第三二一食 青葉蒼生とお酒の話
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一限目は午前九時から、七限目は午後八時から始まり、一
「はあ、もう九時半かあ……なにが悲しくてこんな時間まで補習なんか受けなきゃならないのさ……」
――残念なことに、彼女のような一般的でない例も世の中には存在していた。
「あー、ほんと疲れた……外国語学の先生、『
ブツブツと文句を言いながら、人の気配がほとんどない学部棟から外へ出る自業自得の
「うー、さむさむ……ゲッ、
携帯電話のブルーライトに顔を照らされながら思わず苦笑する蒼生。補習が始まるまではゼロだった通知のベルマークが、わずか三時間の間に二〇件以上も溜まっている。放課後に暇をもて余した年下の恋人の
メッセージは『今日は補習の日ですよね! 頑張ってください!』という可愛らしい内容から、『蒼生さんがサボったりしなければ今日もデート出来たはずなんだから埋め合わせヨロシク』というちゃっかりした要求まで様々。上から下まで目を通し、
「(帰ったらお風呂入って、ご飯食べてお酒飲んで……そうだ、せっかくだからこないだ
普段はビールばかり飲んでいる蒼生だが、最近は日本酒の良さというのも少しだけ分かるようになってきた。特に熱燗はこの寒い季節にぴったりだ。
薄く塩味のついた豆粒をいくつか口へ放り込み、その辺で買った安物の
「(熱燗はお店より家で飲んだ方が美味しく感じるから不思議だよねえ。もちろん単純に一番アツアツの状態から楽しめるっていうのもあるけど、騒がしく飲むんじゃなくてまったり楽しむものっていうかさ)」
願わくば、よくテレビで目にするように風呂の中で飲んでみたいものだ。
「(あーあ、雪穂がお酒飲める
友人の泣き所を容赦なく利用する算段をつけ、「にっしっし」と邪悪に笑う補習生。蒼生単品が飲みに誘ってもあの青年は首を縦に振らないので、彼がなんだかんだ言って
「(夕は騒がしい飲み会は嫌がるけど、まったり飲むだけならきっと問題ないよね。むふふ、アルコールを
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