひるんはどうしておにーさんに会いに行かないのー?」
「……え?」
その質問に、一段落した数学の教科書を閉じた
「だってまひるんって、お父さんから『
「え、えっと……たしかにそうなのかもしれないけど……」
困ったように眉尻を下げた少女は、寝不足の瞳でちらりと
「……でも、やっぱり言えないよ。ただでさえ私が勉強しなかったせいでお兄さんと一緒にごはんを食べることも出来なくなっちゃったのに、『じゃあ代わりに外で遊びませんか』なんて」
「そっかー。『いや真面目に勉強しなよ』って思われちゃうかもしれないもんねー。まーおにーさんはそういうの気にしなさそうだけど……むしろまひるんの
「うん……やっぱり申し訳ないし、お兄さんにはダメな子だって思われたくないから……」
「あははー、まひるんってホントおにーさん第一で生きてるよねー。もっと自分のしたいように
「誰が図太いだって!?」
亜紀のイジリにピキッと
「じゃあ〝お兄さん〟とあんまり連絡取ってないっていうのもそれが理由なわけ? 電話とかメールも全然してないんでしょ?」
「う、うん……そっちは一応、お兄さんも今は試験で忙しいだろうからっていう理由もあるけど」
「あー、そういえば
「はあ……あんたと
「まひるんも耐えられてはないと思うけどねー。こないだも大変だったしー、もしかしてそのうち禁断症状とか出始めるんじゃないのー?」
「あはは、流石にそれはないよう。たしかにお兄さんと会わなくなってからなかなか寝付けなくなったし頭はぼーっとするし、たまにお兄さんの部屋側の壁から私の名前を呼ぶ
「既に禁断症状出てるんかい!? も、もうあんた強がってないで一回家森さんに会ってきなさいよ!?」
「い、イヤだよ。私はお父さんとの約束をきちんと果たしてから、胸を張ってお兄さんと会いたいんだ!」
「真面目かッ! なんで普段は素直なのにどうでもいいとこで
ズレた眼鏡を定位置に直しつつ、妙なところで意地を張る真昼にツッコミを入れる雪穂。元々性格的に似ても似つかない二人ゆえ、意見の一致を見ることは難しそうである。
「ちょっとアキ、ほんとに大丈夫なのコレ!? このままじゃまひる、勉強のしすぎで頭バクハツして死ぬわよ!?」
「いや、勉強にそんな特大のデメリットがあるなら誰もテストなんて受けないからー。まーなんとかなるんじゃないー? ひよりんが『大丈夫』って言ってたしー」
ゆるふわ系少女が
「あ、おかえりなさい、ひよりちゃん」
「おかえりー、ひよりん。お昼ご飯の
「ええ、上々よ」
「?」
なにやら仰々しいやり取りをする二人に真昼がきょとんと首を
「あれ……こ、この匂いって……」
そこに入っていたのは食欲をそそる香りを放つファーストフードの紙袋でもなければ、お
「お――お兄さんが作ったごはん……!?」
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