第三二六食 眼鏡男子と眼鏡女子
★
「――ユズル、あんたって本当バカよね」
「……なんだ、急に」
クラスメイト以上友人以下の眼鏡少女にそう言われ、
そんな二人がこうして並んで歩いているのは、かなり珍しい光景である。もちろん示し合わせたわけでもなんでもなく、今日はたまたま涼たちが掃除当番やら日直やらで居残っており、たまたま二人とも一人で
というわけでどちらも半分嫌々ながらも、一メートルほどの
「まひるのことよ」
今日の昼休み、恋人の青年のことで頭を悩ませていた友人の名を挙げた彼女は、手袋をしていない手を上着のポケットに突っ込みながら短く言った。
「『俺なら他者からどう見えるかではなく、自分たちの自然な関係を大切にしたい』、だっけ? あんたにしちゃマトモなこと言ったと思うけどさ……好きな女の子にマジメな恋愛アドバイス送るなんてバカなんじゃないの?」
「……フン、貴様だけには言われたくないな。そもそも俺の
「あんたがまひるを好きだってこと自体をバカにしてたつもりなんてないわよ。ただあんたとまひるじゃ顔も性格もまったく釣り合ってないから、身の程を知りなさいよって言ってただけで」
「この上なく馬鹿にしているだろうが」
ピキッ、と
たしかにクラス内でも亜紀に次いで男子人気の高い真昼と交際するなど、弦にとっては夢のまた夢。友人としては比較的近しい位置にいたものの、結局想いに気付いてもらうことさえ叶わぬまま、彼の初恋は終わりを迎えた。どこかの〝ポッと出〟大学生のせいで。
「あんた、文化祭くらいまでは
「き、貴様はもう少し言葉をオブラートに包めんのか……?」
遠慮のない聞き方をしてくる眼鏡女子に対し、眼鏡男子はヒクヒクと
「……俺は、
「でしょうね。というかあんたが好きな人なんてまひるとリョウくらいのもんでしょうよ」
「おいやめろ、さも旭日とリョウが同列かのように並べるんじゃない」
「そういやあんたとリョウって、クリスマスイヴも二人で過ごしてたわよね。……」
「やめろ、意味ありげな目で見るな! 沈黙するな!?」
そういう作品が
「俺は
「そりゃそうでしょ。だってあんたと家森さんってほぼ接点ないじゃん、あんたが一方的に敵視してるだけで」
「う、うるさいな。とにかく俺は、奴個人であればなにがどうなろうが心底どうでもいい。むしろ積極的に
「陰湿で最低なことを堂々と言うな。……だったらなんでまひるにあんな――結果次第じゃ、家森さんともっと上手くいっちゃいそうなアドバイスをしたのよ?」
「……フン、分かりきっていることを聞くな」
眼鏡のブリッジを押し上げながら、弦は言う。
「
「! ……はあ。やっぱあんたってバカでしょ。まひるみたいに堂々と告白する度胸もなかったクセに、なに無駄にカッコつけてんのよ」
「な、なんだと!?」
自分では決め台詞のつもりだったのに
「でもま、ほんのちょっとだけ見直したわ。ほんのちょっとだけ、ね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます