第三五〇食 家森夕と寂しい気持ち
★
「むむぅん……うむむ……むぅん……」
「……ちょっと
「え? あ、ああ、悪い」
ちょうど曇り空に晴れ
高等部よりも少しだけ早く年度末の試験が待ち受けている彼らは現在、
「なにさ、まだ
「……ああ。
「ふーん? まあ私もさっき
「そうかもな」
蒼生の言葉に頷き、携帯を机の端に置いてコーヒーを一口
そうだと分かっているのにどうにも落ち着かず、カップを片手にチラチラと裏返した端末へ視線を送ってしまう彼に、蒼生は「そんなに気になるなら見てればいいじゃんか」と笑う。
「でも真昼ちゃんのお父さんってそんなに厳しい人だったんだねえ。真昼ちゃんの成績って元々学年トップクラスなんでしょ? それをずっと維持しろとか、私なら絶対グレるね」
「お前は今もグレてるようなもんだろ、進級に必要な単位数ギリギリなんだから」
「まだ留年はしてないからセーフでしょ。それより
「さあな。あの子は頭良いからちゃんと勉強すればどうとでもなりそうなもんだけど、学年トップクラスなんて次元の話は俺には分からねえよ」
「あはは、それもそっか。……だけど、キミも大変だねえ」
「? なにがだよ?」
なにやらニヤニヤしながらそう言われ、夕が
「キミ、今朝からずっとソワソワしてるからさ。恋人と一緒に居られなくて寂しがってるのはキミも同じなんだなあってしみじみ思ってね」
「は、はあ? そ、そんなこと……」
見透かしたような言い方に思わず首を横に振りたくなるものの、否定しきれない夕は
「考えてみれば、最初は真昼ちゃんの片想いから始まったんだもんねえ。それが今じゃ、キミにとってもあの子がそれだけ大きな存在になってるっていうんだから感慨深いよ」
「う、うるさいな……どの目線から言ってんだよ、お前は……」
「ふふっ、当たり前じゃないか。私はキミたちの恋愛をすぐ近くからずーっと見てきたんだから」
既にレポートを
「真昼ちゃんは今、きっとキミのために一生懸命頑張ってるんでしょ? 全部終わったら、なにかご褒美くらい用意してあげなよ?」
「ご褒美、か……そうだな。じゃあヘソクリを使って出前寿司でも――」
「いやそういうご褒美じゃないよ。たしかに真昼ちゃん的にはそれでも大喜びしそうだけどさ。でももっと簡単な……キミの身体一つでしてあげられることがあるでしょ?」
「俺の身体一つで……?」
どういうことだろう、と疑問符を浮かべかけたその時、夕の携帯電話からバイブレーションの音が鳴り響く。話を中断して素早く確認すると、一件のメッセージが届いていた。
『
「……頑張りすぎるなって言っただろうに。ったく、ちゃんと
憎まれ口を叩きながらも、青年の顔には
「――もうなにも心配要らないのかもしれないね、キミたちなら」
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